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SHADOWTIMES 2013/03/21 Vol.19

《Days and Lights》Post.9
「MORITAを巡る旅」 勝又公仁彦(邦彦)

卒業の季節である。今年は桜の開花が早いようで、地域によっては花咲く中の卒業となる方もいるだろう。
このメールマガジンの読者に学生の方はほとんどいないかもしれない。まだ卒業から日の浅い方は近い思い出として、今は親や祖父母となり、あるいはその世代の方々には昔日(せきじつ)を振り返りつつ読み進めて頂きたい。

“NMUS” 「2013年1月2日 NYC,USA_IMG_3594」

毎年のことだが、学生の大学生活が後半に差し掛かってくると就職や進路についての相談を受けることが増えてくる。私自身がまともな就職をしていないので、反面教師としての答えしか出来ないのが申し訳ないところだ。
高い学費を出してもらったのだからとか、親を安心させるため、あるいは親が就職就職とうるさいから、といった理由で就職を考える学生が少なからずいる。
その理由はもっともだし、私も同じような理由で大学卒業後にとりあえず働きだしたが、出来れば就職などせず美大で学びたいと思っていた。それが出来なかったことが今でも心残りだ。
そのため学生には就職する以外にやりたいことがあり、それが許される環境であれば、そちらに進むよう勧めている。そして逆に就職せざるをえない学生には自分が拒否し続けた公的機関や大企業及びその関連企業への就職を勧めている。要は私のようにならないようにとの心からのアドバイスだ。

“NMUS” 「2013年1月2日 NYC,USA_IMG_3599」
入場を待つ長蛇の列。メンバーシップに入会していれば別の入り口から優先的に入れる。近現代美術でこの混雑は羨ましいという日本の美術館関係者のため息が聞こえそうだ。

さて、話は一転して年末年始の北米話の続き。年明けにナイアガラからニューヨークに戻った-と書くと簡単だが、実際には飛行機が飛ばなかったり、同行者のロストバゲッジなどがあったりトラブル続きだった。ガイド役の私がろくに出来ない英語で交渉にあたるはめになり到着前からすでに疲労気味であった。
一日遅れで着いたニューヨークは以前と比べて静かというか、おとなしいというか、安全な印象が高まっていた。危険なエリアに足を踏み入れていないせいもあるのだろう。駐在中の親族に聞いても確かに数年前と比べても安全になっているとのことだった。
ホテルに着いてすぐに近くのMOMAに向かった。ちょうど「TOKYO1955-70:A New Avant-Garde展」が行われている。前回ニューヨークに来たのは谷口吉生氏の設計による2004年のMOMAのリニューアルのオープニング取材の為だったのでそれ以来である。

“NMUS” 「2013年1月2日 NYC,USA_IMG_3657」
ニューヨーク近代美術館「TOKYO1955-70:A New Avant-Garde展」会場入り口の様子。

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