うみかぜがやむ頃に


 

毎週日曜18時30分にその時は訪れる。
 




 
丁寧ながらもいやらしさを感じさせない美しき敬語を交え、己が名前を吠える。


 

 
軽快なドラムのリズムを皮切りに、盗まれた魚を取り返すにゃんこ大戦争な物語へとメロディーが派生する。
 
 





 
そう、みんな大好き“サザエさん”である。
 
 
 



 
僕が生まれる30年近く前である1969年にテレビ放送がスタートし、今なお現役バリバリで日曜日夕方のテレビの顔として君臨している。
 
 



 
何を隠そう、僕は“サザエさん”が大好きなのだ。
 
 
 



ちびっ子の頃から好きだったわけではなく、ある程度世の中が分かり始めた頃からのめり込んだ。
 



 
 
高校生の時から大学を卒業するまで毎週録画をして海物語にふけった。
 

 
大学時代の一人暮らしをしていた時期には、番組を録画するレコーダーがなかったので見ることができなかった。
 
 
 
僕は水産学部ではなかったので、サザエさんのリアルタイム視聴を理由に遊びを断ることはできなかった。

 
 
ゆえに、実家に帰った際に溜まっている分を一気見するのである。
 


 
そして、録画容量のためにこっそりとサザエさんの古い放送回を消去していた姉貴に激昂する。
 
 
 
 



なぜ僕が“礒野家・フグ田家大集合物語”を愛してやまないのかを解説していこう。
 
 



 
 
まず第一に、“サザエさん”はキャラクターが目立っているのだが、ストーリー内容が抜群に面白いのである。
 
 




 
毎週1回の放送で7分前後のストーリーが3本あり、その3本それぞれが異なるストーリー性で構成されている。
 


 
街の人気者である“サザエさん”という24歳の若い主婦が番組タイトルにもなっているのだが、実際に1つの物語において主役を担当するのは彼女ばかりではない。
 
 
 



 
「流行っているのは知ってるけどまだ手を出していない。」「見たいけど流行に乗り遅れて見るに見れなくなった。」という読者の方々のために、“サザエさん”のストーリーをジャンル別に紹介しよう。
 
 


 
 
大きく分類すると、
「サザエおっちょこ大騒ぎ編」/「カツオ悪事隠蔽・波平激怒編」/「年中行事編」/「波平外交編」/「ワカメ新たな気づき編」/「タラオ暴走機関車編」/「マスオ・アナゴ共同戦線編」/その他に分けられる。
 

 
 
僕の体感では、「サザエおっちょこ大騒ぎ編」「カツオ悪事隠蔽・波平激怒編」「年中行事編」のこの3つの内どれか1つは毎週組み込まれている。
 




 
 
「サザエおっちょこ大騒ぎ編」はこの作品の大きな軸となる彼女の伝統芸とも言えるそそっかしい性格から織り成すプチトラブルやプチ事件を題材にしたストーリーである。
 
 
 

恐らく多くの人が“サザエさん”と聞くとこのジャンルの物語をイメージするのではないかと思われる。
 
 

 
サザエ本人の早とちりの場合もあれば、カツオの口車にいとも簡単に乗っかり騙されることでトラブルや事件に発展することもある。
 
 

 
憤怒するサザエから己の脚力で悪い状況を打破しようとするカツオの逃走劇は何年たっても色褪せることはない。
 
 


 

 

「カツオ悪事隠蔽・波平激怒編」はその名の通り、カツオが何かしらの悪事をしでかし、何かしらの隠蔽を行うが、何かしらの失態でバレて波平に激怒されるという裁きの鉄槌よろしく教育的メッセージが強い物語である。
 
 
 

特筆すべきは、悪事を行った後のカツオの知能指数の高さである。
 
 
 
悪事に関しては小学5年生らしいテストで悪い点数を取ったりや波平の盆栽を損壊するといったものだが、そこからの事後対応が秀逸なのである。
 
 

 
結果的に隠し通してそのままCMに突入したことこそないものの、彼の状況判断能力と高い計画性に自分を正当化させる論理的思考力には少年革命家ゆたぼんも脱麦わら帽であろう。
 
 
 



 
 
他にも色々とあるが、僕が個人的に最も好きなジャンルは「マスオ・アナゴ共同戦線編」である。
 
 
 
 
 
このジャンルは登場頻度こそそれほど多くはないのだが、まずハズレのない絶大な安定感を誇るストーリーなのである。
 
 
 
サザエの配偶者であるマスオさんは、勤務している海山商事の同僚であるアナゴさんと非常に仲の良い関係にある。
 
 
その仲の良さがゆえに、マスオさんはアナゴさんの悪事に共犯者として巻き込まれることが多い。
 
 
 
何とか二人で口裏を合わせてあれやこれやと策謀するのだが、これが毎回大失敗に終わるのである。
 
 
 
しかも、このバレる手段というのがいつも決まってサザエとアナゴさんの奥さんとの固定電話経由なのである。
 
 
 
 
このジャンル回においては、礒野家の黒電話が鳴り響くと終焉が近い確定演出となる。
 
 
 
 

そして、最後に何も知らないアナゴさんが家に帰ると憤慨した奥さんにとっちめられ、翌日顔面傷だらけで出社するのがお決まりのシーンである。
 
 



 
1つ疑問なのだが、アナゴさんの奥さんがとっちめる際の攻撃手段が爪でのひっかき攻撃なのだが、あれに関しては未だに納得がいっていない。





ちなみにだが、個人的に「ワカメ新たな気づき編」はあまり好きではない。



これはワカメが何かの気づきから何かを始めるというストーリーなのだが、基本的に「みんな、ごめん!私、間違ってた!」という茶番的反省が行われるオチなので好かない。






このように"サザエさん”という作品は老若男女問わず楽しむことができる物語なのである。







サザエさんの公式ホームページに『サザエさん検定』というクイズに答えるという簡単なゲームメニューがあった。





10問正解することで”サザエさん博士号”を認定されるというもので、サザエさん大好きマニアとしては挑戦せざるを得ないものだった。


正直、高校生から大学生までちゃんと学びに励んできたし、学士号のみならず飛び級で修士号まで取得している自信はあった。




姉貴とのレコーダー録画容量大戦に勝ってきた自信を胸に、僕は『サザエさん検定』に挑んだ。







しかし、僕は1問目から自分の未熟さを痛感させられた。








「Q1. フネさんのお兄さんの名前は?」
「A:鯛造 B:鮭ノ介 C:鯉太郎」







フ、フネさんのお兄さん!?







いやいや、フネさんのお兄さんなんて聞いたことがないし見たことがない。






僕のフネさんの知識が薄いということもないはず。







フネさんは年齢5?歳という謎に下一桁を明かさないという不可解設定なのも知っているし、旧姓が「石田」ということだって知っている。






とはいえ、フネさんのお兄さんはアニメを見ていて出てきたことはないはず…。





これは古参ユーザーであるサザエさん漫画派を優遇した問題に違いない。







結局僕は10問中6問正解だった。








結果発表の画面でワカメのイラストの横に、






「普通に知ってますね。」






というそっけないコメントが表示されていた。








何ともしょっぱい結果に終わってしまった。









僕はまだまだサザエさんという奥の深い大海を知らない井の中の蛙に過ぎないのである。









霧島









 
 
 
 
 
 
 

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