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爪を噛むとき



小学校を卒業するまで爪を噛む癖がなおらなかった。恥ずかしいことって分かってから今日まで一回も噛んだことはない。(けどこっそり爪の横の皮は食べてた。)
代わりに親指の爪を擦る癖を友人に指摘されたことがある。そんな癖あったんだって自分でも気づかなかった。
それからはネイルサロンに通うようになって、自爪って言葉を覚えて、爪を噛んでたことなんて忘れるくらい大切にした。

うつになって仕事を辞めた。
その後も一年ちょっとは爪が可愛くない自分が嫌で美容室にも洋服にもコスメにもほとんどお金をかけずに毎月サロンに通った。

お金がなくなってネイルができなくなった。
焦った。オフだけしに行くなんてわたしのプライドが許せなくて、見よう見まねで大きなパーツをニッパーで外してヤスリで削って。わたしのための可愛いネイルがタンパク質に押し上げられていくのを溜息をつきながら見ていた。

それでもここ2ヶ月は絶対に切らずにヤスリで形を整えて、甘皮を取ってネイル用のオイルをつけてクリームで保湿して少しでも綺麗だと思える爪を維持してきた。

さっき、久しぶりに爪を噛んだ。
右手の親指を子どもみたいに噛んだ。
ずっと大事に守ってきたのに、それはそれはあっさり欠けて、みっともない形になった。

わたしみたい。

ところで好きな曲がある。
『印象派』というアーティストの《綺麗》っていう曲。

いいけど。


おわり

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