シーソー

ある曇りの日。
目的もなく、煙草を片手に公園へ赴く。

入口に立ち、公園内を見渡す。

程よい距離感に設置されているベンチ。
ところどころ塗装が剥がれ、色褪せたジャングルジム。
錆びが見え、甲高い金属音を鳴らしながら大きく揺れるブランコ。
日焼けで変色し、設置された当時の色彩などとうに失ったカラフルな滑り台。

目を凝らして隅々まで見渡す。
見つけた。
こちらもとても具合が良いとはいえない、朽ちた様子の見られるシーソー。
くすんだ色の一枚板が地面に触れる箇所へクッション代わりに埋められたタイヤは、潰れてからかなりの時間が経ったように見える。

ベンチへ座り、煙草に火を点ける。
一瞬の間、目を瞑って白煙を肺へ溜め込む。
目の前に見えるシーソーには、やがて少年たちがやってきて、声を上げながら地面を蹴り、身体を揺らす。
摩擦により生じる音はより朽ちた様子を際立たせる。バランスを取りつつ揺れる板。
重心にある支柱を軸にぐらぐらと揺れ、やがて水平になった。

バランス。
シーソーはバランスが大事だ。
そして乗る人もまた互いにタイミングを合わせて地面を蹴る。

また少しの間目を瞑り考え込む。
身の回り、特に食生活においてはバランスは重要な意味を持つだろう。
偏った栄養素だけを摂り続けていれば、やがて身体には異常をきたす。

それだけではない。
精神面──メンタルのバランス。
現代社会、ストレスも渦巻く中で人々は学業をこなし、仕事に励み、各々がやらなければならない事をして生活を送る。
多忙極まる日々、気を休ませる時間すらまともに取れない人も少なくない。

人の乗らないシーソーは動かない。
重心で板は水平を保つ事はなく、左右どちらかに偏って静止する。
身体面と精神面、これらもまた適度に良いバランスを取り生活しなければならない。
偏りが生まれ、続く先にあるのは病。

私たちは時には身も心も休み、リフレッシュする事を意識付けておかねばならないのかもしれない。
自戒の意味も込めて記しておこう。