見出し画像

はじめての制作依頼

結婚式のウェルカムボードとか、友達の誕生日用にイラストを描く機会は多々あったが、僕の初めての「制作依頼」は、専門学校の同級生の友達のデスメタルバンド、Death I Amのライブ告知用のイラストだった。

画像1

Death I Amは、僕のデスメタルバンドのライブの初体験でもある。

衝撃的だった。耳が壊れるくらいの爆音、激しいステージライトで目が眩んだ。帰りの電車は耳がずっとキーーーン状態で何も聞こえなくて心配になったのを覚えてる。でも、すごく楽しい思い出になった。

画像2

Death I Amが新宿アンチノックでPVを撮影する日は、後ろの方まで客でパンパンだった。200人以上のお客さんはいたかもしれない。

そんな彼のバンドのためにイラストを描けるのは、僕にとって光栄なことだった。だから電話でイラストの相談されたときは、「やりたい!」と即答した。

画像3

「椎名の絵はデスメタルバンドと相性がいいね」

と、言ってもらえた。また機会があるならやってみたいと伝えた。そのときはまだ、友人のお世辞だと思っていた。

それからしばらくして、「俺のバンドじゃないんだけど、バンドのロゴを描いてみない?」という話をもらった。

画像4

HONE YOUR SENSEは、初めて僕に有償の仕事を依頼してくれたバンドだった。制作費は今の3分の1くらいかな。けど、金額なんてどうでもよかった。友達以外のクライアントは初めてだったし、自分のイラストで日本のメタルシーンに貢献できる。それだけでやりがいは十分だった。

画像5

ドイツで毎年開催されている世界最大級のメタル・フェス「Wacken Open Air」の出場権を賭けた戦い「WOA Metal Battle」にて、2012年度の日本代表としてHONE YOUR SENSEが勝ち上がった。これにより、僕がHONE YOUSE SENSEに描いたロゴやイラストも視認される機会が多くなった。

HONE YOUR SENSEが帰国したとき、僕の分のWacken公式Tシャツをお土産として買ってきてくれた。本当に嬉しくて、毎日のように着ていた。脇に大きな穴が空くまで着倒した。

画像8

そんなことがあって、1年も経つ頃には新宿、渋谷のライブハウスには自然と出入りするようになっていた。ライブハウスに行けば誰かしら知り合いがいて、プライベートでもバンドマンと遊ぶ日が増えた。

画像9

当時の僕は、東京で活躍しているメタルバンドのみんなの音楽に対する姿勢や情熱が大好きだった。かっこいい音楽をやっている彼らのために、自分ができることをしようと思った。イラスト以外にも、ライブ撮影やアー写のレタッチもやった。

彼らと、彼らがつくっているシーンが好きだった。そのシーンの一部になっている自分が誇らしかった。だから当時は、単価1万円のイラスト案件を描くのに3週間費やしても全く苦に感じなかった。

画像8

クリエイターの間で「タダで仕事を受けてはいけない」という話をよく聞く。確かに自分のスキルを安売りすることはよくないこと。

でもこうやって自分の道のりを振り返ると、タダで受けた仕事によってスキルとキャリアを積み重ねができたのも事実。

画像8

タダで受けてはいけない仕事と、タダでも受けた方がいい仕事。1つの判断基準として、「このクライアントと一緒に成長したい」、「このクライアントのやっていることを応援したい」と、あなたが心から思えたのなら、引き受けてもいいのかもしれない。

キャリアを構築する上で大事なのは、共にキャリアを構築し、志を持った仲間やライバルが必要だと僕は思う。人は、一人では成長しない。

Photo: Yoshi Travel Films

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?