マハーバーラタ/5-7.ヴィドゥラの教え

5-7.ヴィドゥラの教え

サンジャヤはハスティナープラへ戻り、直ちに王へ報告した。
「ドゥリタラーシュトラ王よ。
ユディシュティラはあなたに対して尊敬の気持ちを示し、あなたやあなたの息子、こちら側にいる皆の幸福を祈っていました。
彼の弟達やクリシュナも親切にしてくれました。
パーンダヴァ達の平和的な雰囲気は、まるで山々の清々しい甘い空気を吸っているかのようでした。
その中で私はあなたの命令によって嫌な仕事をしてきました。あなたは不正な人で、あなたの息子達は罪人です。罪を重ねてでもこの地上を楽しもうとしています。
私は仕事をしてきました。返事はクリシュナによって運ばれてきます。
心も体も疲れてしまったので、もう休ませてください」

その言葉に狼狽えるドゥリタラーシュトラを尻目にサンジャヤはそれ以上何も言わずに去っていった。

ドゥリタラーシュトラに体はまるで熱があるかのように真っ赤になった。
その夜、彼は全く眠ることができなかった。
絶望の中でヴィドゥラを呼んだ。

ヴィドゥラはすぐに王の寝室にやってきて、彼の痛々しい姿に驚いた。
ドゥリタラーシュトラはヴィドゥラに心の内を話し始めた。
「サンジャヤがウパプラッヴャから戻ってきたのだが、私に対して厳しい言葉を残して去ってしまった。ユディシュティラの返事について何も教えてくれなかった。
それで私は眠れないのだ。
あなたは私の唯一の友だ。私の過去の過ちも含めて私を愛してくれる唯一の人だ。
どうか私を慰めて、眠らせてくれないか」

ヴィドゥラは教え始めた。
「王よ。五種類の眠れない人がいます。
妻以外に欲望を持つ男。
泥棒。
財産を全て失ったものや失う恐れを抱く者。
成功していない者。
抑圧を受けている者。
あなたがどれにも当てはまっていないことを望みます」

ドゥリタラーシュトラはヴィドゥラが皮肉を込めて話すのに慣れていなかった。弟の洞察によって傷付けられた。
「・・・どうすれば眠れるのだ?」

ヴィドゥラは憐みと軽蔑が入り混じったような表情で微笑んだ。
「パーンドゥが死んで息子達がここに来た時からあなたは眠れなくなったのでしょう。
しかしその不眠の原因がもっと昔にあります。それはドゥルヨーダナが生まれた日です。王位継承で問題が起きるのではないかと不安になって私に質問しました。長男であるが盲目の王である自分の息子か、それとも自分の息子よりも先に生まれていた弟パーンドゥの息子か。
あの日以降、あなたの心に嫉妬が住み着いて眠りを追い出したのです。
私はずっとあなたに公正さを持ってもらおうと努力してきましたが無駄でした。あなたは罪深く、パーンダヴァ達の災難とカウラヴァ達の危機を招くばかりでした。そんな人がどうすれば眠れるというのでしょう?
父を亡くしたユディシュティラはずっとあなたを父親とみなして敬意を払ってきました。
あなたは彼らに対していつも泥棒のように振舞ってきました。
ですからあなたの不眠に関して、何も驚くことはありません。
どうすれば眠れるか、でしたね?
ユディシュティラに王国を返せばいいのです。
そうすればあなたは純真な子供のように眠ることができるでしょう」

「親愛なる弟よ、教えてくれ。
賢い人の中にある資質と、愚かな人の中にある資質とは?」

「賢い人は人生の中で最も高貴なものを熱望します。彼が持つ資質とは、自己の知識、努力、寛容さです。
怒り、快楽、高慢、間違った謙虚さ、虚栄。そのどれも彼の目的を揺らがせることはありません。
欲望は彼の行いに色を付けません。
誠実な行いが彼を喜ばせ、善を愛します。
褒められることによっても、侮辱されることによっても彼は動じません。
まるで海のように穏やかで、冷静です」
一方で、愚かな人の資質を挙げるのは簡単です。
聖典は閉じられたままです。
虚栄心が強く、高慢で、欲しいものを手に入れる為に卑怯な手段を使うことをためらいません。
自らに権利がないものを欲しがります。
力を持つ者に嫉妬します。

罪の法則について教えましょう。
ある人が罪に身を委ね、何人かの人が彼の罪で得た果実を収穫します。
果実を楽しんだたくさんの人が無傷で逃れ、彼にのみ罪が付いて回るのです。

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