巨大放射能怪獣 対 巨大亀怪獣 日本列島激闘!!

登場人物
中村ユウキ:京都府福知山市国立巨大精子研究所所長である中村トウゴを父に持つ小学生。八年前の巨大精子の蹂躙により母親を亡くしたがそれを感じさせないほど大人びた少年。ある日拾った亀に愛着を持ち育て始める。
中村トウゴ:京都福知山市国立巨大精子研究所所長。ユウキが育てた亀の異様な成長スピードに気づき秘密裏にCCIに報告。研究を開始する。
坂東博己:災害、テロリズム、怪獣、宇宙人、巨大精子といった様々な日本国の緊急事態に対して警察権、自衛権を統括して指揮する危機管理情報局(CCI)局長にして内閣官房副長官。三十代後半。公安の松田とともに巨大精子研究所を視察する。
松田鉄二:新東京都警視庁公安課所属。三十代後半。格闘技オタク。

1:これまでのあらすじ

 20XX年クリスマス、対巨大精子殲滅用熱核兵器炸裂跡地旧都営地下鉄大江戸線六本木駅より100メートル級二足歩行恐竜型放射能怪獣出現!
 政府はこれを「ゴジラ」と命名。ゴジラは恐るべき凶暴性により口から放射熱線を放ちながら復興した東京を破壊。自衛隊、米軍、国連軍の総力をもって人類はゴジラの駆除に当たるも侵攻阻止に至らずゴジラは関東地方から近畿地方へと日本列島を蹂躙し続ける。
 一方その頃京都府巨大精子研究所では、八年前の巨大精子の蹂躙により母親を亡くした中村ユウキ少年に拾われ友情を育んでいた突然変異種の亀が急激な成長を遂げ、ゴジラにもせまる体格へと変貌を遂げていた。少年により「ガメラ」と名付けられた亀はゴジラ侵攻により荒廃しつつある大阪へとびたちゴジラに立ち向かう。
 ガメラは少年のために。少年はガメラのために。かくして混迷を極める日本列島で最大のファイナルラウンドがユニバーサル・スタジオ・ジャパンという名のコロッセオで幕を開けようとしていた。

2:U96


「【速報】ゴジラ、大阪府侵入。自衛隊なすすべなし」
「【速報】二体目の巨大怪獣か、巨大な亀様の生物が大阪方面へ飛翔中」
「【速報】巨大な亀様生物、ガメラと公式に命名。政府発表」
「【速報】ゴジラとガメラ、大阪府梅田にて交戦状態にある模様」
「【速報】ゴジラとガメラ、ともに活動停止か」

「坂東、民放でゴジラとガメラの中継やってるぞ」
大晦日のテレビ番組は大型特番がすべて吹っ飛びすべてニュース番組となっていた。政府の混乱、テレビ局からスポンサーに至るまで関係各所の心労を思うと公に仕える身分として坂東と松田の心臓は密かに傷んでいた。クリスマスに巨大精子研究所を視察中に秘書である青木からゴジラ出現の報告を受けてから、坂東が立法提案した緊急時特別首都機能移転法に基づき進路から最も遠くアクセスの便が良い北海道札幌市に一時的に政府機能が移転することが閣議により決定したまではよかったがゴジラにより航空機は一切利用不可となり坂東らはもう一週間近く札幌に向かうことができず足止めを余儀なくされていた。今は官僚らからの報告とニュースを確認しながらリモートでかろうじて仕事ができるといった有様だった。
「息子が拾ったガメラはここ、巨大精子を宇宙に打ち上げるミコト作戦の跡地で見つけたんです。かたや巨大精子に対して放たれた熱核攻撃跡地から出現したゴジラ。こうしてみると両者にはなにか因縁めいたものを感じます」
中村は父として、大事な友を失うかもしれない不安に苛まれている息子を思いながらこぼす。
「しかし、ガメラはユウキくんに育てられて、そして人類を守るためにゴジラに立ち向かったのでしょう。大丈夫です。ガメラは駆除されなきゃいけない理由なんてないですよ。人類は、ガメラは味方同士です」
坂東はそんな中村トウゴの心中を拾い上げるように答えた。

