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東ティモール独立20周年に寄せて

日本の皆さん、お元気ですか?東ティモール事務所スタッフのロジーニャです。
今年5月20日は、東ティモールが独立してから20周年の記念日です。独立を達成したあの日からもうすぐ20年。このブログを書く機会に、様々なことを振り返ってみました。読んでくださると嬉しいです。

ロジーニャさん一家(一番右がロジーニャ)

独立までの日々

1999年8月30日の国民投票で「独立」が決定するまで、私たちはインドネシアによる統治時代を過ごしました。国民投票の実施を実現するために多くの人が各地で血を流し、そして亡くなりました。独立から20年が経った現在も遺骨が見つからず、本当の別れを伝えられていない人々もいます。また、独立が決定した直後に起こった独立に反対する民兵団による放火・破壊行為、女性に対するレイプが横行し、癒すことのできない傷を抱えている人もいます。

当時、私は17歳、高校2年生で、私の過ごした村で何が起こっているのかを理解できる年齢でした。学校へは兄妹と一緒に行き、何かあったときには私たちが逃げられるようにと、兄が必ず私たちの前を歩きました。

国際社会が東ティモールの苦しみに気づき、支援を開始してくれるまで長い年月が必要でしたが、2002年5月20日にようやく独立達成の日を迎えることができました。

私の国~20年の変化

都市部で生活する人々は自国の発展を感じている人もいるでしょう。大きなスーパーが建設され、化粧品や電化製品も、お金を出せば買うことができます。でも、農村部で生活する人々は、独立の恩恵を受けていると感じている人は少ないように思います。村内の道は整備されておらず、清潔な水を蛇口から得る人はほとんどいません。雨水をバケツに溜めたり、川や水源までの悪路を越えて水を汲み、生活用水に使用しています。電気がない生活をしている集落・村もまだまだたくさんあります。

都市部(ディリ市内) ショッピングモール
農村部 村の貯水槽まで水を汲みにくる男の子

首都ディリに住む私にとっても、毎日の出勤に使う道路は排水路の整備がされておらず、雨期になると道路の一面が行き場を失った雨水で覆われ、行き来が難しくなります。自分の若かった頃と比較すると、平和な暮らしを手に入れたことは何物にも代え難い幸せなことですが、道路や給排水など生活基盤の整備に関しては、今後の変化に期待しています。

都市部 雨期になり、冠水している道路

インドネシア統治時代、私の過ごした村にも診療所はありました。助産師はおらず、男性の看護師のみが勤務していたため、母は診療所での出産を拒み、一番下の妹を家で出産しました。出血がひどく、父が助産師を探すのに苦労しました。

現在はその診療所も再建され、東ティモール人の医師、助産師、看護師が勤務しています。村に住む私の妹は以前、家での出産を選択しましたが、その際にも医師が家に訪問し、分娩介助をしてくれたと聞きました。村に住む妊婦さんたちが診療所を利用して無事に子どもが生まれたと耳にすると、20年前との変化を感じ、私は嬉しいです。

診療所で生まれた赤ちゃん

シェアの活動~これまでとこれから

私がシェアで働いていることもあり、保健分野の発展は、特に身に染みて感じています。各村に診療所が建設され、医療者が必ず配置される仕組みができています。仕事をする上での管理能力や、患者への対応・治療に関しては未だ改善すべき点がいくつかありますが、東ティモール人の医師、助産師、看護師の数が20年前と比較して格段に増えたことは素晴らしい変化です。

シェアでの私の勤務は2009年、エルメラ県で開始しました。当時、住民の保健衛生に関する知識はほとんどなかったと言ってよいと思います。子どもたちは食べ物のゴミをその場で捨て、トイレも至るところでしていたので、寄生虫に感染したり、下痢に罹る子たちが多くいました。

シェアが村の中での保健活動を開始し、20年前と比較して、住民の病気を予防する力がついてきたと感じています。私の家のある集落でも、家庭内にゴミを燃やす箇所をつくり、その場所のみでゴミを燃やしています。そのほかにも、食事の前には手を洗う、1日に2回は水浴びをする、1日に摂取するご飯は栄養バランスよく食べることなど、健康になるために必要な基礎的な知識を住民が得て、それを実践する家庭が増えています。

小学校での「手洗いについて」の啓発活動
住民へ保健促進活動を行う保健ボランティアへの指導
小学校での「下痢について」の保健教育

実際に私が変化を目撃することができたのは、アタウロで家庭訪問をしながら調査をしたときのことです。私たちが学校保健事業の中で伝えた、誰でも簡単につくれる手洗い場 "ティッピータップ″ を家庭でもつくり、実際に使用している様子を見ることができました。その家庭の母親が、「子どもが学校で作り方を学び、手洗いが大切だと私たちに伝えてくれた」と語ってくれました。

13年間のシェアでの仕事に私は誇りを持っています。シェアは住民を想い、彼らの生活を健康にするため、様々な方法でアプローチをしています。シェアスタッフの一員として、今後も「すべての人に健康を!」をモットーにしていきたいです。

調査中に見つけた、家庭につくられた簡易手洗い場

これからの東ティモール~私の願い

先月4月19日、大統領決選投票が行われました。ノーベル平和賞の受賞者でもあり、元大統領でもあるラモス・ホルタ氏が当選しました。東ティモールに生きるすべての人が、生活基盤を整え、平和で安心した暮らしを手に入れられる、そんな政治を行って欲しいと切に願っています。

日本の皆さんのこれまでの支援に心から感謝し、私は、あの苦しみを乗り越えた一人の東ティモール人として今ある平和を守り、そして、自国の発展のために、できることから少しずつ行っていきたいです。
新型コロナウイルス感染症が収まったら、私の愛する東ティモールに是非一度足を運んでください。

※この事業は、皆さまからのご寄付と、外務省日本NGO連携無償資金協力や民間助成金の資金をいただいて実施しています。
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シェアは20年にわたり、東ティモールで保健ボランティアの育成や保健教育の普及などに取り組んできました。新型コロナを含んだ感染症の予防対策や、現地の人々の健康で平和な暮らしのためには、継続した活動が必要です。皆さまからの温かいご支援に感謝いたします。

*応援よろしくお願いいたします*
東ティモール事業支援

文責:シェア東ティモール事務所 プロジェクトマネージャー
ロジーニャ・デ・ジェズス・ソアレス

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