『月と六ペンス』感想 〜自分の居場所と生き方を見つけた男の物語〜

 こんにちは、WEBエンジニアのSham六です!

 僕は小説が好きで、海外小説の中では特に『月と六ペンス』が好きです。(ちなみに日本の小説では『すべてがFになる』と『聖なる怠け者の冒険』が好きです。)数日前に久しぶりに読んでみたのですが、前回読んだ時より考えることが多かったので、感想を書いてみました。

※以下の文章には内容のネタバレが含まれているのでご注意下さい。

1.主人公ストリックランドについて

 ストリックランドは自分勝手な男です。彼の態度は周囲の人間を不愉快にし、彼に関わった人間の何人かは不幸な結末をむかえてしまいます。しかし彼は好きで周囲を振り回しているわけではありません。周囲を気遣う余裕が無いのです。
 ストリックランドの苦しみを僕は次のように解釈しました。

「しっくりこない」

 これは自分の居場所と生き方にしっくりきていないという気持ちです。彼がどのように苦しみ、どのようにしっくりできる居場所と生き方を見つけたかを、物語を次の3つの時期に分けて紐解いていきます。

・証券会社を辞めて家族を捨てるまで
・パリで絵を描き始めてからパリを出ていくまで
・タヒチに着いてから亡くなるまで

2.ストリックランドが証券会社を辞めて家族を捨てるまで

 物語序盤、ストリックランドは証券会社に勤めていました。彼には美人な妻との間に子供もいました。そのため語り部をはじめとした周囲の人間は、ストリックランドは成功者ととらえていました。
 しかしこの時期のストリックランドは仕事にも自分の居場所にも納得していません。突然証券会社を辞め家族を捨てた彼の行動は周囲の人間からは理解できないものでしたが、ストリックランドからすれば当然の行動なのです。

3.パリで絵を描き始めてからパリを出ていくまで

 パリに来たストリックランドは絵を描き始めました。しかし、ストリックランドの絵は世間では全く評価されません。彼の絵を絶賛するのはストルーヴェという画家のみです。そんなストルーヴェを含む周囲の人間を、ストリックランドは自分勝手に振り回し、ついにはとある女性の死に繋がってしまいます。
 この時期のストリックランドは画家という自分に合った生き方をしていましたが、同時にその生き方に苦しんでいました。彼にとって絵を描くこととは何かを表現することであったのですが、何を表現したいのかは彼自身にも分かっていなかったからです。

4.タヒチに渡ってから

 タヒチに渡ったストリックランドはついに自分の居場所を見つけます。ストリックランドはタヒチの人々に対しても傲慢な態度で接し続けますが、そんな彼を島の人々は受け入れてくれます。自分の生き方を認めてくれる場所、それこそがストリックランドが求め続けた居場所だったのです。晩年彼はハンセン病にかかってしまいます。しかし、自分の生き方と居場所を見つけたストリックランドは渾身の壁画を描き残し、満足してこの世を去りました。

5.自分と照らし合わせてみる

 最後にストリックランドの人生を通して、自分の人生を振り返ってみます。僕は新卒で就職した電力会社を辞めましたが、これは自分の仕事がしっくりきていないからです。その後SESとして二年間働き、ITエンジニアの仕事が自分に合った生き方だと分かりました。しかし、人間関係や待遇などを改善するために1月から新しい会社に転職しました。
 ITエンジニアという、自分にしっくりくる生き方を見つけた今、次は自分にしっくりくる環境を探す時です。新しい会社が自分にしっくりくる環境であることを願うばかりです。

 

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