「速報です、只今ゴジラが再び活動を再開したとの政府の発表がありました。数時間前にガメラと交戦した際にガメラ渾身のジャーマンスープレックスで両者頭から落ちたことにより活動を停止していましたがゴジラが先に目覚めた形になります。現在ゴジラは大阪市を南西にすすんでおり、このままの進路でいきますとユニバーサルスタジオジャパンを通過すると考えられます」

「どうやらまだまだ紅白歌合戦も大晦日猪木祭りも見れそうにないか」
大きく息を吸い込んだ松田に中村ユウキが手をかける。
「覚悟は決まったみたいだな。少年」
「この世界にヒーローなんていないと思ってた。所詮フィクションはフィクションでしかないんだって。巨大精子のときも、今回のゴジラのときも。でも今は違います」
「そうだ、今の地球を救えるヒーローはガメラとお前さんだ。ようやくわかったんだな」
「連れて行ってください。ガメラのところへ」

3:Last Battle

「時刻は午後9時を過ぎたところであります。いま、ゴジラはUSJ駐車場側ゲートを破壊し園内へと侵入しました!まさに掟破りの不正入場!!この大阪が世界に誇る人類の文化のテーマパークもゴジラによって焦土と化してしまうのでしょうか!」
スポーツ実況上がりのニュースキャスターがまくしたてる。それはニュース番組という域を超えて格闘技イベントの入場のようにドラマチックですらあった。
「たった今新たな情報が入りました!どうやらガメラもたった今復活しゴジラへと向かっているそうであります!」

「少年、お前さんのガメラだぜ」
中継所のテレビを見ながら自分のように松田はユウキに語りかける。
「こう言うと幼稚かもしれないかもですけど…でも僕の友達にはヒーローでいてほしいんです」
「幼稚で結構!小学生なら小学生らしくはしゃいでいてもいいんだぜ。…そう坂東も言っていた」

「たった今ガメラが大阪港に着地しました!まるでこれがゴジラとのファイナルラウンドでありましょうか!!出口のないニッポン!!持たざるもののテロリズム!!ゴジラ推定身長100メートル推定体重5万5千トン!!ガメラ推定身長90メートル推定体重8万トン!!ガメラどう考えても!!普通に考えたら勝ち目なし!!それなのに人類のため!あの日の少年の約束のためゴジラに挑んでいきます!!ガメラが負けて誰が責められようか!!男はみんなダメだ!!」

まるで大阪という摩天楼に建設されたコロッセオのごとく佇むUSJに悠々と鎮座するゴジラに対しガメラは闘志むき出しの表情で入場していく。お互いの視線の交点には眼力の火花がすでに激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。

「物語はついにクライマックスを迎えるのでありましょうか!これは遺伝子という名の記録書に刻まれるアカシックレコードなのか。父と呼ばれ母と呼ばれ積み重ねられたものの上についに我々は奇跡を目撃するのであります!!これが因縁の両雄が雌雄を決するとき!!対角線上に火花が散っている!!!さああどうっだあああああああ!!!!」

アナウンサーの実況がまるでゴングだったかのようにガメラはゴジラに向かい強烈なタックルの姿勢を取りながらジェット推進の応用で突進する。ゴジラもまた全力疾走でこれに正面から立ち向かおうとしていた。USJの中心地に向かって疾走する二大怪獣。まさにファイナルラウンドが始まった瞬間であった。

両雄の全力の激突がまるで宇宙創生のビッグバンのような衝撃を生み大地を震撼させる。鬱々とした曇り空に覆われた天空は一気に星空が開けた。

最初の競り合いを制したのはーーーーゴジラ。何万トンに及ぶ塊の音速にも及ぶエネルギー推進を受け止めるとそのまま天高く持ち上げーーーーガメラを頭から地面に叩きつけた。

