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他人のものと自分のもの

名古屋はまああかん。とろくしゃあニュースが流行っとる。

この事件でMedal Biterとしてその名が全世界に着弾した我らが河村たかし市長ですが、メダルの持ち主である後藤選手がトヨタ自動車所属ということで、業火にさらなる油分を注ぎ込む結果になりました。

中京圏の経済を支配するトヨタ自動車が、この蛮行に「お気持ち」を表明しちゃったわけですよ、「このクソたわけが」と。
所属選手は家族も同然。当人に瑕疵はないのに、世間様に奇異の目で晒されたわけですから、黙って見過ごすわけにはいかなかったのでしょう。

ちなみに、これより遡ること3週間前にも、トヨタ自動車の「お気持ち」表明が世間を騒がせました。

東京2020オリンピックの数あるオフィシャルスポンサーでもとりわけ大看板でありながら、世界各国での五輪強行開催に対する不信感を受け、「金は出すけどCMは出さない」という態度を表明していたのです。

この対応については、開催反対派からも概ね好意を持って受け止められたわけですが、もともとトヨタは不義理に対して厳しい態度をとる企業だったことを忘れてはいけません。

豊田喜一郎氏の社長時代、戦後不況で金策に喘ぎ、地方銀行が一体となって支援策を協議する中、「機屋には貸せても鍛冶屋には貸せない」と貸し剥がしを仕掛けたのが、クソたわけの権化・住友銀行でした。

日銀の支援で経営危機を乗り越えたものの、その代償として人員整理を求められた喜一郎氏は、家族同然だった社員たちのクビを切り、責任をとって社長を辞任します。その心労がたたったのか、喜一郎氏は急逝してしまいます。

実質的創業者を死まで追い込んだ住友銀行を、トヨタは赦しませんでした。
豊田家の親戚筋である三井系・さくら銀行と合併するまでの40年以上に渡り、住友を出禁にしたのです。

スジの通らないことは断固として許さない企業体質が窺えるエピソードですが、トヨタ系に限らず中京圏における住友の評判は、「いざという時、役に立たない銀行」と暴落しまくったそうです。

今でも日本最高の発行部数を誇る読売新聞が苦戦するなど、他の大都市圏に比べて地元産業が幅を利かせる中京圏ですが、この土地柄は、住友銀行の不義理が影響しているのかもしれません。

さて、我らがMayor of Simpletonこと河村市長にハナシを戻すと、金繋がりでこんな前科も発掘される始末です。

黄金怪獣ゴルドンですか…

確かに名古屋国には、どういうわけか金粉入りのスイーツやお酒も多いので、ひとりあたりの金の消費量(飲食方面)は多いのかもしれません。

ただこの方に関して言うと、200万超の市民を代表する名古屋市長ですから、なにしろ。
地方の県知事よりも権限が大きいので、最近の「表現の不自由展」を巡る大村知事との夫婦喧嘩、疑惑まみれのリコール騒動など、そのパフォーマンスも注目されがちです。

今回はサービス精神が裏目に出たわけですが、人間というもの、そこそこの権限を手にすると、他人のものと自分のものの区別が付かなくなるのは避けられないのかなあ、とも考えてしまいます。

自治体に限らず、一般企業でもある程度の権限を持たされる人はいます。
それは経営のみならず、現場にも存在するわけですが、時折その権限を勘違いし、平気で他人のものを強奪する人間がいます。

時折SNS上では、公の機関による無償提供の強要だとか「友達価格」という名の買い叩きなど、デザイナーや音楽制作者などクリエイター界隈の「搾取」が話題となります。
労働時間などの搾取はどの業種にも見られますが、クリエイターの場合、成果物は「製品」ではなく「作品」と称され属人性も高いので、依頼主との構図がわかりやすいのでしょう。

こういった告発やエピソードでは、「お前学校出てんのか?」と罵ってやりたくなるほど、幼稚で無茶苦茶な論理を振りかざす依頼主が登場します。

個人情報だのセクハラだのコンプライアンス遵守を喚き散らすくせに、知的所有権や著作権などにデリカシーのない人間も多く、問題が発生すれば「オレ、その辺は素人だから」と逃げ出す輩もいます。
その手の搾取って、有利な立場を悪用した立派なパワハラなんですけど、義務教育すら受けてないのかなこのバカどもはと呆れます。

僕自身、予算行使の権限を持たされ、また職業柄クリエイターさんへの発注も時々あるんですが、反面教師として考えさせられることが多々あります。

自分でデザインを組んだり、業務として曲を作ることも多いんですが、その理由は圧倒的に予算の少なさです。
予算さえあれば、自分がわざわざ創作に費やす時間も不要ですし、そもそもプロに任せた方が成果物としての質は高くなります。

そのため予算の大小はさておき、いざ依頼することになれば、納入後も最大限のリスペクトを払うことにしています。
例えば納入後に「図録やサイトに転載したい」などの申し出を受けることもありますが、せいぜい社名の併記をお願いする程度の条件で許諾しています。

後にその方の作品が評価された時、こちらにも箔がつくという薄っぺらい魂胆もないわけではないですが(汗)、そもそも創作物にまつわる依頼について、依頼主には共同制作者以上の権限はないと考えています。
目的を告げて対価を払った以上、こちらはそれを直接的に商売に使う権利を得ますが、クリエイターさんが無断で別の商売に転用でもしない限り、利用についてはお互いの理解があれば問題はないと思っています。

映画界を見れば明らかなように、昨今のコンテンツ産業は配給(放送・配信・出版)側と制作側の分化が急速に進んでいます。
今後、配給側の現場には一層の予算コントロールが要求され、対して制作側には個々のクリエイターへの依存が高くなるものと予想します。

この構造では先に書いた「他人のもの」をどう扱うのか、配給側のみならずクリエイター側の二次利用にとっても重要となります。

現在「初音ミク」の仕事に携わっていますが、「初音ミク」を理解することは、多層的なクリエイターの権利や二次利用の運用ルールを理解することでもあります。

「初音ミク」発売元のクリプトン・フューチャー・メディアが策定したピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)には、クリエイティヴ・コモンズの思想も汲まれていて、複雑な二次利用をスムーズに発表するために、非常によくできた仕組みだと思います。

また同社のガイドラインも、発注側がマネジメントの教材として学ぶのに最適の内容で、ものづくりに関わる方は必読でしょう。

ともあれ、他人のものを勝手に口に入れるのはやめましょう。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。