マハーバーラタ/3-13.アルジュナの帰還

3-13.アルジュナの帰還

パーンダヴァ達はバダリーでアルジュナを待つことにした。
アーシュラマの環境は絵に描いたかのように美しく、その森の中を散策してほとんどの時間を過ごしていた。
何千もの色合いの花で飾られた木々を見ながら過ごす時間は、ドラウパディーにとって追放期間に入ってから初めての幸せな時であった。彼女の心は嬉しさで踊っていた。
ビーマは彼女が採りに行けない場所で集めた珍しい花をプレゼントしてさらに喜ばせた。

しかしそんな日々を過ごしながらも彼らの心はアルジュナの帰りを期待し続け、忍耐が限界に近づいていた。毎日が一年のように感じられていた。

パーンダヴァ達がいつものように森の中を散策していた時のことだった。
山の頂がこの世の物とは思えない光で輝いているのを見た。
その光は次第に大きくなり、こちらに近づいてくるようであった。
どんどんこちらへ近づき、その光に包まれているが馬車でああることが分かった。
さらにこちらへ近づき、馬車に乗っているアルジュナが見えた。
驚きで言葉を失っていた。

アルジュナが馬車から飛び降り、彼らの方へ走ってきた。
彼は真っ先にユディシュティラやビーマ、ダウミャにひれ伏して挨拶した。
ローマシャやアーシュラマの他のリシ達にも挨拶した。

誰もがあまりの興奮で話せなかった。
ドラウパディーは初めてアルジュナに会ったかのように、彼を見てただじっと立っていた。
皆がまばたきすら忘れていた。話し方も忘れていた。

そして同時に皆が話し始めた。
久しぶりに五兄弟が揃った瞬間であった。
皆の顔に満足感が浮かんでいた。

パーンダヴァ兄弟はインドラの御者マータリを歓迎したが、彼はすぐに別れを告げてインドラの元へ帰っていった。

ユディシュティラがアルジュナに膝枕をして、まるで小さな子供のようにかわいがった。
彼らの興奮はいまだ醒めず、何から話してよいか分からなかった。

アルジュナはインドラから預かったドラウパディーへの贈り物を渡した。宝石が埋め込まれた素晴らしい装飾品であった。

しばらくして皆の心臓の鼓動が穏やかになった頃、アルジュナを囲んで座った。
その時外で大きな衝撃音が聞こえた。
インドラがユディシュティラに会いに来た。
皆が外に出てインドラを微笑んで迎えた。
「ユディシュティラよ。よくぞこの困難に耐えてきた。お前の困難はもうすぐ終わる。敵を恐れる必要はない。お前は勝利し、華々しく立派に世界を統括する王となる。
今、アルジュナがお前の元に帰った。ここから去り、カーミャカの森のアーシュラマに戻るといい。
アルジュナとの大切な時間を与えてくれたことに感謝する。
彼はその武勇で私に貢献してくれた。その話は本人から聞くがよい。
お前達に会えて私は幸せだ。
あと数年で暗い日々は終わる。さあ、カーミャカに戻るのだ」

彼らはカーミャカの森へ向かい始めた。
その道中で休憩する時にはアルジュナを囲んで座り、彼のたくさんの冒険の話を聞いた。
アルジュナにとっても、その物語を伝えることは楽しいことだった。
冒険を楽しむ相手に話をすることは幸せな時間だった。
インドラキーラの山肌での修行、猪やハンターとの出会いは皆をワクワクさせた。

ユディシュティラは彼をとても誇らしく思った。
ビーマは隣に座って何度も何度も撫でた。彼の目は弟との再会の喜びで濡れていた。それほどアルジュナがいない時間は寂しいものだった。

