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積聚治療の”なぜ”(9)

積聚会副会長 加藤 稔

『積聚会通信』No.11 1999年3月号 掲載
2022年11月 筆者加筆修正

背部兪穴に関して不思議に思うことがある。
 
背中を走行する膀胱経である。この経絡で背中にある馴染みのある名前の経穴がでてくる。
 
膀胱経1行線の肺兪をはじめとする兪の名がつく経穴である。この兪穴は十二経絡それぞれの名前が経穴名と表現されている。また、下腿の部位には兪の名がつく経穴は、井・栄・兪・経・合にあり、左右の足に12穴ある。                          
 
本間祥白氏は、「”兪とは治療の”癒”に通じ、病を治癒する所の穴であり、兪穴名は各臓腑の部位に位置し、関係を持つものであり、腎の病は腎兪に治療的価値を有する」 と述べている。
 
「腎の病は腎兪に治療的価値」があるということは、腎兪の漢字からもある程度推察できよう。腎兪穴以外の経穴には治療的価値は望めないのだろうか?在るとすれば、どこに在るのか?
 
この疑問をより明解に解決してくれたのは積聚治療にある。
 
「膀胱経の背部では1行線の大杼穴から関元兪までの16穴と、2行線の附分穴から腰眼穴までの13穴を含めた29穴を背部兪穴と総称している(小林詔司著、東洋医学講座 第6巻)。
 
そして、2行線の経穴は1行線の兪穴と対応して五行的な特徴をもっている。 これら2行線の穴を応用することに意味がある(同、第十巻)と述べている。普通に考えると背部兪穴での治療であるならば1行線の兪穴のみで事足りると思う。十分に効果があるだろうとし、期待もする。 
 
ところが、積聚治療では人体を「多重層的な構成」としてみることを基本概念として、2行線に意味をもたせている。小林詔司著『東洋医学講座第十巻』では、「五行的な施術順序は非常に重要なもの」と述べ、さらに「気の不調和を整える」という観点から、背部の兪穴治療では2行線への施術を1行線の施術より優先させると論じている。
 
”なぜ” 優先させると価値はどれだけの効果があがるのだろうか?陰・陽との関係は?