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SHADOWTIMES 2012/12/06 Vol.4

《Days and Lights》Post.2
「sunshine」 勝又公仁彦

サンプル号でスザンヌ・ムーニー氏の池袋のサンシャイン60ビルから撮影された作品「Tokyo Summit A」をご紹介した。
そのときのテキストにもあるように「サンシャイン」というほとんど固有名詞化し、日頃気に留めずにいた名称について改めて考えてみると、自明ながら「太陽の光」を意味する英語であることがわかる。即ち最も明るいイメージを感じるべき単語である。

ところがサンシャイン60の建設場所が巣鴨プリズンの跡ということで、日本人にとっては複雑な感情を抱かざるを得ない場所となっている。そのことにより「サンシャイン」という言葉自体が言いようもない陰影を帯びているように感じられてしまう。
実際そのビルと周辺に行ってみると、歴史を知らない子供の頃でさえ、言い知れぬ冥さを感じ、なるべく早くここから立ち去りたい、という気持ちになったものである。

そのような政治的な去勢と国家の挫折という日本の落日を象徴するような場所に、「サンシャイン」という、日はまた輝くのだ(あるいは日はなお今も輝き続けているのだ)と言わんばかりの名前をつけようとした人々の執念(よく言えば不屈さ)には恐るべきものがある。
それは偉大な精神でもあるし、同時に怨念に近いものにも感じられる。実際には太陽に一番近いビル、という程度のことしか考えてなかったかもしれないが、たとえ偶然であっても無意識にそのことは反映されていたであろう。

“Unknown Fire”「#n2179」
「2005年に日光の竜頭の滝にて撮影。火に始まりながら、水という相対するエレメントを並立させつつ、どう対峙・融合・統一させていくかがこのシリーズでの一つの課題になっている。」

そのサンシャイン=sunshine を試しに自動翻訳にかけてみると、「日光」と出てくる。日光、といえば有名な地名であるけれども、その意味を考えたことはなかった。

初めて日光を訪れたのは小学校の修学旅行だった。天気が悪かったせいか、鬱蒼とした杉の巨木たちが日を遮るためか、華厳の滝での「哲学的自殺」を遂げた昔の学生の灰色のレリーフのためか、明るい印象は残らなかった。
しかしそれは池袋のサンシャインのような苦みを帯びた暗さや重さとはまた違うものだ。もっと豊かな厚みを隠しつつも重々しく、神聖な何かである。

それが何なのかわからないままに何度か日光を訪れている。先月は港さんとマリ・デュルエさんの展示のお手伝いで輪王寺にお邪魔したばかりだ。

「2012年9月23日 栃木県日光市 輪王寺紫雲閣 マセ駐日フランス大使に作品を説明する港さん。マセ大使の洞察力と記憶力は驚異的であった。会場の輪王寺は日光の世界遺産の一角をなす。紫雲閣のピクチャーウインドウに広がる庭園を借景に港さん+マリ・ドゥルエさんの作品が展示された。」

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