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チョコレート工場の秘密~読書記録421~

チョコレート工場の秘密  ロアルド・ダール 柳瀬尚紀訳

チャーリーが住んでいる町には、世界一のチョコレート工場がある。
だれもそこで働く人を見たことがないナゾの工場だ。そこへ五人の
子どもたちが招待されるというので大騒動! さあ、何が起こるのか?!
奇抜な発想が楽しい大人気の物語が、新装版で登場。『ユリシーズ』の名訳で知られる柳瀬尚紀氏の新訳です。

柳瀬 尚紀(やなせ なおき、1943年3月2日 - 2016年7月30日)は、日本の英文学者、翻訳家、随筆家。
その翻訳は、語呂合わせなどの言葉遊びを駆使した独自の文体で、「悪訳」をするとみなした翻訳家に対する痛烈な批判を行っていた。

いわゆる児童文学、小学生向けの作品なのだが、大人が読んでも十分に楽しめるものだ。
更に、資本主義のマイナス面を誇張しているなと思うのだが、そこはユーモラスに描かれている。
主人公チャーリーの家には4人の寝たきり状態の祖父母がいる。母が世話をしているのだ。父親は小さな工場で働く為に毎日がカツカツの生活で夜はキャベツのスープだけのような暮らしだ。
資本家は贅沢な暮らしをしている。
これって、今現在の日本?イヤ、世界の資本主義国家のようじゃないか?
大手チョコレート会社の工場に招かれたチャーリー以外の子どもは、実にわかりやすいくらい誇張されて描かれている。こんなになったのは誰が悪い?甘やかした親のせい。みたいな歌も出て来る。
なんだか、読み進めていくうちに、利益追求社会の問題点を見せられているのだなと思うのであった。テレビにしがみついている子供が出てきたが、現代ではスマホだろう。日本では高校生、大学生は1日に20時間スマホをつけているとか当たり前らしい。

個人的には、昭和の中頃に大正生まれの田村先生の訳で読んだ覚えがあるのだが、全く違った面白さであった。
柳瀬先生の訳は本物だ。登場人物の名前をそのまま訳さず、作者の伝えたかった思いに替えている。韻を踏んだ歌も上手く訳されてある。
これは、もう訳者が作品を生かす!の見本であろう。

チョコレート工場の続編、並びに、ロアルド・ダールの作品。柳瀬先生の訳された他の作品。色々と読みたい本がまたまた出てしまった。
人生は楽しい。

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