マハーバーラタ/5-14.ドゥルヨーダナの怒り

5-14.ドゥルヨーダナの怒り

ドゥルヨーダナはクリシュナの話をずっと聞いていた。
そしてついにクリシュナの方へ目を向けて話し始めた。

「クリシュナ、長い話でしたね。
そして、まるで私一人が全ての非難を受けているようだ。
慈悲深いあなた、父、祖父、先生、ヴィドゥラ。
皆が私を非難しているように聞こえる。
私には分からない。
理解しようと努力してみたが、
やはり私が間違っているというのが理解できないんだ。

これまでの経緯を整理させてくれ。
ユディシュティラは自ら進んで伯父シャクニとサイコロゲームをした。
そして、シャクニに負けて国を失った。それが事実だ。
それに関してなぜ私が非難されるのか?
彼がサイコロが下手だったことに私の過失はない。
ゲームを止めて賭けた物をあきらめるか、勝って取り返すか、それだけじゃないか。
そして再開されたゲームで再び彼が全てを失ったことに私の過失があるのか?
彼は自ら勝負に参加し、負けて、条件通りに森へ行った。
愚かなのは彼らだ。なぜそれに関して私を非難する理由を挙げようとするのだ?

そして今、彼らはパーンチャーラの仲間となり、軍隊を集め、私に喧嘩を売ろうとしている。
私はいかなる方法でも彼らを傷付けたことはないのにだ。
それなのに彼らが私に戦争を仕掛けようとしている。

私は全然恐れてなんかいない。
たとえインドラが来たって恐れない。
私は恐れを理由にひれ伏すことはない。
こちらにはビーシュマ、ドローナ、クリパ、ラーデーヤがいる。戦場において彼らに敵う者などいない。
私はクシャットリヤのダルマに従い、理由もなく喧嘩を売ってくる者達と戦う準備をしているだけだ。
戦争をしなければならないなら、私が戦場で矢を受けて死ぬか、彼らが矢のベッドで眠るかのどちらかが起きるだけのことだ。クシャットリヤのダルマはただそれだけだ。敵に屈服することなく戦場で殺されるなら天国へ行くだろう。王子の役割とは常に高潔で真っすぐに立っていることだ。敵を怖がることなど受け入れるわけがない。
私はこれまでに頭を下げたことがあるが、それは尊敬に値する年長者に対してだけだ。他の者に対して頭を下げることは決してない。絶対にだ。
これがクシャットリヤのルールであり、私がずっと従ってきたルールだ。この自分のダルマから決して逸れることはない。

インドラプラスタと呼ばれる国は、昔私の父が彼らに与えたものだ。あの時私はまだ子供だった。会議で意見を聞いてもらえる状況ではなかった。父の無知もしくは恐れによって彼らに与えられたものだったのだ。私の知ることではない。
私が生きている限り、あの土地がユディシュティラに再び与えられることはない。
クリシュナ、よく覚えておきなさい。
針の先ほどの土地でさえも、私はパーンダヴァ兄弟には渡さない」

クリシュナは奇妙な微笑みを浮かべた。
その微笑みはドゥルヨーダナに対する軽蔑と大きな憐みを意味していた。
そしてその表情には怒りと悲しみも帯びていた。
それを見た全ての者達は正体不明な恐れで震えあがった。
このような彼の表情は見たことが無かった。
クリシュナの微笑みも、しかめっ面も、厳粛でまじめな表情も見たことがあった。しかしこの奇妙な微笑みは見た者の心に恐怖を打ち付けた。

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