見出し画像

青年のラッパ

青年は今日もラッパを吹いている。
小高い丘の上から、桜の花吹雪と一緒に、
春の風に載せるように、希望を載せて吹いている。

「ここだよ。妹たちよ」

青年は5人兄弟の長男だ。
4人の幼い妹たちを置いて、一人で安全な場所を探すために歩いてきた。

そしてついに見つけたのだ。ここなら安全だと。

全員で一緒に移動してきては危ない。
まちでは疫病が流行り、身内どうしてあっても2人以上で歩いていると
警察の人に話しかけられて、最悪ぶたれる。

子供も老人にも容赦がない。
でもしょうがないのだ。いま、みんなただ必死なのだ。

そんななか、妹たちには告げていた。
お前たちにしかわからない音色で俺はラッパを吹く。

その音色が聞こえたら、音色の方向に向かって歩いてくるんだ。

道順も音色の中にヒントがある。
大丈夫、いつも一緒に遊んでいたお前たちならわかるから。

お兄ちゃんはここだよ。ここは安全だよ。

さあ妹たちよ、ここまでおいで。


#身体を使って書くクリエイティブ・ライティング講座
#身の回りに溢れる小説リレー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?