2020 フューラー

今更フューラーのメモが出てきたので。

演劇としての構成が非常に面白い。
五人の役者たちが、それぞれアドルフ・ヒトラーをかわるがわる演じていくのだが、キャスト陣はタイプも年齢も違う五人。
特に役が切り替わるタイミングで説明はないが、今誰がどの役を演じているのか、迷うことがない。
それほど明確に、ひとりのアドルフ・ヒトラーを全員が作っている。
その形式への導入の仕方も、非常にドラマチックであり、過剰な説明をせずとも理解できるかたちなのが見事と言う他ない。
それぞれが演じる順で時間の経過が感じられるのも良い。
特に鈴木勝吾さんの化け方がぞくりとした。もはや演じ分けというよりも、化けたというように感じた。
安西慎太郎さんのいつもながら驚くほどの役への入り込み方、窪寺昭さんのキャラクターへのハマり方も素晴らしかった。
最後にヒトラーを演じる萩野崇さんは、ああいった役柄はわたし自身は初めて見たため、パーソナルイメージを超えて、器用でいて、繊細な演技をされる方だと感じた。ああいう役をされているのももっと観たいなと思う。

あのレストランの並ぶテーブルのひとつを舞台に仕上げる形も、没入感を高めてくれたと思う。カウンターと中央テーブルのすぐ近くだったので、迫力がすごかった。演説シーンは少し離れて見えたのも、リアルに感じられて良かった。
レストラン公演は座る場所でまったく別物に見えるところが良いなあと思う。普通の劇場でも位置で違って見えるけれど、レストランはもう上下までひっくり返るので…カウンター席とかからも観てみたい。

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