マハーバーラタ/5-4.両軍集結

5-4.両軍集結

マドラのシャルヤ王は13年の追放期間が終わったことを聞き、妹の息子達であるパーンダヴァ達の元へ向かっていた。
彼は自国に1アクシャウヒニの軍を残し、息子達を連れてウパプラッヴャを目指していた。

ドゥルヨーダナはシャルヤがウパプラッヴャへ向かったことを聞き、彼を味方に引き入れる為の策を講じた。
シャルヤの軍が進む道の至る所に休憩場所となるキャンプを作り、彼の軍が快適に休憩できるようにし、物資の補給、娯楽まで提供した。
まるでインドラを歓迎するかのようであった。

シャルヤはその歓迎がユディシュティラによるものだと思い込んだまま、キャンプのお世話をしている召使いに話しかけた。
「我が甥ユディシュティラを助ける為にこれほどまでの支援をしてくれた方に会いたい。感謝を込めてぜひ褒美を差し上げたい。ぜひ責任者を呼んでくれないか?」
その召使いはなんと答えてよいか分からなかった。
とりあえずドゥルヨーダナの所へ行って報告することにした。
「ドゥルヨーダナ様、シャルヤ王は大変喜んでいます。感謝を示すためにぜひお礼をしたいとのことです」

ドゥルヨーダナはタイミングよくシャルヤの前に現れた。
「シャルヤ王よ。ドゥルヨーダナです。あなたが軍を連れて移動していると聞き、私にできる限りのお手伝いをさせていただきました。このキャンプでは快適に過ごせていますか? 何か他に必要なものがあれば遠慮なく言ってください」
「ドゥルヨーダナ!? あなたがこのキャンプを準備してくれたのですか?
私はてっきり・・・・いえ、何でもありません。
私に対してこんなお世話をしてくれた人にはお礼を差し上げたい。
その気持ちは相手が誰であろうと変わるものではない。
この喜びをどんな形で示すのがよいでしょう?」

「私が喜ぶお礼とは、たった一つです。
シャルヤ王よ、私はあなたの足元にひれ伏し、あなたの慈悲をお願いします。どうか、来たる戦争で私の味方となってください。
それ以外に私が喜ぶものなどありません」

シャルヤは絶句した。
自らの口から出た言葉によって自らを苦しめてしまった。
しかし王として言葉を嘘にするわけにはいかなかった。
「私は甥であるナクラとサハデーヴァを助ける為に、ユディシュティラの援軍要請を受けて、軍を連れてウパプラッヴャへ進んでいました。
しかし、あなたは私に対する愛を示し、私の心をつかんだ。
私はあなたを喜ばせなければならない。
分かりました。あなたの援軍となり、甥達と戦いましょう。
ですが、その前にユディシュティラの所へ行かせてください。彼に説明しなければなりません」

「もちろんです。ユディシュティラの所へ行き、用事を終えたならすぐにハスティナープラへ来てください。決して約束を嘘にしてはなりませんよ」
「はい、私は忘れません。どうぞハスティナープラに戻っていてください。私は甥達と会ってから行きます」
彼は申し訳ない気持ちを抱えてウパプラッヴャへ向かった。

ウパプラッヴャへ到着したシャルヤはユディシュティラの目の前でひれ伏した。ユディシュティラの弟達を抱きしめながら言った。
「よくぞこの困難な13年間をやり遂げてくれました。ドラウパディーにも会えて嬉しいです」
彼はドゥルヨーダナと交わしてしまった約束について話した。
ユディシュティラはとてもがっかりしたが、公平な考えで言葉を続けた。
「シャルヤ伯父さん、ドゥルヨーダナへの恩返しを約束したことは分かりました。高貴なあなたにふさわしい振る舞いです。
どうぞカウラヴァ陣営に行ってください。
我が伯父と戦わなければならないのはとても不運なことですが」

ユディシュティラの目に涙があふれているのを見たシャルヤは自分の交わしてしまった約束を後悔した。
彼の心はさらに重くなった。
「あんな約束、すべきではなかった。私はあなた方を愛している。
しかし心からの望みではない約束に縛られてしまった」
「伯父さん、私達を助ける為にできることがあります。
ドゥルヨーダナの元を離れて、こちらの陣営に来る必要はありません。
敵軍の中にいながら私達の為にできることがあります」
「もちろんだ。この不幸な出来事に対する償いをさせてくれ」

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