「ゴジラ圧倒的な怪力であります!ガメラ脳震盪不可避の一撃!早くも決着がついてしまったのでありましょうか!!」

4:War

「あややっ!!?ガメラは…首を甲羅に引っ込めていたようであります!!甲羅で受けて脳へのダメージを軽減したのであります!!」
「できるぜ...ガメラさん」

ちょこざいなとばかりにガメラが立ち上がり上肢のジェット噴射でゴジラの顎を捉える。右、左、右の連撃にたまらずゴジラは後ろにのけぞり熱線でガメラを引き剥がす。
ガメラはしかし追撃の手を緩めない。ラッシュの締めは回転ジェットで体当たり。さらに回転ジェットの勢いで腕を伸ばしゴジラの顎を的確に打ち抜き今度は中距離から火球を放ちゴジラを牽制。一気に再び距離を詰めていく。

「あまりにも巨大すぎる現代に蘇ったパンクラチオンを我々は目撃しております。これは形を変えたロマネスクか。ルネッサンスの最終形態なのか。およそ格闘には不向きな体型であるガメラでありますが四肢のジェット噴射や口からの火球を用いてあの怪獣王ゴジラに対しここまで全く食い下がる気配がありません!しかし!この判定勝ちのないルール無用のバーリトゥードにおいては片方が倒れるまで試合は続くのであります!!」

ゴジラが大きく息を吸い込むような動作から極太の熱線をガメラにお見舞いする。それに対しガメラは火球をーーーー否、特大の火炎噴射でこれに応戦した。超高温の火力のぶつかり合いは中心地点において天地開闢の爆発を引き起こした。

爆発によって引き起こされた衝撃がガメラを大きくのけぞらした。そのスキを見逃すゴジラでは断じてなかった。爆炎により視界が遮られる中ガメラにまっすぐ突撃しガメラにマウントポジションをとった。甲羅により重心が後ろによってるガメラはあっさり後ろに倒され右腕をゴジラのストンピングで押さえつけられた。ジェット噴射による起き上がりも押さえつけられガメラは一方的にしっぽで滅多打ちにされた。

「立て.…ガメラ.…!!」
松田らの応援虚しくガメラはグロッキーになってしまっていた。ガメラの意識が弱ったのを確認したゴジラがストンピングの姿勢のまま渾身の熱線をガメラの腹部に向かって放った。

「…なんという凄惨な光景でありましょうか。先程まで互角にゴジラと渡り合っていたガメラですが一瞬のスキをつかれてあっという間におはうちからしてしまいました。未だ信じることはできませんが、本当にガメラは倒されてしまったのでありましょうか」

5:PIRATES OF THE SEA

「日本国民と地球市民の皆様に絶望するのはまだ早いって伝えてくれ。マイクロウェーブ送電を使ってガメラに高圧電流を叩き込んで心臓をまた動かす」
「ガメラは当研究所において熱エネルギーや電気エネルギーを体内に溜め込んで代謝を行ってることが判明しております。おそらく関西中の電力をガメラの心臓に流し込めば再び息を吹き返すでしょう」
「総理に連絡してくれ。今から少しばかり電力をガメラに集中させる。関西の避難所にも電気が落ちることを徹底するように」

「時刻は夜の10時を過ぎたところであります。ゴジラによってついに息の根を止められたと思われたガメラでありますが、政府はこれより大阪中の電力をガメラに注ぎ込み蘇生を試みるようであります。人類はかくも諦めの悪い生き物でありましょう。それが今日までの繁栄をもたらしたのであれば、たとえ今日が地球最後の日であろうとも最後の瞬間まで悪あがきしてみようと、この生き物は賭けたのであります」

「坂東…、信じてたぜ。お前は絶対に諦めないって」
「ガメラ…立って…立って!!僕のヒーロー!!」

「送電開始!!」
巨大なパラボラアンテナから仰向けに倒れるガメラめがけてワイヤレスで超高電圧が送電される。その瞬間、ガメラの肉体が大きく痙攣しーーー肉体は膨張しゴジラと全く同じ体躯へと至っていた。

