見出し画像

一体何か変わった?!中国越境EC政策

前回の記事「爆買い」に続く中国のトレンド、「越境EC」とは?において、「海淘(ハイタオ)」には「代理購入」・「海外転送」・「越境EC」・「爆買い」の4つチャネルがあることをご紹介しましたが、今回は、朝令暮改である「越境EC」の政策について触れたいと思います。4月8日より越境EC政策が大きく変更することになり、その後も立て続けに政策が出され、越境EC業界全体に大混乱を招きました。結局、越境EC政策どのような変更があったのかについて内容を整理したいと思います。

越境ECの2つのモデル

 政策について触れる前に、まずは越境ECは大きく分けて「直郵モデル」と「保税モデル」の二つがあること念頭に入れて頂きたいと思います。前者は日本の倉庫による直送配達販売するパターンで、オーダーを受けてから日本より発送するためリードタイムが長い。一方、後者は中国の保税倉庫(通関するまでは課税されない)からの在庫販売するパターンで、オーダーを受けてから中国国内より発送するためリードタイムが短いのが特徴となります。

税制改正前の行郵税とは

従来、EMS(国際スピード郵便)を利用した並行輸入(代理購入や海外転送)が増加する一方で、関税があまり取れていなかった中国政府は2012年5月より越境EC実験区プロジェクトが始動しました。2014年5月10日、習近平国家主席が鄭州の越境EC実験区を視察した際に、“世界から買う、世界に売る”というスローガンを掲げ、越境EC発展の方向を指示しました。そして、2014年7月に海関総署が56号号文書(越境EC貿易輸出入貨物、物品に関連する監督管理の事宜についての公告)および57号文書(税関監督管理方式コード追加についての公告)が発表され、越境輸入ECが合法的地位を確立しました。2013年から2015年にかけて鄭州・上海・重慶・杭州・寧波・広州・深セン・天津を八大越境EC試点都市として批准しました。

 これまで一般貿易でかかっていた「関税+増値税+消費税」は、個人の年間購入上限金額が2万元まで、かつ一回あたりの購入上限金額が1000元までであれば、一般貿易の税率はかからず、「行郵税」という「10%・20%・30%・50%」の4段税率が適用され、行郵税が50元以下の場合は、免税されました。これが2016年4月7日まで適用される予定だった越境EC政策です。(以下「改正前」とする。)

しかし、3月24日に「越境EC小売輸入税収政策の通知について(財関税(2016)18号)」および「我が国は4月8日より越境EC小売輸入税収政策ならび行郵税政策調整を実施」が通達されたことで、越境EC業界に大きな衝撃を与えることとなりました。2016年4月8日より適用される予定だった越境EC政策である(以下「改正後」とする。)」が通達されたことで、越境EC業界に大きな衝撃を与えることとなりました。2016年4月8日より適用される予定だった越境EC政策である(以下「改正後」とする。)

4月8日以降の改正予定だった税制とは

4月8日から適用される予定だった越境EC政策内容は、以下の通りです。改正前の個人年間購入上限金額は変わらず2万元でしたが、一回あたりの購入上限金額は1000元から2000元に引き上げられ、2000元を超えた貨物は、一般貿易扱いとして徴税されます。上限金額以内であれば、関税率はゼロとなりますが、増値税や消費税(化粧品など高価のものにかかる)は一般貿易で課税される増値税や消費税の30%減額した税率が適用されることとなりました。この税率は保税モデルに適用される税率となります。

さらに、追い打ちをかけるように4月6日に第一次越境EC輸入商品リスト品目(1142種)が発表され、この商品リストに記載されている品目のみ、中国税関監督管理のもと越境ECスキームで輸入通関が可能となりました。また、4月15日には第二次越境EC輸入商品リスト品目(151種)が追加されました。

今後はさらにリスト品目が拡大される可能性があります。また、リストに記載されていない品目については、越境ECスキームで輸入通関ができないため、引き続きEMSを利用した小包郵便配達の「並行輸入」が横行されると予想されます。

あまりにも政策変更の振れ幅が大きすぎたためか、多くの越境輸入EC事業を行う企業は天変地異の政策変更に対応することができず、在庫切れなどを引き起こし、倒産寸前まで追い込まれる状態になりました。この事態を重く見た中国政府は、2016年5月24日に海関総署より「越境EC小売輸入の新たな監督管理要求に関する事宜の通知」が通達し、八大越境EC試点都市と福州・平潭の10拠点は4月8日より実施開始予定の越境EC政策を約一年間はこれまでの越境EC政策で運用される猶予期間(〜2017年5月11日まで)が与えられることになりました。したがって、4月中に2回発表された越境EC輸入リストに記載されていない品目については、一旦は、輸入許可に係る書類は必要がなくなりました。