GTOに対する無知の無知

配信をしてるとポーカーについて訊かれる。
答えてはいるものの「お前が知るべきはそもそもそこじゃねえ!!」と内心思うことがある。先に知るべきことがあるよな・・・と。
質問内容からプロファイリングできる質問者のレベルにより必要な知識が推察できる。それは質問の答えではない事が多い。
つまり、質問自体がナンセンスだったりする。回答を得ても強くならない。

・無知の知を経て質問できる


効果の高い質問をするには、”無知の知”から始める必要がある。”自分が知らない事”がどれくらいあって何を知るべきか把握する。誰にどんな質問をするべきか把握する。

例えば、沖縄に行きたいとしよう。君は飛行機の時間や値段を調べるだろう。あるいは航空券を購入できるサイトがどこか調べるだろう。船で行けないか調べる者もいるだろう。沖縄に行くという目的が明確なので自分が知らないことが、交通手段なのか、チケットの購入場所なのか、出発の時間なのか、当たりが付いている。
当たりが付いていれば的確な質問が可能なので検索したり知ってる人に質問すればいい。欲しい情報が寸分違わず手に入る。

当たりが付いていなければどうなるか。例えば、「第3新東京市」に行きたいとしよう。しかし、君は第3新東京市が何なのかわかっていない。場所なのか島なのか建物なのかわかってない。この状態で人に質問するのは危うい。的確に質問できない。誰に聞けばいいかもわからない。回答を得たところでその妥当性も見当つかない。足立区でその辺歩ているおっさんに第3新東京市がどこか尋ねたら大阪を紹介されるかもしれない。地図で探しても第3新東京市は見つからないだろう。第3新東京市はエヴァンゲリオンに出てくる架空の都市だ。存在しない。

さて、「第3新東京市」を「GTO」に置き換えたらどうだ。概念なのか、戦略なのか、原理なのか、バランスするだけの守りなのか、オーバーベットを使うための攻撃なのか。

難しいよね。真に必要な知らない事を質問によって得るのは難しい。
当たりをつけていなければ、自分の知らないことを尋ねる事すらできない。
正しく質問するには既にある程度知っている必要がある。

今日はそんな不条理に抗えるかもしれない文章を書いてみよう。

・GTOについて自分が何を知らないか知っているか


三択に分けた。君がどれくらいわかっているかわかっていないかどこにいるのか把握してみるんだ。漠然とでいい。どこに向かうべきか方向だけでも掴もうじゃないか。自分がどこなのかなにが足りないか。ざっくり3つ。自分がどこか自覚してみて欲しい

ポーカー学習の全体像はざっくり

①ポーカーの原理原則を学ぶ(基礎。数学的な話。ex,AKQゲーム

②原理原則に基づいた定石を学ぶ(近似ナッシュ均衡の理解。具体的なプレイラインの把握)

③近似ナッシュ均衡を軸に、相手に合わせてEVを最大化させるためのプレイラインの変化を学ぶ(Exploit)

の三段階に分けられる。一番重要なのは①だ。実は巷で粗く扱われがちなAKQゲームが一番大事なんだ。AKQゲームを理解できれば、大きいbetがEVが高いという原理が数学的にわかる。降ろせそうだから大きく打つ、コール貰えそうだから大きく打つ とは別次元の話だとわかる。ポーカーに潜む法則がわかる。このゲームの争っている本質は、言い換えるならば、”原理的にEVの高い大きいbetを扱えるシチュに相手を追い込むこと”を競っている。もっともわかりやすく表現するならば、ポーカーとは自分が有利な状況でなるべく多くのチップを相手にポットに入れさせることを競っているゲームである。相手より自分からオールインする状況を多く作って相手をより悩ませようとする判断押し付けバトル。それが一方的にポラライズしている状況を作るってやつだね。

