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ニューノーマルと服 - 衣類廃棄物のパラダイムシフト?

コロナで着る服も変わったと思います。フルテレワーク、または週に半分程度出勤、1日のみ出勤など、家で仕事する時間が増えたと思います。テレワークの時、皆さんはどんな服を着ていますか?きっちりスーツ、と言う人は少ないと思います。Zoom会議などのオンラインで仕事ですが、季節的にもクールビズなので、皆さんラフな格好でのお仕事だと思います。上はポロシャツ、下は短パン、とかではないでしょうか?ユニクロも”おうち服で暮らしを快適に”でラフなテレワークの服を紹介していたり、ウェブ上にはテレワークの服コーデと言う紹介ページも多くあります。皆さんも、このあらたな服のコーディネーションや習慣を、日々、新たに試されているともいます。この先、秋や冬はどのような在宅勤務の服となりそうですか?たぶん、上はジャケットのビジカジ、下はジャージとかかもしれませんね。オンライン上の見た目は完璧ですが、そのまま外出はしにくいスタイルが、今後のニューノーマルでしょう。

という事は、私たちの服に対する習慣も変わってきています。今までは、”いつも通りに”お店に行ってイメージしていた服を見て・触って・試着して選ぶ、店員さんとの会話を楽しみながら服を選ぶ、ネットで見た服を店舗で見て色や質感、サイズ感を最終的に購入していましたね。そして、服を買う大前提は、出勤するため、街中を出歩くため、友達と直接会うためなどでしたが、今はどうでしょうか?テレワークでZoom映えする服、家を楽しむ服、在宅勤務でも朝から晩まで着替えないでいい服、ファッション性も重要ですが、機能性や快適性の優先順位が高くなった人が多くなったと思います。それと、特に女性は、少なくとも週5日出勤時間だったころは、少なくともその1週間で毎日違う服、その2週間で毎日違うコーディネーションが必要なので、多くの服をクローゼットに入れる必要がありました。コロナ禍では?フルテレワークであれば、その習慣も変わったと思います。意外に服の種類は要らないかも、と思うようになった女性は多くなったと思います。では、男性は?ファッション大好き以外の男性は、今まで以上に服が要らなくなったと思います。ますますビジカジ化、今の季節であればクールビズ化が進むでしょう。

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ちなみに、僕の職場の国連では、ドレスコードは基本的にありません。国籍、性別、年齢、宗教などは全てニュートラルな職場なので、それぞれの人生観で着る服が決まります。通常の勤務では、かなりラフなスタイルですが、国際会議になると、例えばブータン人の女性の上司はブータンの民族衣装を、カメルーンとイギリスとハーフの女性の同僚はカメルーンの民族衣装を、と女性は自分の国民性を意識した服装で出席されていることが多いです。でも男性は、ほぼほぼスーツです、これは男性に共通する集合的無意識かもしれませんね。僕はここでもビジカジスタイルです。

3月以降、市場は既に激変しています。日本でコロナウイルス感染者が急激に増えて第1波とされ緊急事態宣言が出された3月においては、多くの皆さんが店舗での買い物買い控えとなりました。数値が顕著に表しているのが、アパレル業界の土俵にが起こり、店舗系の売り上げは瀕死状態、通販は増加傾向、と消費者の生活パターンがもろに影響しています。それから2か月がたち季節も変わってきた衣替えの時期を迎えた5月後半から、要らない服を整理し始めた人が多くなりました。

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となると、どうなるか?衣類廃棄物が増加傾向にあります。皆さん、それまで、衣類廃棄物について気にしたことはありますか?多くの方は、要らなくなったその時に、これは燃えるゴミでいいのか他のゴミなのか、と考えるぐらいだと思います。多くの市町村では衣類廃棄物も分別することになっていますが、実際は結構難しいと思います。例えば、ぼろぼろになったしまった服や下着など、衣類廃棄物として分別してごみステーションに捨てたとしても、ちょっと恥ずかしいですよね、誰かに見られると。僕の住んでいる大阪市では、こう説明しています:下着類も「古紙・衣類収集」の対象です。ただし、見えないように工夫して、「普通ごみ」にお出しいただいても構いません。

