マハーバーラタ/4-4.ドラウパディーとスデーシュナー

4-4.ドラウパディーとスデーシュナー

ドラウパディーも変装してヴィラータの町に入った。古く汚れた服を身にまとい、右手には自らの長い髪を抱え、笑顔で王妃の宮殿に向かった。
その歩く姿は行き交う人々の目を惹きつけた。

ヴィラータの王妃スデーシュナーが宮殿のバルコニーからその姿を見かけた。見知らぬ彼女の様子を目で追っていた。

彼女から笑顔が消えた。周りの人々が彼女を追い回してあざけるような仕草が見えた。
彼女は足早に歩いた。周りの人々の笑い声はますます大きくなった。
その様子を哀れに思ったスデーシュナーは女中を呼び、彼女を連れてくるよう命じた。
「王妃があなたを呼んでいます。一緒にいらしてください」
ドラウパディーは王妃の前に案内された。

右手に抱えていた髪を巻き取って後ろに置いた。外で受けた辱めの体験のせいで未だに体が震えていた。
スデーシュナーは優しく彼女を自分の隣の席に案内して座らせた。
「あなたのような美しい人がどうして一人でいるのかしら? 結婚していないのね。こんな人を男が放っておくなんて信じられないわね。
それで、なぜあなたはこの町へ? どこから来たの?」
「私はサイランドリー。パーンダヴァ兄弟の妻ドラウパディーの女中でした。彼女を飾るのが仕事でした。
ですが、彼らが森に行くことになったので、私にはどこにも行くところがなくなったのです。今はこの装飾の技術は必要とされていないので、生計を立てる為にここに来ました。
スデーシュナー王妃がとても立派な方だと聞き、ぜひ私の技術で喜ばせたいと思ったのです」
「分かったわ。たくさん苦労してきたのね。ここに居ていいわよ。この宮殿を自分の物のように使ってね。この美しい庭で一人になりたいなら、そうするといいわ。何か心配なことはあるかしら?」
ドラウパディーの頬に涙が流れた。王妃は彼女の頭を膝に乗せ、まるで小さな子供のようになだめた。
「ドラウパディー様はパーンダヴァの五兄弟を夫としていました。同じように私にも五人のガンダルヴァの夫がいます。ずっと一緒だったのに、呪いのせいで私達は一年間離れて暮らさなければならないのです。私を守ってくれる最愛の夫達がいなくて寂しいのです。一年後にはこの辛い日々が終わります。あなたの中に姉や母のような思いやりを感じられて幸せです」

スデーシュナーはしばらく黙っていたが、再び話し始めた。
「一つだけ、気がかりなことがあるの。それはあなたの美しさ。その美しさによって我が夫の心が揺れないか心配です。彼は女性的な魅力に心奪われやすいの。彼があなたに会ったら惚れてしまうのではないかと」
「どうか心配しないでください。私の姿を王様に見せることはしません。いつもあなたの宮殿の奥にいて、誰にも会わないようにします。あなたを決して傷つけるようなことはしませんから。どうか信じてください」
王妃はその謙虚な優しさや愛らしい言葉に心打たれた。
「あと、王妃様。もう二つだけお願いがあるのです。
私は他の者の食べ残しは食べません。
他の人の足をマッサージしません。
それをしたら我が夫が不快になり、怒りを持ってこの場に来てしまうかもしれませんから」
「いいわ。約束する。決してそれはさせません」

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