第17話 中国敵視は極めて無謀

副島隆彦の学問道場というサイトの情報を元に、2020年2月15日以後のことを推測で書いています。フィクションです。)

 中学生向けのベネッセのスタディサプリにて、人気の社会科講師が解説していた。
 「中国という国は、いつも他国から侵略されて、それを取り返す歴史なんです。例えると、中学校の狭い運動場です。野球部やサッカー部や陸上部や他の部活が奪い合いしてるでしょ?そんな感じで中国の土地を奪い合いしてきたんです。」

 面白い例えだね。確かにそうだ。もし、中国がどこの国からも侵略されなければ、日本と同じように、農耕民族として、穏やかな国民だったかもしれない。

 しかし、実際には中国4千年の歴史は、侵略されるか侵略するかを繰り返してきた歴史だ。そんな過酷な歴史の中国と、戦国時代を除けばほぼ太平の世の中であった日本とを、同じ条件で比べること自体ナンセンスだと俺は思う。

 中国にとっては、侵略されないことが一番大事なことなんだ。だから、中国の侵略を過剰に警戒する必要はない。

 ひょっとしたら、台湾や尖閣諸島までは、領土にしようと軍事行動を起こす可能性はある。尖閣諸島なんて、使い道のないちっぽけな無人島だ。EZが多少減るのも覚悟で、中国に献上(朝貢)して仲良くすればいいと俺は思うよ。
 また、後日説明するけど、北方領土も竹島も尖閣諸島も、日本の領土問題は、日本が近隣諸国と同盟しないために、米国がわざとしかけたものなんだから。

 歴史に絶対はないが、俺は、中国が、沖縄など、南西諸島まで奪いにくるはずはないと思っている。日本との全面戦争になるから、そこまでは中国は望んでいないだろう。

 20世紀ならともかく、帝国主義が通用しない21世紀に、海という巨大な堀を渡って、日本に侵略するのかねえ?もし、侵略したら、昔と違って市民はスマホをもっているから、戦場での虐殺場面は世界中に生中継される。世界の工場がそんなことをしたら、誰も中国製品を買わなくなるだろう。経済的なメリットが何もなく、デメリットばかりだ。それほど中国人は馬鹿じゃないよ。少なくとも日本の歴史修正主義者よりも遥かに賢い。

 もし、どうしても日本を許せないのなら、侵略するのではなく、核攻撃をするだろう。歴史修正主義者が嫌中を扇動しているが、どんなに怒らせても核攻撃はしないだろうとタカをくくっているのかもしれない。

 歴史に絶対はない。日本国内で嫌中を煽るのは、中国での嫌日を煽ることにもなる。核保有国を侮辱するなんて、キチガイの所業だと思うがなあ?
 もっとも、日本を核攻撃するとしたら、中国がやる必要はない。北朝鮮に代わりに核攻撃させるなんてこともありえるだろう。その方がスマートだし、現実味がある。

 そのときに、米国は核を使ってでも反撃をしてくれるか?おそらく、北朝鮮には核攻撃をするかもしれない。しかし、中国には核攻撃しない。
 アメリカは自国の国益を最優先する。アメリカ・ファーストだ。日本はアメリカではない。単なる属国だ。属国を守るために、アメリカが参戦することはない。アメリカの利益になるときにだけ参戦する。

 アメリカが参戦をせず日本を見捨てるときの大義名分はもう決まっている。
 大統領の演説は多分、こんな内容だろう。
 「日本は戦争の加害の歴史を忘れ、被害国である中国・韓国・北朝鮮を愚弄し続けてきた。それが、今回の日本に対する二度目の核攻撃を招いてしまった。同盟国アメリカとしても、日本を守るために中国と戦争することはできない。第三次世界大戦を招く恐れがあるからだ。北朝鮮についてはスマート核を使って核ミサイル基地は全て破壊した。その後の処理は中国に任せた。これ以上、戦争を拡大させてはいけない。世界平和を維持するために、あえて米国はこれ以上の軍事介入は行わず、戦争終結の仲介に努めるしかない。」といったところだ。

 しかし、そんな未来にはしたくない。

 中国が日本を侵略しない理由はもう一つある。日本に魅力がないからだ。

 基本的に、戦争は銀とか金とか #草木灰 とか、化石燃料とかを奪うために始まるんだよ?独仏戦争なんてその典型。
 皮肉だが、日本は食糧自給率40%以下、(占領するには、国民の60%を虐殺しないと飢えた先住民の不満がたまり、命がけの反乱必至。)なので、占領を続けるのは難しい。身銭を切って、せっせと食糧を輸入してあげないと占領をし続けられない。米国ならともかく、食糧輸入大国の中国にそんなゆとりはない。

