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司法試験合格体験記① 概要編


はじめに(自己紹介とか)

 この度、令和5年度司法試験に合格することができました。
そこで、これから司法試験を目指す人や候補に入れている人達の参考になればと思い、私の合格体験記を書いてみることにしました。

 私は、関西の私大法学部を早期卒業して、国立法科大学院(非東大京大一橋)に進学し、在学中受験で司法試験に合格しました。
一応法曹コースの1期生でもあり(ただ、口述入試だけでなく筆記入試もちゃんと受けました)、いわゆる「3+2」制度下での最初の合格者になります。また、伊藤塾や辰巳などの受験予備校は使用していません(後述のように、模試とかではお世話になりました)。

 ここまで読んでいただいてわかるように、司法試験受験生として決してエリートと言える経歴ではありませんが、そこらへんによくある「予備上位合格者の勉強法!」とかよりもリアルなのではないかと思いますので、是非最後まで読んで参考にしてみてください。気分が乗ればまた追加で書きます。

学習の流れ

おおまかに、「ロー入学前」「2L前期」「夏休み」「2L後期」「春休み」「3L前期(直前期)」にわけて述べます。

ロー入学前(~司法試験の1年4か月前)

 私は3回生で卒業したことから最後の最後まで学校の授業が詰まっていたため、学校の授業の復習+自主ゼミで学習をしていました。
 学校の授業内で演習問題を扱ったり、事例問題をレジュメに示してくれるものは、極力答案を作り、可能な限り先生に添削をお願いしていました。
 また、教授が見てくれるものや学生のみのものも含め、答案演習の自主ゼミを週に3,4回開催していました。学生のみの自主ゼミ(3~5人)では、演習書や予備試験等の過去問から一人一問担当を割当て、担当者(担当者は必ず起案、他の人は任意)がその問題を解説し、それをたたき台に議論をする、という形でした。
 正直、ロースクール入学後に新たに演習書をはじめることは難しく、また良い選択肢であるとも思いません(科目によりますが)。なぜなら、ロースクールに入った時点で司法試験まで後1年数か月、という過去問演習を意識しなければならない時期にあり、かつ授業の予復習をすることに精一杯になってしまいがちであるからです。よって、ロー入学前の段階で基礎的な演習書は終わらしておくことが望ましいです(私自身の後悔でもあります)。

ロースクール2L前期(司法試験の1年3か月~11か月前)

 ロースクール入学後は、とにかく授業の予復習に追われていたこと、自主ゼミを組むために「人を見定めねば!」と思っているうちに時間が経過してしまったことから、あまり集中した演習の機会は取れませんでした。
 ただ、授業の復習や、期末テスト対策をする中で、各科目のまとめノート(自分なりの論証集)を作成していました。
 この期間の使い方は考え方によると思います。授業をきちんと受ける人、授業は「単位取得できればよい」と割り切り自主的な勉強を中心とする人(予備試全振りも含む)などがいました。この点については、就活のことを考えると(予備試に受からない限り)一定の成績を取っておいた方が良いので、ある程度きちんと受けておくべきだと思います。教授の言っていることは意外と司法試験に出ます。
 また、土日は結構遊んだりゴロゴロしたりしていました。

ロースクール夏休み(~司法試験の10か月前)

 夏休みは、前期の授業で扱わなかった範囲の論証を作ったり、演習書や司法試験の過去問を解いたりしていました。ただ、私のよく一緒に勉強していた友達が就活のためほとんど自習室に来なかったため、自主ゼミを始めたのは夏休みの終盤でした(しかも2人で)。
 予定表を見返すと結構遊んでいて、しかも1週間丸々バイトに使っている週がありました。正直あまり勉強できなかったな、という感想です(特に8月)。
 この期間は、もっと有効活用すべきであったという強い後悔があります。司法試験まで1年を切っており、かつ授業の予復習に追われなくてすむ貴重な期間なので、自主ゼミ仲間を見つけて過去問を解き始めたい時期です。
 また、自主ゼミのメンバーについてですが、人数が増えるとスケジュール調整が難しくなり、かつ議論が盛り上がりすぎてしまうため、私は少ない方が好みでした(一方で、視野が狭くなったり、方向性を誤る危険性もあると思います)。自主ゼミをしている人が同級生にも多かったですが、しなくて優秀な人もいました。

ロースクール2L後期(司法試験10か月前~5か月前)

