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目に見えないもの 油川秀樹博士自叙伝~読書記録1~

日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士の自叙伝。

1907年(明治40年)に地質学、地理学を研究とする小川琢治氏の息子として生まれた。1932年(昭和7年)、湯川スミさんと結婚。湯川家の婿養子として、湯川姓を名乗る。

理論物理学の系譜をたどれば「神話」にまで行きつくかもしれない。が、自然の持っている力の少なくとも一部分は、直接神の手を借りずとも人間の手で自由に出来ることがわかってきた。自然界の様々な事象の仕掛けが複雑で全能の神の手によって作り出されたものだとしても、この仕掛けさえ飲み込めば、ある程度まで支配できるという希望が湧いてきた。

物理学の課題のひとつは「物質とは何か?」という問いに答えること。

自然界には様々な「物」がある。これを無生物と生物に分けようとする。石は無生物、猫は生物であるという。猫は栄養を取り、呼吸し、盛んに動き回り、成長し、増殖する。石のようにじっと動かないのとは大変な相違である。が、どちらも非常に多数の原子の集まりである。

生き物を生き物として取り扱う態度と、それを物理学的に分析しつくす態度は本来難しいのではないか。

われわれが生物を「生きている」と認めること自身、一つの生命の他の生命に対する共感を意味しているのかもしれない。

物理学的な世界はそれだけで完結したものでなく、そのかなたに心理学的な世界を認めざるを得ないのである。

少し不眠症になったのか、夜になると頭が冴えてきて色々な考えが頭に浮かぶ。朝になってそれを忘れてしまうのが惜しいので枕元にノートを用意しておいて、考えがまとまる毎に起き上がって書きつける。こんな事を繰り返しているうちに、構想が明瞭な形を帯びてきた。そこで大阪大学で発表を行った。これがのちにノーベル賞を受賞する元となっている。

学問をすることの喜び、この境遇を与えてくださったすべての方々に感謝したい。

ちなみに、湯川博士の義父、湯川玄洋医師は夏目漱石の「行人」に出てくる医師のモデルであるらしい。

面白くて、すぐに読み終わる類の本であった。湯川博士は本当に一般の人とは違うな、と思ったのであった。私の知る不眠症の人は、夜中にネットサーフィンをしたり、ゲームをしたり、である。そして、不眠症であることに文句を言う。このような発想がやはり天才なのだろうか。

私も、真似をして、ノートを置き、夢を書きつづるか。。。。

すべてにおいて、感謝が溢れているとも感じた。

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