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ここ数か月、皆さんの家庭でも衣類廃棄物がたまってきてないでしょうか?僕の住んでいる大阪では、今年5月28日付で「新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴うごみの排出についてのお願い」がアナウンスされています。この記事を書いている2020年8月でもこの対応が取られたままです。大阪市のアナウンスに書かれているこの文言に注目です。「各国で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための移動制限措置がとられるなどの影響により、国内外で多くの中古衣類が滞留し、国内における一時保管が限界に達する可能性があったことから」。このビデオにも「中古衣類の大半は国外で使用。でもコロナの影響を受けて、コロナの影響を受け大量の中古衣類が滞留している。当面は各家庭で保管を」と呼びかけられています。

同じ措置は多くの市町村(例:奈良市前橋市佐久市笛吹市等)で実施されており、一部は収集が再開されたところもあります(江東区上田市等)。我が家でも子供の成長で着れなくなった服、衣替え時に汚れが気になって捨てようと思う服が、行き場を失い家の片隅に片付けてあります。この現実を受けて、多くの方が「衣類廃棄物や中古衣類は国内でリサイクルしてないのか」と認識されたと思います。日本は廃棄物管理・リサイクル先進国とは言われていますが、実は、海外に多くの”中古品”と呼ばれるものが輸出されています。中古衣類、中古自動車、中古タイヤ、中古電気電子機器、など。

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ここ数年”リサイクル目的”のペットボトルやプラスチック類の海外への輸出が問題視されていますが、これらも”資源”としての輸出なので日本の法律上の”廃棄物”ではありません。”資源”なのか”廃棄物”なのかと言うのは、遡ること、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約が1992年に発効するかなり前から、ある国で要らなくなったものが別の国で使われる国際的な貿易が行われていました。でも、ここに経済・資源格差があるのは間違いありません。ここも、SDGsを活用して解決していく課題が多数あります。この件は別の時に深く考えたいと思います。

さて、衣類廃棄物に関して少し深く見てみましょう。まずは、一般廃棄物における衣類廃棄物ですが、日本の廃棄物統計上の繊維類を見ればわかります。この環境省の報道発表資料によると一般ごみ排出総量は2018年度は4,272,000トン、このデータブックによると繊維類廃棄物は一般ごみの約2.9%占めるので、4,272,000 トンx 2.9% = 123,888トンとなります。もう一つ数値を見ないといけません。それは、一般廃棄物の統計には載らない数値もあります。それが資源回収・集団回収による中古衣類の回収です。それらを含めると年間約200,000トンぐらいの衣類が家庭から排出されています。ざっくり計算で、1年間で一人当たり約1.5キロの衣類廃棄物を出している計算となります。どうでしょうか、皆さんの服を捨てるはこれくらいでしょうか?

では、その衣類廃棄物はどこに行くでしょうか?環境省の報告書に掲載されている中古衣類(衣類廃棄物)のフローはこのようなものです。

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ここでの注目が”海外輸出”。同じ環境省の報告書を見ると、少々古いですが2013年は約21.6万トンの中古衣類が海外へ輸出されていると記載されています。さっきの排出量データとは時系列が違うので単純比較ができませんが、中古衣類の多くは海外へ輸出されていることが事実です。この業界にいる僕の肌感覚としては、”ほぼほぼ全て”と言えます。ここでのポイントは、衣類廃棄物のリサイクルには大きく分けて2種類。①中古衣類として海外で販売、②カスケードリサイクル(品質上、服から服を作るのが難しい)として販売、があります。日本から輸出されている中古品の共通点としては、「日本の中古品は品質が良い」ことが挙げられます。中古衣類に関してはその時々の流行やニーズにばらつきがありますが、日本の中古衣類も比較的高品質として輸出されています。その一部は中古衣類として販売。販売できないものについては、輸出先でカスケードリサイクルされています。

