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ラジオと品位。

替え歌が不適切

先日こんなニュースが界隈で吹き荒れました。

これに関し、生真面目極まりないラジオマンのひとりとして居ても立っても居られず、筆を取らせていただく所存であります。

まず悲報に接してのファーストインプレッションは「いまどき替え歌はなぁ」という思いです。

著作権云々はある程度広まっていて、何でもかんでも「JASRACのせいだ」という情弱な方も減っていて、知識が正しく広まっていくことはめでたいことです。
そんな状況ゆえ、昨今の替え歌はメディアに関わる者なら「得なことが何もない」と忌避するのが多勢と見られています。

ちなみに替え歌による著作権侵害は、歌詞を手掛けた作詞家のみならず、その詞にメロディを付けた作曲家も親告できるそうです。

そうした親告リスクがあるから、ということ以前に、替え歌というものは他人の褌以外の何物でもありません。
ハッキリ言えば「ネタとしてとても安直」ということも、手を付けられなくなったひとつの理由に挙がるでしょう。

その点から、今回の謝罪については各界隈で「え?いまどき替え歌?」とのリアクションが巻き起こったのではないでしょうか。

さらに、この件で問われるべきは、ラジオ文化や笑福亭鶴光師匠の品位ではなく、「制作者のセンス」に尽きると思います。

3ヶ月前のオンエアにつき音声は聴けていませんが、SNS等でリサーチしたところ、替え歌の歌詞らしきものはハケーンできました。

先に「安直」と前述しましたが、今回問題とされたらしい替え歌に限って言えば、文字で読んでも、それを見ながらメロディに乗せて歌っても、たいして面白くないんですね。

ただその言葉を言いたくて、他人の著作物を利用しただけという印象しかないのです。
せめて採用前に「それ、ホントに面白い?」と考えて欲しかったなと。

上掲のニュースには「時代が変わった」とか「深夜放送にコンプライアンスなど」と悲嘆に暮れる意見も飛び交っていますが、僕は「単にネタが面白くなかった」の一点凝視で眺めています。

まあ、これでひっそり伝承されてきた替え歌文化の灯が消えたかなという、ほろ苦い感慨が残るばかりであります。南無。

そして「この件により笑福亭鶴光というラジオ界の至宝に傷がついたのか」といえば、その心配は一切無用である、と生真面目なわたくしなんぞは断じざるを得ないのです。

真実を求めて

今回報じたいくつかの記事見出しを見るに、おまいら「不適切」って言いたいだけだろ、との思いに耽ります。

では「お前は不適切な番組を作ったことはないのか?」と尋ねられたら、断じて「否」と答えざるを得ません。
生真面目だけで30年やってきたあてくしですよ。

6/20現在、ニコニコが諸般の事情でクローズしているため、リンクを開くことはできませんが、17年前に放送した番組ディレクターデビュー作『インカ帝国の成立の、成立。』は、わたくしの性格そのものの、非常にアカデミックな番組となりました。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm1819307

簡単に書くと、現在のペルーの地にインカ帝国を開いた王マンコ・カパックの名が、日本の義務教育において伏せられてきた闇に、正面から凸撃したドキュメンタリー番組です。

この楽曲の制作に関わるまで、わたくし自身もマンコの名を学習したり暗記した記憶がなく、『ウルトラマンネクサス』(CBC制作)における過去の新宿戦のように、人々の記憶から作為的に抹消された可能性も感じたのです。

「つボイと鶴光」の奇跡

2ヶ月近くに及んだ取材にも関わらず、結局「マンコ・カパック」は日本語に訳せば「素晴らしい基礎」という意味であること以外、真相は闇の中でした。

この人名に教育で教えられない謎が秘められていると思ったわたくしは「マンコは素晴らしい、カパックは基礎、マンコは素晴らしい」と、取材に答えてくれた言語学者の言葉を丁寧に拾い上げました。

でも、それだけでは真相解明に足りなかったようです。

デビュー作にしては高い壁に挑みすぎたかなハハハハハと、アカプルコのバーで思い出し笑いの昨今ですが、実はこの番組には、渦中の人となられた笑福亭鶴光師匠にも協力いただいたのです。

企画書に目を通された師匠は「なるほど面白い。やりまひょ」と言われ、そのまま応接セットで取材に応じていただきました。
軽い打ち合わせだけで話された師匠の言葉は、ライバルとも言われたつボイノリオさんの業績を直接讃える、非常に希少な音源となりました。

「素晴らしい基礎」を着る

ところで、この番組の基となった楽曲のアートデザインは、同僚の永田氏に作ってもらいましたが、この度、そのアートワークがTシャツとなりました。

実は復刻版ですが、今回は黒ベースもあります。
黒ベース、締まりが良くなりました。
眺めていると「いやー、実にいい締まりだ」との絶賛が聞こえてくるようです。

時空を超えたロマンを味わえるこのTシャツ、良かったらご購入のほど、ぜひ。

生真面目なので、周辺のスタッフたちから「宣伝しろ」と言われた通りに宣伝しました。
これでいいの?

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。