マハーバーラタ/5-6.パーンダヴァ達の返事

5-6.パーンダヴァ達の返事

サンジャヤはドゥリタラーシュトラ王の伝言を全て話し、静かに座った。
沈黙が流れた。
ドゥリタラーシュトラのあまりの厚かましい言葉に全員が呆然としてしまっていた。

ビーマは座っていられず、席から立ちあがり、大股歩きでうろうろした。
サハデーヴァの胸は小刻みに波打ち、まるで雷雲のようであった。
アルジュナは今にもガーンディーヴァを手に取って進軍しようと言わんばかりにクリシュナの方を見た。
ドゥルパダ王は仰天した様子で座っていた。

サンジャヤは回答を求めるかのようにユディシュティラを見た。
ユディシュティラはあまりの苦しみの為にしばらく何も話せなかった。
伯父への献身の年月、そして公正であるが故に受け入れた追放の日々。
なぜ今、伯父からの非難の言葉が積み上げられたのか。
なぜまるで罪人のように仕立て上げられているのか。
ユディシュティラの心は傷つき、涙ぐんだままサンジャヤを見た。
「私に対するこれら全ての非難はあの王の考えによるものでしょう。
その言葉に対しては私は何も言いません。
年長者の間違いを私が指摘することはないのです。
これは年寄りの特権です。彼はその特権を完全に悪用しています。
サンジャヤよ、あなたはただの使者です。あなたに対して怒りを露わにすべきではありません。
私の答えはクリシュナに任せることにします。
戦うべきなのか、まだ交渉すべきなのか彼に任せます。
私達の未来は彼が決めてくれます。彼が私達を乗せた船を導く船頭です。
クリシュナと共にいる限り、私は何の心配もしません」

クリシュナはユディシュティラの言葉に感動した。
伝言を聞いたときには雷のように怒っていたクリシュナは、賢さと思慮深さに満ちた言葉を話し始めた。
「サンジャヤよ、私の第一の願いはパーンダヴァ達の幸せです。
ドゥリタラーシュトラの息子達も長生きしてほしいと思っています。
しかし、王の伝言が理解できないのだ。非難すべき相手が分かっているはずなのに、なぜ甥であるパーンダヴァ達に向けられているのか理解できない。
ダルマに従って生き、我慢強く耐えてきたユディシュティラに対してなぜこのような言葉をかけられるのか?
息子達に対する異常なまでの偏った愛情でまともな考えを失っているのではないか?
クシャットリヤとは泥棒を罰しなければならないのだ。これは義務だ。
この義務に従い、ユディシュティラはドゥリタラーシュトラの息子達を罰しなければならない。
ダルマの化身であるユディシュティラに対して、ドゥリタラーシュトラはダルマを語る資格はない。それは無礼だ。侮辱だ。
彼も略奪に賛成し、奪った果実を楽しんだ。つまり彼の息子同様に略奪者だ。
私達はドゥルヨーダナの軍を破壊したいのではない。平和が欲しいのだ。
ユディシュティラが自分のものである王国を取り戻したら、準備した戦力を直ちに捨て去るでしょう。
サンジャヤよ。王の元へ帰り、ここで起きたことをそのまま彼に伝えてください。
ラーデーヤに伝えてください。あの時ドラウパディーを侮辱した言葉をアルジュナは忘れていないと。
ドゥッシャーサナに伝えてください。あの時『ビーマ牛』と呼んだことをビーマは決して忘れることなく、お前の血に飢えていると。
ドゥルヨーダナに伝えてください。寝ても覚めてもビーマはお前の丸々とした太腿だけが見えていると。
シャクニに伝えてください。あの時、気味の悪い笑みと共に『まだドラウパディーがいるじゃないか』と言ったことをサハデーヴァは忘れていない。
世界中に知れ渡っている彼らの暴挙はこれだけではありません。
それでもユディシュティラは世界中の人々の平和を求めています。
あなたの王が平和を求めていると言っているのは息子の為でしかない。
私クリシュナがハスティナープラへ行きます。
うまくいけば世界を破滅から救うことができます。ドゥルヨーダナからこの大地を救いたい。それを望みます。
・・・ハスティナープラで育った一本の木があります。
名はドゥルヨーダナ。
その幹はラーデーヤで、枝はシャクニ、花と果実はドゥッシャーサナ。
その木の根はドゥリタラーシュトラ。
これが悪の木だ。
こちらの別の木が見えるかい?
名はユディシュティラ。
その幹はアルジュナで、枝はビーマ、花と果実はナクラとサハデーヴァ。
この正義の木の根は私だ。
今からこの大地に降りかかろうとしている戦争という嵐を生き抜くのはどちらの木であるかよく考えなさい。
パーンダヴァ達はいつでも武器を置く準備ができています。
インドラプラスタがユディシュティラの元に返された場合には私が責任を持ってそうさせます」

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