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でも、ここの流れが今止まってしまいました。なぜか?①新型コロナウイルスによるモノの輸出入の流れが鈍くなってきた、②プラスチック問題を発端として先進国で”廃棄”された”中古品”や”リサイクル資源”の途上国への輸出に関する世論が厳しくなった、③そもそも自国で排出された廃棄物は自国で処理・リサイクル・処分するべき、とこの3つが考えられます。皆さん、いつになったら衣類廃棄物を出すことができるのか、気が気でないと思います。既に一般ごみとして処分された方も多いと思います。では、この3つのポイントを議論していきましょう。

先ずは①。これは明確だと思います。日本もそうですが、ほぼ世界で移動制限措置が取られています。3月はニューヨークやパリなど多くの主要都市でのロックダウン、日本でも緊急事態宣言発令などで、人の動きが止まりました。有事になると、必要最低限のモノである生活必需品は確実に動かす物流は確保されますが、それ以外は、当面移動させないことが重要です。また、衣類に付着した新型コロナウイルスでの感染拡大も恐れられています。今のところそれが本当なのかどうかは分かりませんが、衣類に付着した新型コロナウイルスはどれだけ生き延びるかと言う医学的・化学的研究調査が様々行われています。ネット上にある数ある情報情報これもこれ最後にこれなどを読むと、そのリスクは低いとされていますが、そうは言っても多くの方は気にするでしょう。

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そして②。これはプラスチック問題で注目を浴びています。今回何度か参考にしている環境省の報告書によると、日本からの”中古衣類”の輸出先は、マレーシア、韓国、フィリピン、パキスタン、カンボジア、インド、ベトナム、タイなどが含まれています。プラスチックごみ輸出事案をきっかけとして、多くの東南アジアの国では”中古品”、”リサイクル資源”、”廃棄物”の輸入措置を禁止または厳しい制限をかけています。ここでは3点ほどポイントがあります。1.今までは資本主義の自由貿易としてリユース・リサイクル資源が国境をまたいで動いていた。2.資本主義のはざまで生まれる経済的格差・環境管理格差のギャップが年々拡大する一方、その輸出入の在り方を考え直さなければならない。3.国境を越えた循環型経済構築の一部としての国境を越えた資源の動きと環境管理・保護に関するトレードオフの問題点が明確となった。やはりここでは、それぞれの国単位で考えるのではなく、分母を地球一個で考えるサステナブルなアプローチが必要となります。

そして③、「そもそも自国で排出された廃棄物は自国で処理・リサイクル・処分するべき」、は基本中の基本です。②では地球1個で資源のサステナブルを考えると国境を越えた循環型経済の構築が必要と議論しましたが、このコロナ禍では”資源循環”よりも”衛生面”が重要である、と言う世論が強くなりました。先ほども新型コロナウイルスは衣類廃棄物に付着してどれだけ生存しているか化学的には100%証明されていませんが、モノが動くという事は人も動いているので、国際貿易は新型コロナウイルスに感染する可能性を増やしてしまいます。生活必需品は最低限の国内外の移動が必要ですが、衣類廃棄物やリサイクル資源などの必死でないモノは、とりあえず当面の間は国際的な移動を止める、と言うのは現在の状況を踏まえれば当然です。そうなると、リサイクルできないのであれば、その廃棄物が発生した国で安全・適正に処理処分する必要が出てきます。例えば、今までは日本が資源として輸出していた”廃棄物”は、国内でリサイクルするか適正に処理処分する必要が出てきました。新型コロナウイルスの影響を受けて、私たちの生活・習慣がニューノーマルとなった今、日本のリサイクル戦略にもパラダイムシフトが必要な時期を迎えています。

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生活習慣が変われば、生活必需品も変わる。生活必需品が変われば、生活ごみも変わる。生活ごみが変われば、リサイクルパターンも変わる。今までリサイクルしてきた資源を、衛生面から適正に処理処分する必要がでてくる。私たちの着る服が変わると、その先のリサイクルパターンも変わる。衣類廃棄物のリサイクル・資源化にもパラダイムシフトが起きつつあります。今後再び日本国内の衣類廃棄物が海外に輸出される”ノーマル”な状態に戻るのか、それとも国内で処分されるのか、または新たなニューノーマルなリサイクル・サステナブルな方法が出てくるのか、今後に注視したいと思います。

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