積聚治療の”なぜ”(10)
積聚会副会長 加藤 稔
『積聚会通信』No.12 1999年5月号 掲載
2022年11月 筆者加筆修正
『東洋医学講座第十巻』の中で「五行的な施術順序は非常に重要なもの」とうたい、さらに「気の不調和を整える」という観点から、背部の兪穴治療では2行線への施術を1行線の施術より優先させると論じている。
なぜ優先させるのだろうか?
『第十巻』の「背部兪穴治療」の「腹部における五臓配当」の中では、「生体のあり方を、気の概念・陰陽感から観察するとき、異常をきたす現象は基本的に3つの側面から把握できる」とある。
第1には、体を厚みのあるものとして捉える側面
第2には、体を上下の関係からみる側面
第3には、体における左右の関係の側面
と述べ、「背部1行線、2行線などについては、背部の状態から病を観察する場合、1つの見方は脊柱からはじまり外側へと広がるとし、病は深くなるにしたがって臓から骨にいたるとする。
しかし、治療においては気を動かすのは第2行線からはじめるほうが容易であるとみて、そこから修正していく方法をとっている」とある。
第2行線から施術することは 「全体的な流れは、浅い気の乱れを調整することからはじめ、深い気の乱れの調整を計っている、いわば陽位から陰位へと治療の過程を進めるものである」と述べられている。
比喩的に考えてみるとき、数年経った高さ2mほどの砂山が、時に雨に濡れ、時に晴れて乾くをくり返している(病的状態)とすれば、この砂山を平らにする(治療過程)ためにはスコップでどこからやり始めれば効率が良いだろうか?
天気の悪い日(激痛)にするとすれば、この砂山の中心部分(一行線)はかなり湿り気を持っているだろう(表面から深い部分)。砂山の頂上からスコップで砂を取ればスコップに乗る分だけを取り除ける。反対に砂山のふもと(二行線)からスコップで砂を取ると、まわりの砂や上部の砂までがくずれ落ちてくる。
しかもくずれ落ちた砂は元のふもとの線を超えてくずれてくる(より広い範囲への効果大)。
第2行線を優先させる意味に通じるかなと思われる。