「ガメラが…たった」

6:Avalon - log in

「まるで天もこの戦いに興奮しているのでありましょうか。度重なる爆発の衝撃と大阪の摩天楼による気流は急激な気温の変化をもたらしここ決戦の地USJにおいても巨大な雹が降り注いでおります。この天空の采配に人類は耐え忍ぶしかないのでありましょうか。しかし現在人類喫緊の試練として立ちふさがっているのはゴジラであります。これを乗り越えないことには我々人類に未来はないのであります。今ガメラは自衛隊の作戦により息を吹き返しました。さながら巨大AEDか、はたまたインポテンツの電気ショック療法でありましょうか。見違えるガメラの体格、もはや筋肉の二世帯住宅どころの騒ぎではありません。肉体のスカイツリー、筋肉のバベルの塔であります。もはやこれが本当の最後の戦いであります」

何度叩きのめしても起き上がるガメラと人類に対しゴジラの目はまるで少しの敬服と呆れが混じっているようにも見えた。ガメラとゴジラの両雄がしばしにらみ合い本当のファイナルラウンドが始まろうとしていた。

ノーガードで前に出ていく両雄、先に仕掛けたのはガメラ。先ほどと同じようにジェット噴射を用いた正拳突きーーーーしかし威力は先程とはくらべものにならない。

大きくのけぞったかに見えたゴジラだったがその勢いをしっぽに乗せてガメラに直撃させる。しばしの沈黙から再び両雄が歩み寄りもはや戦略も何もない、本能のママの打ち合いが始まった。ガメラが殴ればゴジラも殴る。右頬を打たれれば右頬をやり返す。もはやここには言葉を失った野生動物によるハンブラビ法典が展開されていた。

そしてその瞬間がついに訪れた。激しい打ち合いの中で唐突にガメラが四肢を甲羅に引っ込める。顔をめがけたゴジラの右フックは大きく空振りゴジラがガメラに背を向けた形になった。その瞬間にガメラは引っ込めていた四肢を伸ばしゴジラの背中を掴み、天高く持ち上げ、そして地面に叩きつけた。

5万5千トンの肉体が頭から落下しさしものゴジラも脳震盪不可避の一撃にわずかに意識が飛ぶ。そのスキにガメラは最後の攻撃に出る。ゴジラを抱えたままジェット噴射で天空へと飛び立った。

「そうか、巨大精子…」
「気づきましたか、坂東先生」
「にわかには信じられないですけどね」

成層圏まで飛び立ったガメラはゴジラをそのまま放り投げる。もはやこの高度ではゴジラは静止しているも同然だった。
ガメラは頭頂から真っ白い白濁液をゴジラめがけて放った。その直撃の勢いでついに地球の重力から開放されて宇宙へと自由遊泳を開始するゴジラ。ついにゴジラは人類の影響圏から一旦のリングアウトに追い込まれたのであった。

「あのガメラは地球が巨大精子を発射するための生殖器だったんですね」
「おそらくはですね。どうしますか坂東先生?このままガメラを野放しにしておくとまた巨大精子が日本列島を蹂躙するかもしれませんよ」
「…いや、大丈夫でしょう。きっと次も宇宙に射精してくれることでしょうよ」

成層圏から回転ジェットでガメラが地上へと帰還するーーーーかに思えたガメラであったがユウキの前に姿を見せるとそのまま上空へと去っていったのであった。もはやこの体では人類と共存はできない。そのことを悟っていたかのようにガメラは人類に影響を及ぼさない生活圏を探しに行ったのだと、ユウキは直感的に理解した。

「ガメラ…」
「少年、ガメラは勝ったんだ。本当のヒーローになれたんだ」

「今ここにゴジラとガメラという二大怪獣の激闘は幕を閉じたのでありました。この大宇宙の神秘の前に所詮我々は遺伝子運搬業でしかないのだと、あまりにもちっぽけな存在であることを認識させられるものでありました。しかし一方で我々人類はどんなに小さな存在であったとしてもその忍耐強さでいままで文明を発展させてきたのだと、どんな困難にも打ち勝って来たのだということも再認識させられたのでありました。今再びゴジラの手により蹂躙された日本列島でありますが今度もまた復興できることでしょう。そして今回の災害対応にあたった行政の方々、最前線で伝えようと奮闘した報道の方々、医療機関の方々、ボランティアの方々へ、僭越ながらねぎらいの言葉を。一旦ではありますが、本当にお疲れ様でした!!」

fin.


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