『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く~読書記録442~
同志社大学講義録 『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く 2023年 佐藤優
悪に無自覚であってはならない――。
人と人との関係の中から悪は生まれ、自らの悪に気づかないことが、さらなる恨みや憎しみを生む。
人々の悪が社会の中で増幅すれば、やがて戦争や虐殺事件のような惨劇につながることもある。
村上春樹氏の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』をテキストとして、資本主義、能力主義、軍国主義など社会システムが生み出す悪から、人間関係の中で生まれる悪まで、人間の「根源悪」の問題についてあらゆる角度から考察する。
母校・同志社大学の教育機関「新島塾」にて行われた講義を書籍化。
佐藤 優は、日本の作家、元外交官。同志社大学神学部客員教授、静岡文化芸術大学招聘客員教授。学位は神学修士。 在ロシア日本国大使館三等書記官、外務省国際情報局分析第一課主任分析官、外務省大臣官房総務課課長補佐を歴任。その経験を生かして、インテリジェンスや国際関係、世界史、宗教などについて著作活動を行なっている。
佐藤優氏というと、神学部を卒業、牧師の資格を持ちながらも教会やキリスト教主義の学校教師になることをせず、外務省官僚になった人。というイメージであった。
鈴木宗男氏との関係が強い!そのイメージが強すぎるのもあるかと思う。
本書の元となったのは、2021年5月から8月まで、オンラインで行われた塾生有志とのオンラインでの読書会だ。テキストは村上春樹氏の「ねじまき鳥クロニクル」だ。この小説を私は「悪とは何か」という切り口から塾生と一緒に読み解いていくことにした。(本書より)
そう!この本のテーマは「悪とは何か?」なのだ。
コロナ過で大学の講義もオンライン。又、2022年にロシアとウクライナの対立。アメリカがそれに介入。
なんて色々な事があったその渦中に書かれた本なので意味があると思う。
佐藤優氏は、ロシアとウクライナの対立を「価値観戦争」と言っている。
西側からすると、民主主義VS独裁
ロシアからすると、真実のキリスト教(正教)VS悪魔崇拝
ううううむ。本当のキリスト教って、実は個人や生きてきた国などによって違うのかもしれないな。
私なんぞは、カトリックはやはり受け入れることは出来なかったが、カトリックの人たちは、ルーテルやメソジストなどと、エホバ、統一教会は同じようなものと見ているのだからね。
「自己と対話しながら読む」
「隠された意味を読む」
この2つを佐藤優氏は学生に奨めている。
小説を読むというのは「自分を知ること」なんです。自分の持つ内面世界が、文章のどの部分に感応したか?その感応した部分が、今のあなたにとって重要な意味を持つということなのです。(本書より)
小説に限らず、本は個人個人で違う感想、捉え方をしても構わない、と私は思っている。
ただ、このネットの発達した時代。ちょっとした感想をツイートいたりすると、作者が怒ってしまうことしばし。
おいおい。エゴサーチする時間に執筆準備しろよ、と思ってしまうのだが。
悪とは何か?
資本主義がもたらしたものもあるのだろう。
お金とは信用。元々は物々交換であったものが、簡単なものに、とお金になった。紙幣そのものに価値があるわけではない。国の信用なのだ。
それでも、人はお金を欲し、沢山稼ぐと自慢したがる。お金の持つ邪悪性なのだろうか。
佐藤優氏は小さい頃からキリスト教会に通い、同志社大学神学部を出ている。又、同志社大学学生との講義に使われたものなので、あくまでもキリスト教的な観点から描かれていると思った。
村上春樹氏の父の実家は浄土宗寺院。従弟がそのお寺を継いでいる。
そんな事を考えると、村上春樹氏の本、考えは浄土宗的なものもあるような気もするのだが、残念無念。
浄土宗の偉い先生で、村上春樹を語る人に出会った事がないのだ。
いずれにしろ、本1冊でこんなに深く考える事が出来る、教授に学生たち。幸せだと思う。
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