 後期は、夏休みの終盤に始めた自主ゼミを継続しつつ、授業の予復習もある程度こなしていました。この頃は、前期の経験から予習のサボり方がわかっていたため、上手く両立できていたと感じます。
 自主ゼミは、1週間に司法試験の過去問を3通くらいのペース(1回でまとめて3通分検討)を基本に継続しており、途中でメンバーを加えて3人にしました。新たにメンバーを加えたことで、今までとは違う考え方や指摘が出てきて、有意義な議論が増えたと感じる一方で、それぞれの答案を添削するために時間を長く使うようになったことから、負担感が増してしまいました。題材については、司法試験の過去問を近いものから順番に使用しており、苦手科目を多めに、得意科目を少なめに配分していました。自主ゼミメンバーの中には、時間を超えても書いている人もいましたが、私は「2時間でまとめる」ことを意識していたため、2時間でやめるようにしていました。
 また、11月(司法試験の約8か月前)から短答を毎日始めました。「司法試験までに3周」が現実的なラインだと考えたため、1日に15問を最低ラインとして、毎日時間を図って解く→丸付け、解説確認→写真に撮ってLINE グループにあげる、というルーティンをこなしていました。LINEなどで友達と共有して強制力を持たせるやり方は、サボりがちな自分にはとても良い方法だったと感じています。1周目は特にまとめノートとかは作っていませんでした。
 この頃は、なんとなく焦りも出てくる時期でありつつ、なんとなく「まだ先」というようなイメージがあったため、大体土日どっちかは遊んでいました。説得力はないですが、この時期にどれだけ演習を積めるか、勉強し続ける体力を養っていけるかが本番での気付きやラストスパートでの伸びにつながってくると思います。

ロースクール春休み(~司法試験4か月前)

 春休みは、自主ゼミでの過去問演習・毎日短答を継続しつつ、就活を始めました。四大事務所などを目指す人たちからすると遅い動き出しですが、司法試験後の本格的な就活にこの経験が活きたので、この時点から動いておいてよかったと思います。
 また、2Lの1年間で司法試験に必要な科目の授業がほとんど終わっていたため、授業のまとめノートを整理して、各科目の論証ノートをまとめはじめました。その際には、今更基本書等を隅々までチェックすることはできないため、「百選掲載判例は必ず知っておこう」という考えの下、百選を中心に論証・まとめノートを作成していきました。ただし、行政法は異なる判例集を使用し、刑法は判例集をメインでは使用せず、大塚先生の『応用刑法Ⅰ』の論点を中心に行いました。商法は得意だったのでこれまでのまとめノートを整理しただけでした。
 なお、エクスターンにも行っていたため、2週間は短答の勉強と論証集まとめしかできず、演習がほとんどできないという時期がありました。この点については、今年から、3Lの夏休みに参加することもできるようになり、「勉強時間を奪われたくない」と考えた人は春休みのエクスターンを回避し、夏休みに行っていました。私は、春休みに行きましたが、個人的に長期休みはダレてしまうこと、実務を経験して問題文をイメージしやすくなったことから、春休みに行って良かったと感じています。加えて、司法試験後の夏休みは就活が盛んな時期なので、夏休みのエクスターンを選んだ人達はそこでの2週間ロスがつらかった、との意見も聞きました。
 春休みは、就活とエクスターンがありつつ程々に遊びもしていましたが、司法試験まではこれが最後かな、というイメージでした。

ロースクール3L前期(司法試験4か月前~本番)

 ロースクールが司法試験を見据えてカリキュラムを組んでくれていたおかげで、授業の予復習にはかなり余裕がありました。よって、自主ゼミで過去問演習を重ねつつ、春休みから始めた論証・まとめノートの完成を目指していました。
4月末にあったTKC模試を受験し、短答が間に合っていないと感じたことから、1日にやる問題数を増やし、2周目以降で間違えた問題は短答用のまとめノートを作っておくなど、短答に割く時間を増やしました(1日1時間弱→3時間)。TKC模試は民法の論文が跳ねたおかげで合格推定圏内でした。
 司法試験の1か月前くらいまでは、淡々と演習と論証ノート作成を進めており、1か月を切ってからは自主ゼミでの演習をやめ、論証の暗記とまとめノートの見直し、不安な分野の復習等を行っていました。ただ、起案のブランクが怖かったので、週に1通くらいは書くようにしていました。
 また、直前期は短答について、司法試験や模試の過去問を時間を図って解いている人が多かった印象ですが、個人的には、一定のまとまった時間を使う以上は復習まですべきだが、時間がかかりすぎるし非効率的だ、と判断したため、苦手な分野の短答パーフェクトをやっていました(在学中受験生にとって切実な課題である、「短答落ち」という不安を解消するためにはアリだと思いますが)。
TKC模試や辰巳模試は、4日間(5日間)問題を解き続けることによる身体的・精神的疲労や絶望感を実感するためにとても良い経験だったと感じています。また、会場の椅子や机を経験できるというメリットもあります。ただ、お金をケチってホテルに泊まる練習をしなかった点は後悔しています。注意点としては、配点や採点がかなり適当であり、また模範答案に疑問がある部分も多々あるため、論文の点数で一喜一憂すべきでないと思います。

