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子どもの「何気ない一言」を大切にしたい

 私は小学校教師を目指す一人の女子大学生。3年目ともなるとだいぶ余裕も出てきて、今年から毎週1日は小学校へボランティアに行っている。春から足を運んでいたわけだが、もう師走にも入り、その小学校にもだいぶ馴染めてきている…気がしている。

 この間のボランティアでは1年生に一日サポートに入った。一年生といっても、もうわずか数か月で2年生になるわけだから、担任の先生は基本的なことを教えようとてんてこ舞い。担任の先生は「教科」も「生活態度」もとにかく2年生としてしっかりできるようにさせようとあくせくしているようだった。こう考えるのも、焦るのも当たり前と言えば当たり前。しかし、そんな姿をボランティアとして一歩引いた立場から見ているとなんだか「もったいないなぁ」と思ってしまうことも多々あった。あくまでボランティアの目線として、私が感じたことを少し下に綴ってみようと思う。



 1年生が育てる草花で有名なのはやはり、朝顔??それはそうなのだが、もう一つ、この時期に埋めておき、春の芽生えを楽しみに待つ植物がある。そう、チューリップ🌷 チューリップとういうのは朝顔と大きく異なる点がある。それは、種からではなく球根から育てるということだ。

子どもたちはこんな違いに興味津々!「なんでそんな形しているの?」「玉ねぎみたい!」「なんで種じゃないの?」こんな何気ない疑問が飛び交っている。「なんて良い疑問だろう!ここから教えたらどんなに楽しいのだろう!」と胸が高鳴った。

 しかし、先生から出たのは「今から埋め方を教えます。ちゃんと聞いていてくださいね。」という一言。

子どもたちの何気ない疑問というのは置き去りにされてしまった。なぜこの言葉が出るかというとやはり、授業時間内にチューリップの球根を埋めるという過程を終了していなければならないことからなのだろうと思う。考えてみれば45分間で1年生にこれを求めるのは少し厳しい気もするが、学校の決まりだから仕方ないのだろうか。

 もし、「チューリップって種じゃないね。なんでなんだろう。」「どこから草が出てくるのかな?」なんてことから始めたら子どもたちの関心はぐっとこちらに向く(ノカナ?)。後々学ぶ、双子葉類や単子葉類なんてものまで言葉ではなく経験として彼らのモノになるかもしれない。理科が無い1年生だからこそ、教科になっていない自由度が高い今だからこそ、こういった深堀をしてあげたいなぁと思った。これが1つ目。

 

 2つ目は帰りの会をして、教室を出る時。ある男の子が一人、帰る支度が遅くあわただしく準備をしている。急がば回れ。急いでいる時ほど周りに、消しゴムやら鉛筆やらが散らかっていた。「もういいや!」とその男の子は周りに散らかった鉛筆を筆箱にしまうのではなく、机の上に並べ始めた。なんだかその姿が面白くて眺めていたのだが、本当に面白いのはこの後の何気ない一言。

「先生。鉛筆、これ影が長いよ」

 1年生が帰宅するのは14時半ごろ。ちょうど教室の窓からお日様が当たっていて、鉛筆の影がグーンと伸びていたのだ。その不思議さに気付いた男の子。なんて面白い感性をしているのだろうとまたまた、胸が高鳴った。

私  「なんでだと思う?」

男の子「わからない。なんでだろう。」

私  「じゃあ、影ってどんな時にできる?」

男の子「んー。朝とか、昼とか。」

私  「そうだよね!じゃあ、朝とか昼にあって、夜にはないものは何でしょう。」

男の子「ひ、かり?お日様??お日様があるから影があるのか!」

私  「それだ!じゃあ、朝と夕方ってどっちのほうが自分の影が背高のっぽになる?」

男の子「夕方。だって、いつも遊んで帰るとき、すっごいでっかいのあるもん。」

私  「じゃあ、鉛筆は?」

 こんな具合で話していたわけだが、時間にしてしまえばわずか5分足らずのこと。そんなとき、担任の先生から「○○くん、早く帰りなさい!」と一言。その男の子にとって、あの5分間がひとつの考える引っかかりになっていたらいいなぁと思う。


 そう、1日にもったいないなぁと感じる2つの出来事があった。そして面白いのが、この2つの出来事に現れた「何気ない一言」は担任の先生の耳にはどうも届いてないようならしかったこと。私も以前実習で授業者として前に立ったことがあるが、子ども「何気ない一言」というのは前に出たとたん急に聴き取りずらくなる。そもそも、気付かないのだ。私はまだまだなので、余裕が無いせいもあるだろうが、前に出ると気付きにくいというのはあるのだろう。

 近年はアクティブラーニングだとか、主体的という言葉をよく耳にするが、この子どもの「何気ない一言」に気付いてあげることができたら、一言でも多く拾ってあげることができたのなら、これらに近づくのではないかと思う。教員になって、担任の先生になったら難しいのだろうなぁと思いつつ、今の責任もない、自由なこのボランティアというメリットを最大限に生かして、今のうちに「何気ない一言」集めをしておこう!と思った一日だった。


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