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プロデューサーの丸投げ、大事。

6月もあと2日。
異動によって間もなく「現場」から離れる立場となってしまいます。

もちろん世に言う「中間管理職」なので、中間でフラフラしていても何の問題もないわけですが、前任者から引き継ぎするうちに「わーたいへんだー」と棒読みになるくらい呆然としちゃうような、重めの仕事が押し寄せてくるのを感じるわけです。
現場にいる場合じゃないなこれはと。

まあ現場現場とは言えど、僕が制作現場に異動したのは41歳のことなので、実質的に現場にいられたのはディレクターだったわずか3年半だけのことです。
それ以外の時間は主に管理者としてのプロデュースを担当していたわけです。
こちらはいつの間にか10年を超えました。

プロデューサーとしての主な仕事は企画立案と思われがちですが、実はジョブローテーション的に長寿番組を引き継ぐことの方が多く、立案自体は年に1回あるかどうかという、割合としてはたいして多くない作業です。

その他予算の管理、聴取率などのデータを分析してみたり、営業方面から来た案件をコーナー企画として成立させたり、イベントとして成り立つように調整するということが大半となります。
だからもともと現場にいる時間は少なかったのです。

自分で企画した番組について書くと、僕の企画番組は属人性が強く(武将隊、民族音楽番組など)ローテーションに不向きで、声掛けしたところでみんな尻込みしてしまうことから、それらは編成に異動した後もそのままプロデュースを担当していました。

いま担当している『RADIO MIKU』についても、洗っても落ちない頑固な属人性のため、今後も関わることになっています。
誰がやっても同じ、という番組にするには、ちょいとハードルが高いのでしょう。
もちろん「やってみたい」と挙手する後輩がいればいつでも譲る気はあります。まず皆無でしょうけども。

ということで、管理者という立場でスタジオに顔を出すわけですが、僕自身のポリシーとして、番組に「絶対こうでなければならない」という縛りを付けることはありません。
あるとしたら「人を傷つけないこと」という当然の縛りだけで、あとは放任主義です。

放任と言えば聞こえはいいですけど、側から見れば「丸投げ案件」でしかないですよね。
細部にこだわるプロデューサーも多いですが、僕はこの「丸投げ」が比較的多い方です。

ただ、放任とは言え「その時点でリスナーにとって一番面白いことをやれているか」は常に観測しています。
例えば番組ハッシュタグの動向は大きな指標になります。

盛り上がりを発見するのはもちろんですが、言葉足らずのせいでトークがネガティブな方向に誤解されることもあり、スタッフに「こんな受け止め方をする人がいるから、今後はこう説明しなさい」と指摘するのにも使います。

ハッシュタグは、自分がよかれと思ったことが、果たしてその通り聴かれているか、リアルタイムに計測できる貴重なアイテムなんですね。

プロデューサーの中には確固たる型を作り、そこからはみ出すことをよしとしない人もいます。
でも、現場がそこからはみ出さないように気をとられてしまい、結局たいして印象に残らないような番組が生まれてしまうケースもあります。

コンプライアンスを遵守することはもちろん大切なことです。
でも、常に干渉を欠かせないほど信頼できない現場なら、全員とっととクビにして、ちょっと予算オーバーしてでも信頼できる人を起用した方が早いじゃん、と僕なんかは思っちゃうんですね。

別に残酷でもありません。
番組での失言によって経済的な損失を与えるおそれが少しでもあるのなら、局のために保険を掛けるのは当然のことです。
僕が番組を立ち上げる際に最も重視しているのは、実はその保険だったりします。

経済効率を重視して危なっかしい現場を作らざるを得ないのなら、起用した本人が常に腹を括りつつ、現場にのびのびとやらせながら、しっかり監修して適宜成長させるしかないのです。
ガミガミ怒るばかりが能ではないのです。

よく「フォア・ザ ・チーム」という言葉が好きで使う人がいますけど、実を言うと、僕はあまり好きな言葉ではありません。
パーソナリティであれディレクターであれ、自分の才能を発揮することを第一にしてほしいのです。

責任はプロデューサーがとればいいのです。
失態があったのなら、それは起用した人間の責任です。
「丸投げ」と言っても、責任まで投げてるわけでもないんです。

チームのことばかり考えていると、番組が品行方正だけど面白みがない人みたいになってしまいます。

そういう人は親族から見ればそれはご立派かもしれませんが、めんどくさそうなので、僕なら友人にはしません。
聴く者の友人になれないラジオ番組は、何かを間違えてしまっていると思います。

今回オチはないよ。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。