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SHADOWTIMES 2013/02/1 Vol.15

《Days and Lights》Post.7
「落ちる水 昇る火」勝又公仁彦

年末年始に北米に行ってきた。最初の目的地は冬のナイアガラだ。
ナイアガラといえば、滝である。滝というと人里離れた深山幽谷を思い描くのが道理だろう。通う人もない山道を分け入って行くと、水音が遠く聞こえてくる。さらにしばらく歩くと水音はだんだん高くなる。空気は湿気を増してひんやりとしてくる。崖を下ったり、森に分け入ったりして、次第に水音は轟々とし、やっとその姿が拝めるもの、と思っているかもしれない。

Natura Morta 「2012年12月31日 Niagara, Canada_ IMG_3133」

しかし、ことナイアガラに関しては完全なる開けた観光地である。観光地なので、行かれた方も多いとは思うが、一応説明すると、周りにはホテルやカジノが建ち並び、ショッピングモールは全世界からの観光客で溢れている。
カナダとアメリカの国境に位置しているのだが、特にビューポイントの多いカナダ側の開発のされ方は顕著だ。流石に砂漠の真ん中に人工の歓楽街を作り上げた大陸。情緒も何もなくてむしろ清々しいくらいである。 

私の泊まったカナダ側のホテルの窓からも滝のほぼ全域が見えていた。先住民の崇めた聖なる瀑布の印象はなく、大口を開けた滝つぼは何物をも飲み尽くして行く消費の悪魔のような印象だ。
この滝つぼは自らの水圧によって毎年3cmずつ後退している。これは水源であるオンタリオ湖からの落水量の様々な制限や調節によるもので、自然状態だった以前は遥かに早いスピードで滝つぼが後退していた。現在でも平均毎分110,000m³という想像を絶する量の水が流れ込んでいる。

Natura Morta 「2012年12月30日 Niagara, Canada_ IMG_3103」ナイアガラの滝のライトアップ。写真で見ると照明がしっかり当たっているようだが、実際には部分により明暗差が激しい。

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