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曲がった蝶番~読書記録216~

密室トリックの巨匠、ジョン・ディクスン・カーのミステリー小説。
登場するは、名探偵フェル博士。

1年前、25年ぶりにアメリカから帰国し、爵位と地所を継いだジョン・ファーンリー卿は偽者であり、自分こそが正当な相続人であると主張する男が現れた。渡米の際にタイタニック号の船上で入れ替わったのだと言う。あの沈没の夜に―。やがて、決定的な証拠によって事が決しようとした矢先に、不可解極まりない事件が発生した。

沈んでゆくタイタニック号での事故で、入れ替えが起こったのだ。

タイタニック号は1912年4月に氷山にぶつかり、その後、沈没した。
乗客、乗組員では、亡くなった者も多いが、救出された者も多かった。

記憶を失った状態で助け出された少年は、そのままジョン・ファーンリーとして暮らしてきた。そこに自分こそ本物だと名乗る人物が現れ、ジョン・ファーンリーは首を切った後、池に沈むという状態で発見される。
果たして、自殺か他殺か。

密室殺人というよりも、被害者は池の端にずっといたが他の者はいなかったという、そして、池に倒れこんだという目撃談があった。
ジョン・ディクスン・カーのよく使う足跡トリック。犯人の足跡と思えるようなものはなく、もし他殺であるなら、どのように殺害がなされたのか?

ここで、完全なネタバレだ。
パトリック・ゴアとして生きてきた男は、タイタニック号の事故の時に両足を失くすことになってしまった。
その後、サーカス団で働くことになったパトリック(本当はジョン)は、始めは、両足のない状態での移動を覚え、幾つかの義足を使いこなし、その義足ゆえに身長さえも変えられるほどの変装もしていた。
普段は、義足にズボンで他人にはわからないようにしていたが、フェル博士には見破られていたのだ。

パトリックの代理弁護士として現れたウェルキンの証言では、庭でガサガサいう音が聞こえたという事だった。それを気に留めたのはフェル博士だった。

犯人は。。。二転三転するのだが、最後に、パトリック(本物のジョン)からの告白(博士への手紙)により、パトリックが両足がないこと、事件の時には義足を付けずに庭の低い木立に隠れていたこと、義足なしで進んだことそして、偽物のジョンの首をナイフで刺し殺したことが明かされるのだった。

そうか、そういう事だったのか、と最後になってわかるのだが。
21世紀の警察の科学捜査が進んだ現代においては、どうだろうと思えてしまうのだ。

と言いつつも、ジョン・ディクスン・カーの作品は、やはり読みごたえがある。



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