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(ndh-005) dubの手法に関して

newdubhalから10インチレコードが出ます。今までは他人のレーベルから作品が出るときは自分から曲をレーベルに送る、又は何か送ってよって言われて採用されるカジュアルな形だったのですが、今回は初めてnewdubhall用に1から作品を作ると言う依頼を受け、かつA面がビート有りのDub、B面がアンビエントという面白い方式のリリースだったので、他のアーティストのDub的手法とそれを踏まえてどう自分がどう換骨奪胎して特にB面の"Blurring Off In To Its Opposite"を作ったか残しておこうと思います。

newdubhallレーベルは日本のDubバンドの金字塔Dry & Heavyの系譜を継ぐHeavymanners等のキーボード奏者だったSaharaとLucyの二人が主宰する、Dubの実験的且つミニマルな側面に着目したレーベルで、そのSaharaとドラマーのOkumaはUndefinedという2ピースのエクスペリメンタルなダブバンドで活動しています。(ライブも音源もかっこいいです)

newdubhallからリリースしたアーティストは、undefined、こだま和文、Babe RootsとDeadbeat。先述したようにリリース全て片面がDub 片面がアンビエントという方式で、あまりアンビエントというジャンルを作ってこなかっただろうアーティストにそのテーマを課すという面白いスタイル。

背景としてSaharaがレゲエやダブだけでなく、実験音楽やフリージャズ、アンビエントが好きな事があります。少ない音数でアトモスフィアを構築する等の共通項があるので、これは別に意外なことではないのかと。

レゲエがDubになる過程として、King Tubby等の1970sオリジネーター達の方法論をざっくり言うと、ドラム、ベース、ボーカル、ギター、ピアノ、オルガン、ホーンといったレゲエの構成要素からリズムセクションと呼ばれるドラムとベース以外のほとんどの要素を削ぎ落とし、剥き出しになった骨組み(ドラム&ベース)を前に出し、その骨格を強調するリバーブやディレイ等のエフェクトを与えることによって原曲とは違う無骨な力強さや荒々しさを与えること(それだけではないですが)。

Dubは人間が服や装飾品を一枚一枚脱いでいくごとに身体性や肉体からのエネルギーが増していき、服を着た状態の人間とは全く違う印象を与える事、に似た一面があると思っていて、UKに渡ったDubがより攻撃的になった1990年代以降のUK ニュールーツはDubバージョンが2-3個収録されているレコードも多く、これは服を着た状態からちょっと脱ぎ落としたバージョンや完全に剥き出しにしたミックスなど何パターンも用意し最後のミックスが最も骨格を前に出したバージョン且つ最も強度が高いものとなっています。(全部ではないですが)

ここまでは程度は違えどレゲエからグルーヴを司るリズムセクションを残しそれ以外を削るというやり方。

さらに近年にはリズムセクションが生み出した”そこに在る“グルーヴはドラムとベースを抜いたとしてもそこに残るのではという仮説を元に別のベクトルのミニマルさに向かうアーティストが現れます。例えばundefinedやSeekers Internationalの二組、下記のUndefined+Kazufumi KodamaのB面なんかはベースライン無し、ドラムも最小限で残響や微かな音のパーツで重く儚い空気感を生成しています。

Seekers International (SKRS INTL)の初期とかもドラムもベースも入ってないDubありますね。


このリズムを抜いてもその下に敷かれたグルーヴが残る説はSeekers International自身がabletonのインタビューで詳しく説明してます。(インベ君に教えてもらって何回も読んだやつ)SeekersもnewdubhallのSaharaと同様Basic Channelの影響を挙げてます。

自分も今回のリリースで、こういった引き算のダブ方式でビートなしのDubをアンビエントぽく作ることを考えていたのですが、newdubhallの前リリースとなったDeadbeatのThings Fall Apart (上にリンク貼ってます)の出来が良すぎてこれは違うアプローチを考えないと面白いリリースにならないと思い、締め切りを延ばしながら考えてたところ、当時バイトしてた楽器店implant4でSomaのPulsarという、ざっくり言うとその場で録音したループをランダムに再生するルーパーを試奏した際、ルーパーで入力した音がランダムに予測できないタイミングで飛んでくる感覚が、King Tubbyなどがダブミックスした曲でディレイがかかったパーツが突如飛んでくる時の感覚に似ていると思い、ディレイやループ、モジュレーションなど時間と空間の変化による揺さぶりというダブの手法を自分なりに解釈してA面をパーツに解体、Cosmosで時間軸を変えて散りばめることにより時間的変化というDubの構成要素を再現した曲を作ります。ルーパーのフィードバックを上げていきバラバラだった音素材の関係性が曖昧な塊になったあと、曲の後半ではトラック全体をスクリューし、リバースさせてさらに時間軸の歪みによる蕩揺を意識しています。(結果的にアンビエントよりもドローンに近くなってしまいましたが)

仕上がりをレーベルボスのSaharaに送っり、気に入ってくれて「これみたいだ」ってリンク送ってくれた曲がこれ。こちらもかなり時間の変化や構成で揺さぶられます。知らない曲でしたがカッコいいです。

改めてこちらB面の "Blurring Off Into Its Opposite"です。まだフル音源はどこにも上がってないのでサンプル音源で。特に自分からはこれがDubだとかは言ってないのですが、これはDubじゃないねと言われる機会があって、そういう意識で聞かれているのも嬉しいのですが、Dubの概念や構成要素の1つを使ったダブへのメタファーだと思ってもらえればありがたいです!


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