三台お題ねた

「昼の動物園」で登場人物が「寝る」、「太陽」という単語を使ったお話を考えて下さい。

とのことで、10分で。

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 待ち合わせ場所は動物園。
 そう、LINEに来たのは昨日のことで、それにスタンプで「ok」と答えたつもりだった。二人の間で動物園といえば何度か行ったここのコト。だとは思うのだけど、園内うろうろしていてそろそろ3時間。連絡は相変わらず無くて、昨日のLINEのやりとりの後、こっちからのスタンプの既読以降はずーっと、未読のままだった。
 何度目かのこっちの言葉やスタンプを送信したあと、スマホを閉じて上を見る。
 空だよなぁ。
 一昨日までの台風はどこかに行ったようなからっとした青空の中、周りは楽しそうな声が響く。そんな中、一人空を見上げてスマホを握りしめていた。
 帰ろうかな。
 そんなことをぼんやりと考えていると、人が多い中たまたま目の前のベンチが空いたのを発見し、そこまで移動した。
 とりあえずベンチに座り、ぐったりとしながらもまた上を見上げた。どうやら自分自身知らず知らずにどうしようもない時には上を見上げる癖がある。その癖を指摘したのもあいつだった。
 『優矢って、言葉につまるとすぐアゴを見せるね』
 アゴを見せてるんじゃないよ。上見てるだけだよ。
 『へえ、じゃあ上見てるんだ。まあ固まるよりは全然いいか』
 そうか?
 『うん、だって固まっちゃうと、溶かさない行けないじゃない? なんか大変そうだなーって思っちゃうんで辛いんだよね。上見てるだけなら、アゴ持って『えい』ってやればこっちむいてくれるじゃない? そっちのほうが全然いいよ』
 ふうん。
 と、昔のことを思い出しながら上をみていると、ふいにスマホが鳴った。
 『ごめん、今から行く。寝てた。待ってて』
 うん
 『晩ご飯奢るからさ。待っててよ』
 うん
 何度かうなずくだけの電話は一方的にあいつが喋って、こっちはうなづいただけで、それで……切れた。
 あそこから、ここまでだと……1時間、はかかるか。
 千葉の奥の方から電車に揺られてここまでは大体50分ちょっと。家から駅までと、ここの最寄り駅までの歩きの時間足すとそんな計算になる。
 その間どうしてようかな。
 そんなことを考えていたら、太陽の光にあたって穏やかな陽気につられうとうととしてしまったらしい。
 気がつくと、目の前にあいつが居た。
「寝てたね」
「ああ」
「起きた?」
「ああ、……いま、何時?」
「そろそろ夕方。ちょっと夕飯には早いけど、やってる店はそろそろあるかな。どうする?」
「そうだな……。俺はなんかだらっと見てたからもう動物園はいいや。飯、いこうか」
「じゃ、そうしようか」
 そういうと、あいつは俺の手をぎゅっと握って、すっと力を入れて起こす。
 握った手はそのままに、あいつがすたすたと歩き出すあとについていく。
 来てくれた嬉しさで文句とか、なんかどうでもよくなっていた。

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