社畜道の登竜門である就活

言い忘れたが、我は大学では工学系を専攻していた。

普通科理系から工学系に進んでみたのだが、あまりにガテン系の匂いが

していた。グリスと切削油の匂い。それが、ザ・工業だ。

クルマ好きや機械好きが集まる言わばオタク界隈である。

スズキとトヨタと日産の違いが分からぬほど車に興味がなかった私にとっては

なぜ、この大学に進んだのか。なぜ、その道に進んだのか

今もって理解できていないのである。

工業系の大学の就活は、文系と違うようだ。

就職出来る出来ないで特に悩んだ記憶は無い。

覚えているのは初っ端落とされた会社で、面接時に「今話題の日産の社長が誰か知っているかな?」と小憎たらしい笑顔マンマンで聞かれ

すいません。名前が出てこないんですがミスタービーンみたいな顔で、嘘つきみたいな人ですよね。と言い

即不採用となった。(この時の面接官の引きつった顔は、なかなかに私の脇腹を

未だにくすぐり続けている)

......合っていたではないか。と当時の面接官を小一時間問い詰めたい。

第ニに受けた企業は、見たところ今すぐにでも倒産しそうな会社であったが

四季報の四の字も知らなかった私は、翌月倒産予定の会社に面接に行ってしまった。

あまりに面接官の皆さんが最後の就活生との面接だと

嬉しそうに面接をしてくれたのを今でも覚えている。

翌週その会社は倒産となった。特段目立った感想はない。

第三に受けた会社は、両親からの勧めで地元のガラケーの組立工場であった。

売上急上昇、猫成長まっしぐらと言われていた会社であった。

面接で「今後君が考える社会はどう見えるか。自由に発言して欲しい」と聞かれたので「数年で携帯は廃れて、新たな通信機器が出てくるでしょうね。今までのことばかりやってる会社は皆廃れて、新たで突飛なアイデアで世界がグルグル回りそうですね。具体的にはそうですね。腕時計で会話できる日が来そうですね。」

と言ったところ、本業のプライドをズタズタにしたのか不採用となった。

.......合っていたではないか。面接官ども俺の前に正座してバカにした事を

どう言い繕うのか、ハナクソをほじりながら聞こうではないか。

第四の会社は最も何も知らない現在の職場であった。

ホームページをみても何を作っているのかよく分からない不思議な会社であった。

面接官であった人事は、「ここは自由な会社で好きな時に機械をいじっていいんだ。私もこの間この大型加工機を操作したよ。」と話され

あの嘘つき八兵衛の話術に流されて魅力を感じてしまった。

ズルズルと第2面接に進み、

もはや無駄に成績をロンダリングしていた私の成績書を過信し

部長指示で採用をしろと指示が出ていたのである。

あの嘘つき八兵衛が言った「いつでも機械を操作できる。操作した」という

発言は入社後、加工部より「あいつが機械なんぞいじれる訳ないだろ。一度も触ったこともない」と言われ。アダ名を嘘つき八兵衛と命名し、今もそう呼んでいる。

私がこれから地獄を経験し、社畜のプロとして大成する仕事。

社畜道と鬱を量産する機械設計という職業であった。

それから15年の間に嘘のようで本当の話が繰り広げられるのであった。