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疾走する魂の戦士 ― 長純一さんへ 《Dr.本田徹のひとりごと(83)2022.6.22》

士 ― 長純一さんへ
    本田 徹


君はいつも全力で走り続けてきた。
重い病を得た今も、なまなかの患者とはならず、
自分たちが苦闘の上築き上げようとしてきた、
東北の地の、隅々までとどく医療の仕組みが、
自分にはどう適用されるのか、真摯に知ろうとする。
骨の髄までの、臨床医魂!
その仕組みが、どう働き、どうつながり、
あるところでどう蹉跌するのか、
冷静に見届けることを望む。
そこに注がれる君の視線は、
あくまで熱く、そして冷たいものだ。
自分を突き抜け、自分を越えていくものに、
無念と希望と、心からの贈る言葉を託しながら。
小さな会釈と、いつもの君の はにかんで、
いっぱいの矜持を含んだ笑みと、
優しい、やわらかい、確かな力で握り返す手とで。
信州を、神戸を、石巻を、疾走しつづけた、
勇気ある、いのちの戦士。
まだ休んでなどいられるか、という、
君のつぶやきが、僕の耳朶を打つ。
すこし離れた福島の緑一面の山の村から、
君に、心からのエールを送る。
(2022年6月22日)

JAIH地方会 マイノリティと健康での5人。2014年5月、NGOシェアの主催で開かれた東日本地方会「マイノリティと健康 ― いのちの格差を縮める」の懇親会での集合写真。  左から、冨田茂、沢田貴志、本田徹、陳天璽(無国籍ネットワーク代表)、長純一。(敬称略)

 注)長純一さんが、6月21日の自身の56回目の誕生日に発表された、末期のすい臓がんであるとの、病床からのリアルタイムの動画発表は、多くの友人仲間に衝撃と感動を与えました。同時に、彼が東日本大震災以降、宮城県・石巻の地で確立に取り組んできた包括的地域ケアのシステムについて、消化器疾患を専門とする総合診療医としての彼が、このようながんに罹り、そのシステムの恩恵を受けることになった運命の転変を、素直に感謝し、受容していることに、潔さを感じたのでした。私のつたない詩はそうした彼の勇気ある行動へのオマージュとして、会見後に書いたものです。友人であり、佐久病院の同窓生でもある、長さんの、穏やかな日々を心からお祈りします。

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