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【ネタバレあり】殺さない僕と死なない彼女・感想


絵づくりが綺麗な映画だと思った。白っぽい淡いトーンの映像は高校生の輝きと合っていた。

セリフ回しが独特な映画だと思った。好き嫌いが分かれそうだが、慣れてしまえばむしろ余白のある良いセリフだった。

ちなみにどうやら僕がこう感じたのは長回しを用いた監督の手腕と俳優陣の実力に寄るらしい。まんまとやられたぜ。

原作なので、日常的には喋らないセリフを話すんですよ。でも、実写映画にはある程度リアリティがないとダメだと思っているので、セリフ以外のところでリアリティを出さなくてはいけない。ワンカットで撮影すると、間合いや呼吸がリアルになって、言葉が立体的になるんです。ただ、賭けでもあるんですよね。おふたりは本当に自分の言葉としてセリフが出てくるので、違和感がなかったんだと思います。

https://tmblr.co/ZPog9YYDKDp-Ku00 より)

映画が1時間くらい経つと、僕はすっかりこの映画の雰囲気を気に入って地味子ときゃぴ子の関係に羨ましさを感じて、一途な撫子ちゃんの可愛さにウンウン唸っていた。

そして「久しぶりに小坂鹿野パートに戻ったな〜」なんて思っていたら物語が一転してしまった。

どうなんだろう。後になって振り返ると八千代くんが動画観てたりするのは露骨にソレなんだけど、僕はがっつりスルーしてしまった。

というか僕はこういう伏線をほぼ気づかない。明らかに本筋のストーリーが謎を解き明かす構成になってたら気づいたりもするが、こういうやつだと一要素として「まあそんなこともあるか」と流してしまう。

幸い今作の場合、この自分の鈍感さがプラスに働いたと思っている。あの殺人犯が出てきた時はめちゃくちゃビックリしたし、刺されてなお「助かるんじゃないか?」と思っていた。
(刺された位置が絶妙だったのもある。腰のあたりで、背骨の近く。歩いたりなんかはできなくなる可能性があるが、刃渡り的にもあの辺に秒で死ぬ臓器はない。)


結果的にピントの外でドバドバ出ていた血の量を見て、死の近さに気づいた。同時に、救急車や誰かに連絡して助かる可能性を捨てて、鹿野の写真を見ていた小坂の姿がたまらなく愛おしかった。

葬式のシーンで映画として全てが繋がりだした。このあたりからじんわり涙が滲んだが、夢で会えたところからはボロボロ泣いてしまった。僕はあれを本当に小坂に会えたと解釈しているので、二人が過ごした尊い時間にオロオロと泣いた。買ってあった猫のストラップも、買ってあった花火も、小坂の服を抱きしめて泣く鹿野も、愛おしくて悲しくて涙が止まらなかった。思い出しながらこれを書いているだけで泣きそうになる。


ラストシーンで撫子と、大学生になった鹿野が出会う。

かつて帰り道で大学進学を語る小坂に『置いてかないで』と泣いた未来に、小坂がいない未来に鹿野は立っていた。

撫子に『未来の話をしましょう』と語りかける鹿野は優しい笑顔だった。

思い出しただけでまた泣けてくるな。


人生ベスト映画に余裕のランクインです。

パッと思い出せる中にはこれを超えるものがないかもしれない。

めちゃくちゃ大事な映画になった。



最後に、これをnoteに書こうと思ったのはこれなら誰かにネタバレしてしまうことを気にせず書けるからです。小坂が死ぬってわかってて観たら感動半減しちゃうでしょ。

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