司法試験当日

 本番は、近くの東横インに泊まりました(5泊6日)。真夏なので、冷房をつけないと寝苦しいのですが、ベッドが冷房直下なのでつけると寒く、布団をきると暑い、というように緊張もあってか中々寝付けず、大通りに面しているため時々通るうるさいバイクの音も気になりだし、結局ベッドに8時間ほど横になって睡眠時間は3時間ほどでした。この点は、事前に予行演習をしてもよかったな、と後悔しました。
 会場内は電子機器の電源を入れてはいけないため、論証集を全て紙に印刷して持ち込みました(試験室の前のスペースに座り込んでipad等を眺めている人は大勢いました)。ご飯はおにぎり2個にして、2科目目と2科目目の間はブドウ糖のウィダーを飲みました。また、ラムネもつまみ食いしていました。
 1日目は冷房がとてもきつく、しかも全館冷房なので下げれないとのアナウンスがあるなど、1日中体が冷え切っていました。上着を持って行ってはいたものの、薄手のものだったので大分寒かったです。また、靴の締め付けが好きではないため、履き替えるスリッパを持って行ってスリッパで受験していました。
 2日目の民訴が全くわからなかったことから、落ち込みかけましたが、友達と少しいいご飯を食べに行ってメンタルを回復させました。また、2日連続で3科目の起案で腕も痛く、体力的にも大分疲れていたため、しっかり眠ることができました。
 中日は、コメダに行ったのですが、2時間で追い出されてしまい、東横インのロビーで勉強しました(ここも冷房きつい)。思ったより勉強に集中できませんでした。ただ、仲の良い友達と散歩をしたり雑談をしたりして、良い気分転換の機会になりました。
 3日目は冷房も落ち着き、しかも2科目だったことから大分体的には楽でした。
 4日目(最終日)は、「ここで失敗したらすべて終わる(足切り)」という気持ちでとても緊張しており、憲法が難しく気持ちは大分しんどかったのですが、終わると解放感でなんでもよくなります。

勉強スケジュールまとめ

短答:11月から(ローの試験前以外)ほぼ毎日、試験1週間前まで1日15問以上。全問2周+間違えた問題1周+苦手な分野1周。
論文:9月から自主ゼミで過去問演習、1週間で3通目安(ローの試験前は中止)。加藤ゼミナールの優先度ランクの上から順にやっていった。
行政法・刑訴は過去問から再度出るため、全年度検討。
民法は7年分くらいしかやっていない。他は10年分くらいやったはず。
演習書は苦手分野+刑法事例演習教材のみ。

使用した基本書等

 司法試験合格までに使用した主な基本書等を各科目ごとに示しておきます。予備校を使用しなかったため、論証作成の際など様々な基本書等を参考にしましたが、あくまで(基礎力養成を含めて)司法試験合格に役立った実感のあるものを示しています。また、各科目ごとの詳細な勉強方法は長くなりそうなので別記事にします。

憲法

基本書:市川正人『基本講義 憲法』(新世社)、芦部信喜『憲法』(岩波書店)
参考書:横大道聡『憲法判例の射程』(弘文堂)
判例集:判例百選Ⅰ、Ⅱ(有斐閣)、木下昌彦編『精読憲法判例 人権編』(弘文堂)

行政法

基本書:大橋洋一『行政法Ⅰ』『行政法Ⅱ』
判例集:学校で配布されたもの、中原茂樹『基本行政法 判例演習』(日本評論社)
演習書:曽和俊文ほか『事例研究 行政法』(日本評論社)

民法

基本書:佐久間毅『民法の基礎Ⅰ』(有斐閣)
    安永正昭『講義  物権・担保物権法』(有斐閣)
    潮見佳男『プラクティス民法 債権総論』(信山社)
    潮見佳男『基本講義 債権各論Ⅰ』
        『基本講義 債権各論Ⅱ』(新世社)
    前田陽一ほか『LEGAL QUEST 民法Ⅵ 』(有斐閣)
判例集:判例百選Ⅰ・Ⅱ(・Ⅲ)(有斐閣)
演習書:Law Practice 民法Ⅰ・Ⅱ(商事法務)

商法(会社法)

基本書:高橋美加ほか『会社法』(弘文堂)*紅白本
判例集:山下友信・神田秀樹『商法判例集』(有斐閣)
演習書:伊藤靖史『ケースで探索・会社法』(有斐閣)
   *法学教室連載を参照していましたが、書籍化されました

民事訴訟法

基本書:三木浩一ほか『LEGAL QUEST 民事訴訟法』(有斐閣)
判例集:判例百選(有斐閣)
演習書:Law Practice 民事訴訟法(商事法務)

刑法

基本書:大塚裕史ほか『基本刑法Ⅰ』『基本刑法Ⅱ』(日本評論社)
参考書:大塚裕史『応用刑法Ⅰ』(日本評論社)
判例集:山口厚ほか『判例刑法総論』『判例刑法各論』(有斐閣)
演習書:井田良ほか『刑法事例演習教材』

刑事訴訟法

基本書:宇藤崇ほか『LEGAL QUEST 刑事訴訟法』(有斐閣)
判例集:判例百選(有斐閣)

労働法(選択科目)

基本書:水町勇一郎『労働法』(有斐閣)
演習書:水町勇一郎ほか『事例演習労働法』(有斐閣)
判例集:判例百選(有斐閣)。ケースブック労働法(弘文堂)



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