マハーバーラタ/5-20.母の説得

5-20.母の説得

ラーデーヤが起き上がって言った。

「お母さん、ありがとう。
この幸せな時間がどれくらい過ぎたのでしょう。
母の優しさに満足しています。
ですが、もうこの幸せな眠りから起きなければ。
さあ、教えてください。
なぜあなたは私の所へ来たのですか?
このラーデーヤに求める恩恵は何ですか?」

「ラーデーヤはもうたくさんです。
私がいるのにラーデーヤと呼ばないで!
あなたはクンティーの最初の息子、カウンテーヤです。
あなたを息子と呼ぶことを誇らしく思います。
今、私の息子は六人です。五人ではありません。
こんな素晴らしい息子を持てて幸せです」

「ああ、お母さん、なぜ今そんなことを言うのですか?
私はクンティーとスーリヤの息子、カウンテーヤと呼ばれることを誇りに思っています。
本当の両親を誇りに思っていますが、それでも私はラーデーヤであり続けます。私の身に起きた不幸など大したことではありません。
それよりも私に何を求めるのか教えてください。
私にできることであれば、私の名声に反しないものであれば、母へ恩恵を与えることは光栄で幸せなことです」

クンティーは涙を拭って言った。
「我が子よ。
あなたはこれまでずっとたくさんの侮辱に悩まされてきたことでしょう。
それはあなたがスーリヤとクンティーの息子であることを世間が知らなかったからです。
あなたの暗闇の日々は終わります。
パーンダヴァ兄弟が自分の弟であることを知らなかったから、ドゥルヨーダナと一緒に彼らを嫌ってきたのでしょう?
今、あなたは自分が何者であるか知りました。
弟達と戦うのは間違っています。
私と一緒に来て。
パーンダヴァ達の所へ行きましょう。
あなたが世界の王となって、弟達はあなたを敬愛します。
ユディシュティラと一緒に幸福と平和を得るのです。
これ以上ドゥルヨーダナと一緒にいては駄目です。
どうか母を喜ばせてください。
これがあなたに求める恩恵です」

ラーデーヤの目は溜まった涙で輝いていた。
「運命とはなんと奇妙なのでしょう!
この二日間で二人の高貴な人が私に世界を差し出しました。
高貴なユディシュティラが私に仕えると保証して私を誘惑しました。
私には考える時間がありません。
母よ。あなたと共に行ったからといって一体どうなるというのでしょう」

「どうしてなの?
あなたはパーンダヴァの長男として世界を統治することになるのよ。
あなたとアルジュナはきっとバララーマとクリシュナのようになるの。
あなた達が組むなら誰も敵わないわ。
もうスータプットラではなくなるのよ。
どうかお願い、私の願いを叶えて」

その時ラーデーヤは天からの声を聞いた。
それは彼の父、スーリヤの声であった。
「息子よ、母の言うことを聞くんだ。
それがあなたの為だ。彼女の言うことを聞いて長く生きるんだ。
父もそう願っている」

ラーデーヤはその言葉を聞き、微動だにせずに立っていた。
そして再び母の方を見た。
「私がずっと抱えていたあなたに対する怒りを知ってくれていたならよかったのに!
そうすれば私を捨てた母に対する怒りは癒されていたのに。
その不正のせいで私の名声、私の評判、私の人生、全てが枯れてしまった。
母にもっと聞きたいことがあったんだ。
私のつらさをもっと聞いてほしかったんだ。
でも、あなたを見たら、怒りが全てどこかへ行ってしまったんだ。
まるで砂漠に降った雪のように消えてしまった。
そして私の心は果てしない悲しみで満たされてしまった。

私は母ラーダーを愛していた。他の誰にも代えがたい愛だ。
しかしその愛でさえ、あなたの愛と優しい声を求める私の切望の前ではかすんでしまいそうだ。
そして今、弟達への愛で私の心は溢れている。
まさかこんな気持ちになるなんて。
お母さん・・・。
母の愛とはこれほどまでに素晴らしいものなのですか?
新たに生まれた荒れ狂う愛で私の心は破裂しそうでだ」

クンティーとラーデーヤはお互いに何度も何度も抱き合った。
太陽は母と息子の出会いを微笑みながら見下ろしていた。

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マハーバーラタの第5章 約束通り国を返してもらおうとするパーンダヴァ達。 争いを避けようと全力を尽くすが・・・。

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