 更に、エネルギー自給率については、1%にも満たない。

 日本を占領するメリットなんて何もない。なんで侵略されるというのだろう?
 対外脅威論を煽って、無知な国民の支持を集めるための愚論でしかない。


 そもそも、中国と戦争すると、石油を運ぶシーレーンを閉ざされて、兵糧攻めにされてギブアップするしかない。
 トランプ大統領は、「シーレーンは日本が守れ」と自衛隊の憲法明記と増強を命じて成功したが、逆である。中国と仲良くすることで、シーレーンを守ればよいだけなのだ。

 満州事変よりも前の1929年に、元海軍大佐でもある水野廣徳氏が著書に、「日本は戦争をする資格がない」と書いたが、まさにその通りだった。
 アメリカからの石油が禁輸され、ABCD包囲網でエネルギーが入ってこなくなって、苦し紛れにインドネシアの石油を奪ったが、制海権を失い、孤立した。木炭バスしか走らせることができなくなって、特攻機にも戦艦大和にも片道分の燃料しか積めなかったんだ。

 エネルギー自給率が1%未満の国なんて負けて当然なんだよ。それは現代も一緒だ。核兵器を除く通常兵器なら、世界で5本の指に入る自衛隊だが、それもエネルギーが確保できればという条件つきなんだ。

 未だに馬鹿なアメポチは、せっせとアメリカの兵器(欠陥だらけのF35戦闘機やオスプレイ)を買って、血税を軍事費に注いでいるけど、どの戦艦も戦闘機も石油を運ぶシーレーンを中国に閉ざされた時点で、単なる飾り物になるだけ。そんなこともわからないとは、アメポチは地政学を理解できない低〇なんだろうな。

 いずれにしても、21世紀の覇権国家は米国ではなく中国になる運命なのだから、戦争なんてせずに、仲良くすべきなんだよ。米国とは相手を怒らせないように徐々に徐々に距離をとってね。

 日本占領は、損か得かと言えば明らかに損。中国も国土が日本の約25倍もあって、領土は不足していない。しかも、チベットやウイグルなどの50もの少数民族を支配することに手一杯で、わざわざ、日本を占領してめんどくさいことになるなど自爆行為だ。

 戦争するより、朝貢貿易でいいじゃないか?実は経済的には得だし。核攻撃で滅ぼされるよりも全然ましだよ。日本は資源のない貿易立国なんだから。実質的には、日本の製造業は中国の下請けになっている。もう中国と仲良くするしかないんだよ。それが日本の21世紀の国家戦略だ。

 なぜ、中国についてこんなに詳しいかというと、俺の防衛大学校の卒業論文のテーマだからだ。
 「中国との戦争は日本の滅亡を招くだけ~エネルギー問題の視点から、一帯一路に参加すべき~」だったんだ。その論文を実行するために、俺は自衛隊に入ったんだ。

 その点、韓国の決断は正しかった。文政権は、対米隷従を止めて、中国との同盟を選んだ。一帯一路に加わった。今回のイラン戦争にも、韓国は軍隊を送らなかった。賢い選択だと思う。

 中国はただ、米国にはめられて無駄な戦争をさせらないように、赤い平和国家として、経済発展したいだけなんだ。そのための国家戦略が、一帯一路であり、アメリカの裏側で、中国とEUとロシアで手を結ぶ、米国に頼らない一大経済圏を作ることなんだ。

 これに対抗するのが、米国中心の反中国同盟であり、北南米とイギリスの経済圏なんだ。イギリスがEUを離脱したのも、このブロック経済圏に加わるためだったんだ。その直後にドイツ銀行が破綻して、EUは大混乱になった。その援助資金を払うのが嫌だったというのも、離脱した理由だった。

 EUは、中国の援助で何とか持ち直した。今やEUと中国は切っても切れない関係になっている。

 英国は、元世界覇権国家だからね。実は金融の世界では、ロンドン市場がニューヨーク市場よりも取り引き額が大きく、その理由は、旧植民地の島に、免税特区=タックスヘイブンを作ってユダヤ金融資本の世界支配をサポートしていたからなんだよ。ほとんど知られてないけどね。

 結局日本はどうなるか?俺の予想では、残念ながら中国と米国の経済的支配下に入る。地政学的にいっても、米国が日本を独占的に日本を属国にし続けることは難しい。

 仕組まれた日中戦争の後で、米中で話し合って、経済的に日本を共同統治するシナリオが描かれていると思う。米中両陣営の緩衝地帯にされるだろう。

 戦争が起こるのは偶然ではない。戦争をさせることで利益を得る者たちが、プランを練って、計画的に準備をして、仕向けられて戦争が始まるんだ。そんなことは、常識なんだよ。

麻生が答えた。
「そうだったのか?俺は昔から嫌韓だったし、今回、イラン戦争に参加しない韓国を敵視していた。しかし、坂本の話を聞くと、イラン戦争に参加する日本の方が愚かなのかもしれないな。そんなことは、全然知らなかった。もっと、いろいろと教えてくれ。」

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