①原理原則を知らないと②定石がなぜ②になるのか理解できない。PiosolverやGTOwizardの示すアクションがなぜそうなのか理解ができない。定石とされるアクションがなぜ定石たるのかが理解できない。
例えば、レンジ全体で小さいCBを撃つ。このアクションがなぜ得なのかどんな狙いがあるか、ある程度の言語化と感覚的な理解。仕組みレベルでの理解が必要であり、仕組みの理解にはその前提である原理原則の理解が必要条件である。ここで数学が出てくる。ポーカーの大きな壁だよね。俺は数学的な話が一番難しかった。学校の勉強を疎かにしてたの初めて後悔したよね。原理原則は数学でわかるのに、数学がわからねーんだから地獄だよ。しょうがないね。ポーカー強くなりたきゃ義務教育のツケ払うしかないよ。一緒に後悔しよう。

そして最後の③Exploit。②がいわゆるGTO戦略。③は②を始点に着地するEVを最大化させる戦略。Exploit。これを発想するには始点がなくてはどうしようもなく始点である②を知らないで発想する終点③は感覚という名の妄想であると言っておく。(※最終的には感覚だけで③Exploitを掴める領域を目指すが、その感覚を作る最適解は②と③の学習反復横跳びであり、結局感覚を磨くのは勉強が最適、ということになる)
強くなるとは自分の判断から妄想を取り除いて根拠ある判断に増やしていくと言い換えてもいい。この根拠ってのは相手がやたら降りるからとか相手がブラフしまくるからだとかティルトしてるから焼けてるからではなく、レンジの構造上ドローに偏ってるとかエアーに偏ってるマージペアに偏ってるとか、お互いのレンジの性質や傾向である。その傾向を基に戦略を発想し、最後の詰めとして相手の傾向を踏まえ発展させて③Exploit戦略を出力する。相手の傾向というは、お互いのレンジの傾向の次に扱う情報だ。優先順位はあくまで盤面整理が先で、盤面整理のあとに相手の傾向を情報として加える。(※もっとも、盤面整理を構成しているのは相手と自分の傾向であるが)

①原理原則の理解には本やブログを読む、動画を観る、人から学ぶのがいいと思う。どれがいいかは環境や適性による。すべての角度から試せばいい。俺は本と動画をベースに理解していて、Application of NLHEを読んだのとRun it onceにあるtoy gameの動画を観た事で大きく理解が進んだと思う。大詰めは配信中に現れたPiosolver博士とのyoutubeコメント欄での対話だった。配信万歳。
②と③はPiosolverだね。俺の場合はPiosolverに辿り着いた。
最終的に、すべてはPioになると思ってる。

・基礎を知らないで応用を勉強している件


で、99%の人は①原理原則でつまずいてる。いや、つまずいてることにすら気づいてない。存在を知りえない。あるいはわかっていると誤解している。
知らないことに無自覚なプレイヤーは多い。無知の無知。知らないから想像もできない。盲点になる。貧困で食べるものもままならない生活をしている人にスマートフォンの便利さを説いても理解されないように。原理原則を知らないでソリューションを紐解いても真の理解はしようがない。意味が薄い。スコトーマを外せ。
AKQゲームを把握してないならソリューションやExploitを勉強したとて、経験値が溜まりにくいデバフを背負ってモンスターを討伐してるようなもんなんだ。効率が悪い。
しかし、原理原則を理解してないプレイヤーの多くが最も時間を割いてるのがその応用発展形であるとも言える②や③だと思う。それでは強くなるのも時間がかかるわけだ。土台がない。

最後に。
君の自尊心を揺さぶる。あえて言おう。

GTOWizardで確認をしたり覚えたり、youtuberの動画や配信でプレーラインを観たり、君たちが「努力」等と呼ぶそのくだらない行いの数々で貴重な時間を潰すのは結構だが・・・君は自分の本当の目的を忘れてはいないか。
このゲームの目的、勝利。
あぁ、そうだ。強くなることではない。”人よりも”強くなることだ。
その点では・・・君は不真面目だよ、サバイバー。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?