本多くんにフラれた話

突然だが、本多くんにフラれた。絶対にうまくいくと信じていた。それまで何回もデートを繰り返し、高校卒業後も2人一緒にいようとまで言われていた。将来は約束されているはずだった…。

本多くんは、「ときめきメモリアル Girl's Side 4th Heart」という恋愛ゲームの攻略対象キャラ。このゲームは主人公の女の子となり、高校生活3年間、勉強に運動、おしゃれの研究などをしながら対象キャラの男の子たちとデートを重ね、卒業式で好きな男の子と結ばれるハッピーエンドを目指すゲームだ。攻略対象によって、どんな服装が好きだとか(デートのときに男の子の好みな服装をすると好感度が上がりやすくなる)勉強パラメータが高くないといけないだとかが決まっている。らしい。(らしいというのは初見で攻略サイトなど一切見ずにプレイしたからである。)

私は今まで恋愛ゲームをしたことが全くなかったが、友人のプレイ画面を見て面白そうだったので初めてチャレンジした。

当初1〜2年目中盤までは、メインの幼馴染ポジションである風間くんという攻略キャラと頑張ってデートを重ねていた。しかし、この風間くんなかなかの曲者キャラというか天邪鬼キャラというか上から目線というか(ファンの方、ごめんなさい)主人公のこと好きなくせに、好きなの態度に出てるのに素直になれずいつも憎まれ口を叩いて主人公のことを小馬鹿にしてくるのだ。しかも、デートを多く重ねても同じバイトをしてもなかなか親密度があと一歩のところで上がりきらない。上から目線でもメインだし攻略しやすいだろうしと思いずっと我慢をしていた。が、途中で魔がさしたのだ。

他キャラと一緒に攻略して、最後に親愛度が高いキャラ2人になったらどうなるのだろうかと気になった。

そして私は図書室で出会った本多くんに白羽の矢を当てた。クイズ王に選ばれるほどの物知り。勉強家で好奇心旺盛。『知識を蓄え、伝えることが大好きな教え上手』。笑顔が幼くキュート。将来の夢は小学校の先生。そして何よりたくさんデートを頑張ったメイン攻略対象の風間くんより親密度が上がるのが早かった。

こんなの好きにならないわけなくないか????

3年目の卒業が迫るなか、私は本多くんとデートを重ねた。彼は展示系が好きなので、彼に合わせて水族館や植物園、博物館、プラネタリウムなどで逢瀬を重ねた。(最終的にフラれたので逢瀬とは合わないかもしれないが、この時、たしかに私たちは恋愛関係にあったと思う)そのうちデート後に家まで送ってくれるようになったり、寄り道をして愛を深めたり。

そして3年目の主人公の誕生日、本多くんはスカーフをくれた。私は嬉しくて毎日そのスカーフをつけた。デートでつけていくと本多くんはとても喜んでくれた。

暗雲が垂れ込めたのは12月初旬に行われる最後の期末テスト。私は真面目にステータスを伸ばしていなかったので試験の順位は真ん中。良くもなく、悪くもなくという位置である。しかし、試験後、本多くんがやってきて一言。「君の成績が気になるようになっちゃった」と。え、気になるって何?やっぱり自分頭いいから彼女にするなら頭良くなってもらわないとって?IQの差があると会話がつまらないって?(そこまでは言っていない)私は焦った。これはハッピーエンド迎えられないかもしれない。勉強ステータスが足りないと卒業式で結ばれないのかもしれない。私は脇に変な汗をかきながら平日も休日も可能な限りステータスを上げることに尽力した。

12月23日。高校なのに学校主催のクリスマスパーティがあるのだが、頑張ってゲーム内でバイトして貯めたお金で買ったドレスと、またまた本多くんがプレゼントしてくれてスカーフをつけて気合を入れていった。本多くんは綺麗だ姫様だと褒めちぎってくれたと思う。

クリスマス会は終わり、本多くんに連れられとある場所へ。そこは本多くんの思い出の地だった。暗いなか光り輝く本多くんの思い出の品。光に照らされる可愛い本多くんの顔。「僕の全てを君に話した。君のことを全て知りたい」なんてロマンティックなクリスマスなのだろう。私はもっと君のこと知りたい。君といたいよ。

期末試験のときにはどうなることかと思ったけど、これはもう本多くんハッピーエンド確定したなと、ニヤつきながら調子に乗っていた。でも調子に乗りつつ、念には念を入れ(本多くんとのデートで息抜きしつつ)2月末までステータス上げを頑張った。

待ちに待った卒業式。
ついに迎える本多くんとのハッピーエンド。
ハッピーエンドのときには、学校近くの教会の扉が開かれ1番愛を育んだ人が現れるらしい。

流れるエンディング。
しかし、教会の扉は開かれなかった。
卒業式は無事に終了。
幼馴染の風間くんが、反省会をしようと憐れんだ目で私を回収していった。

どうして?
頭が真っ白になった。何も考えられない。

あんなにデートもたくさんして本多くんの大切な思い出も共有してもらって将来について語り合ったのに。
あの言葉の数々は嘘だったの?

あとから調べたところ、勉強ステータスが一定以上ではないと本多くんからの告白はないらしい。

絶望した。
過ごした時間ではなく、結局ステータスか。能力か。
勉強の出来ない私は嫌いか。
じゃあなんであんなに私に愛を囁いてくれたのだろう。私の一挙手一投足に顔を綻ばせてくれたのだろう。
将来について多く語ってくれたのだろう。
来年も一緒にいたいって言われた気だってする。
最後の最後で、やっぱりこいつ馬鹿だから自分には合わないなって思っちゃったの?
じゃあなんでこの3年間、勉強できないやつは嫌って言ってくれなかったの?遠回しにしかいってくれなかったの?遠回しに言ってくれたのだって試験結果出たときだけじゃん。そんな素振り見せなかったじゃん。言ってよ。言ってくれたら頑張ったよ。勉強できないやつは嫌って言われても本多くんのこと嫌いにならなかったよ。一緒に勉強頑張ろうと言ってくれてもよかったじゃない。ずるいよ。ずるすぎるよ。本多くん……

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