アルジュナの物語は続いた。
インドラの住む天界への訪問、ウルヴァシーのエピソード、チットラセーナーから踊りや歌を学んだことなどを話した。

そしてインドラがアルジュナを天界に呼んだ目的の話が始まった。
「こうして私はインドラの宮殿で幸せな時間を過ごしていました。
そんなある日、父インドラが私に言いました。
『アルジュナよ、私を助けてほしい。
ニヴァータカヴァチャスという妖怪達がいる。海の中に住み、私を困らせているのだ。あの敵達と戦い、滅ぼしてきてほしいのだ』
インドラは私の頭に宝石で飾られた王冠を置きました。
『この王冠を被ることで、これからはキリーティーの名声を得ることになるだろう』
インドラの集会ホールにいたリシ達に祝福され、マータリが運転する馬車で出発しました。
天と地のたくさんの美しい場所を通り過ぎ、ニヴァータカヴァチャスの町に到着しました。私はほら貝を吹き鳴らしました。
彼らはインドラがまた攻めてきたと勘違いして出てきました。
私の挑戦を受け、戦いが始まりました。
あの妖怪達はマーヤー(妖術)が得意でした。私が戦うには強すぎるほどの相手でした。
なんとか彼らを渡り合い、モーヒニー・アストラを使ってマーヤーを打ち破りました。
マーヤーを使わない真っ向勝負となりましたが、それでも彼らは強い戦士達でした。私がインドラの武器ヴァジュラをあの妖怪達に向かって投げつけると、まるで雷のように彼らの中心に落ち、彼らのカヴァチャ(鎧)が粉々に砕けました。彼らは崩れた山のように倒れました。
私は勝利しました。
マータリは私の戦いぶりを大いに褒めてくれました。今までに見たことがない戦いぶりであったと。
戦いの後、ニヴァータカヴァチャスの町に入りました。
何とも美しい町でした。あの輝き、壮大さを表現する言葉はありません。
その町についてマータリが教えてくれました。
以前その町はインドラの町だったそうですが、大変な修行によってブラフマージに気に入られたニヴァータカヴァチャスがインドラから奪ったのです。ブラフマージの恩恵で彼らは無敵だったのです。ブラフマージの恩恵に対してインドラでさえも手が出せなかったのです。
そこでデーヴァではない人間の私にニヴァータカヴァチャスを倒してくれるよう頼んだのです。
そうして私はアマラーヴァティーに戻りました」

天界でのアルジュナの物語は続いた。
「帰る途中、空中に浮いている町がありました。
その素晴らしい光景を見ていると、マータリが教えてくれました。
『あの町はヒランニャプラ、プローマーという名の女の妖怪のものです。彼女はカーラケーヤと呼ばれる息子達と共にあの町に住んでいます。あの妖怪達もまたブラフマージの恩恵によってデーヴァの攻撃を受け付けない力を授かっています。アルジュナよ、あの妖怪達も倒してほしい』
私はその話を聞いて、カーラケーヤに挑むことにしました。
決して挑まれるはずのない彼らとの戦いが始まりました。
彼らもまた強かった。
まともに戦っても勝ち目がなかったので、私はシャンカラから授かったパーシュパタを遂に使うことを決意しました。
パーシュパタの威力はすさまじく、カーラケーヤの全軍隊を滅ぼしました。
こうして私は勝利し、アマラーヴァティーへ戻りました。
インドラは大きな喜びを持って私を迎えてくれました。
マータリが二つの戦いに勝利したことを伝え、私の雄姿を褒めました。
インドラは私を抱きしめ、祝福しました。
『アルジュナよ、素晴らしい功績だ!
ニヴァータカヴァチャスやカーラケーヤを滅ぼすという、素晴らしい仕事を成し遂げてくれた。
あなたの兄ユディシュティラは幸せ者だ。あなたを傍に置いて何の不安も持つ必要はない。カウラヴァ達など死んだも同然だ』
そしてインドラは私に難攻不落の鎧を与えました。
私が天界へ行った目的の仕事を終え、別れの時が来ました。
『アルジュナよ。別れの時が来た。あなたの兄弟やドラウパディーがあなたの帰りを待っている。あなたをユディシュティラの元へ返さなければならない。
マータリよ、馬車で息子を送ってやってくれ』
私は父インドラやチットラセーナー、集会ホールにいたリシ達に別れを告げました」

この時、追放期間が始まって10年が経っていた。
そろそろドゥルヨーダナのことを考え始める時だと弟達がユディシュティラに提案した。
ビーマが言った。
「そうです、兄よ。もう11年目です。私達は自らの恐ろしい誓いを果たす計画を考え始めましょう。そして、身を隠す一年間が私達の前に立ちはだかっています。
私達が山に入ったので、ドゥルヨーダナ達は私達のことを忘れて愚かな天国を楽しんでいることでしょう。ユディシュティラが世俗を手放してヒマラヤでリシを選んだとさえ思っているかもしれません。
カーミャカの森へ帰り、アルジュナもいることを気付かせるべきでしょう。
伯父ドゥリタラーシュトラはアルジュナの功績をスパイから聞くことになるでしょう。
私達が山から下りれば、世俗を手放したのでも、誓いを忘れたのでもないということを示すことになり、彼らを恐れさせるでしょう。
山での生活は幸せでした。ドラウパディーの笑顔を見た唯一の場所でした。
しかし、兄よ。行きましょう。行かなければならない。
バララーマ、サーテャキ、クリシュナが忍耐強く待ってくれています」

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