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ボカコレ、なんとか間に合うの巻

このトキメキも3度目であります。

去年の秋、今年の春に続き、半年に一度のボカロ楽曲の祭典「ボカコレ」(The VOCALOID Collection)への楽曲投稿が、昨夜無事に完了しました。

今回は不肖★みくばんPが動画に加え、編曲も担当いたしました。

今さら説明不要かと思いますが、界隈ではご存知、我らがリーサルウェポン清水藍が、それまで未経験の作詞・作曲に加えて「初音ミク」の調声に挑み、楽曲および動画を制作することで局地的炎上と衝撃波により剥がれて脆くなった地表を支えきれなくなった断層が破断を繰り返して岩盤に損傷を与え、半径10メートルほどの亀裂から万物をマントルに導いて発生した高熱と地下水の激しいぶつかり合いによって温泉を産出し、全身の毛穴と関係者全てのハートから日頃溜まった汚れを除去するデトックス企画であります。

なんでしょうかね、この企画におけるワタクシの役割は、簡単に言えば「天皇の料理番」みたいな感じ?
まあ、大変でしたよ。

過去2回は『RADIO MIKU EX』に出演いただいた、名古屋在住のボカロP・ねじ式さんに採譜からアレンジ、ミックスまでの一切をお願いしていました。

その一方でワタクシは最終アウトプットとなる動画制作を担当し、いずれの回も当夜まで素材集めと清水の最終監修に応えながらギリギリのタイミングで公開という、薄氷を踏む思いでありました。

この楽曲制作は、もともと『EX』番組内で清水藍に初音ミクの真髄(ご本尊)を堪能させようということでコーナー化していました。

そこへInterFMさんから「ボカコレ」へのメディアパートナーにお誘いを受けたので、それなら番組での成果を番組リスナーの方以外にも聴いていただく狙いがあったわけです。

だから『EX』が終了した時点で、次回(つまり今回)はメディアパートナーの打診にはお応えしたいけど、曲の制作は無理かなあと思っていたんですよ。

画像はイメージです。

だって想像してみてください。
動画制作ですら、激昂により上がった体熱と寄せては返す冷や汗の波の衝突で、どれほどの水蒸気と新種の微生物が発生したことか。

そこに動画のベースとなる楽曲制作が加わるんですよ。
傍らで見てましたけど、その苦労たるや。

さらに7月から仕事が激変しちゃってるので、これも仕事とは言え、他の業務や部員・上司の依頼を差し置いて、じっくりDAWに向き合う時間も作れなくなってます。

53歳になってですよ、血糖を消費する目的で氷入りの冷たい風呂に毎晩浸かれませんよ。
あれはアントニオ猪木さんだからできるんです。

一方の清水もこの4月から帯ワイドの担当になり多忙気味で、『EX』に全力投球できたほどの時間がとれないのは明白でした。

ドワンゴさんからメディアパートナーの打診があった直後、清水に「曲どうする?」と尋ねてみました。

「無理です!」

そんな答えも致し方なしと思ってましたが。

「そうですね…ま、やれる範囲でやれば」

やる気なのか。そうなのか。

ひとまず今回は僕が仕上げた曲に、清水が歌詞を乗せて調声をつけることになりました。
そして動画は「一枚絵でもいいよね」ということで、いったん方向は決まりました。

ところが、僕が新しい仕事をナメていました。
というか、異動前からの仕事が人員不足で減ってないので、帰宅しても趣味に費やす時間すらなかったのです。
あっても疲労で爆睡する有り様。
曲作りに取り掛かれたのはお盆休みでした。

9月に入って、ある程度サビとAメロにあたるパートができたんですが、図らずもド定番の、どこかで聴いたようなポップスになってしまいました。
念のため清水と斉藤初音アナのふたりに聴き覚えがないか確認してみました。

「いい曲ですね。好きです」

初音ちゃんからは上々のリアクション。
ところが清水は…

「聴いたことある」

こう言ってiPhoneから、誰もが知ってるボカロP&歌い手コンビの曲を引っ張ってきました。

8小節のサビのうち、前半4小節のメロディが微妙に似ていて、さらに同じコード進行でおまけにキーまで一緒。

うわあ。

僕自身聴いた覚えのない曲でしたが、それだけ定番の進行だったわけですね。

時代の寵児ともなったボカロPと似たメロディが浮かんだというのは誇らしいんですけども、まあ、全ボツだなと。
詰んじゃったなと。

しばらくして、清水からLINEでいくつかの音声ファイルが送られて来ました。
聞くと、明らかに会社から帰る途中の道すがらで収録された鼻歌。

さすがに「諸般の事情で参加を見送ります」という結論には、断固としてしない・させない・持ち込ませない、らじみく三原則を感じましたが、窮地を救うのか、窮地そのものになるのか、いずれにしても清水に感謝するワタクシ。

すでに『通信』でも晒しましたが、この「鼻歌スタート」は、清水とねじ式さんの作曲方法がそのまま踏襲されたものです。

歌われた場所も時間も異なる断片を繋ぐ際は、順序はもちろん、キー合わせ、テンポ決めなどが欠かせません。

最大の難所というか、ヤマ場がいきなり来るわけです。
ひとつの断片ですら、歌ってるうちにキーが変わってきちゃうわけですから。
いやホント、ねじ式さん偉大だわ。

僕もその夜、細かいメロディのニュアンスを確認したくて、後にサビとなる8小節を適当なバンド系のサウンドでアレンジして清水に送りました。

すると清水からは「こういう曲にしたい」と、あるボカロ曲へのリンクが送られてきました。
この参考曲提出もねじ式さんとのスキームです。

つまり、清水はねじ式さんに頼むのと全く同じことを僕にぶつけてきたわけですね。

ねじ式さんは、ヒントはヒントとして表層的には異なるアプローチで「ごはんのうた」「未来への手紙」を仕上げました。

だから僕も「あくまで参考」と割り切りました。
なにせ作ってた曲が、あわや盗作炎上だったので、そりゃナーバスですよ。

とは言え、清水から送られた参考曲は、明らかにバンドサウンドの対極にある、キュート系テクノでした。
打ち込みひと筋40年、ギターを弾けない僕に合わせてオーダーしてくれたと思いたいですが、まあ絶対違うよな。

参考曲のテンポは170BPM以上ありましたが、清水のメロディを乗せたらネタ曲になりそうだったので、縁起担ぎと番組内の安全祈願を込めて139に。

後は9月の『らじみく通信』で晒した、iPadのKORG Gadgetで作った仮アレンジをベースに、音源やフレーズを差し替えたりという感じでした。

本当はMIDIやオーディオをStudioOneに移し、テクノ系なのでRoland Cloudの音源で作るつもりでしたが、あまりに時間がないなと諦めました。

それで通勤時にも使えるiPadをメインに、バックトラックはKORG Gadget、最終ミックスはCubasisでまとめました。
同じメーカー製のCubasis、VSTが使えないことを除けば、Cubase(今のは知らない)と変わんないですね。
マジいい時代だわ。

転調後にMEIKOのコーラスを足したのは、公開前夜でした。
他にもクレジットしてませんが、初音ミクNT、iPadのMobile VOCALOID Editorのミクも足しています。
これは「清水の調声は時間的に限界かな」と思ったため。

清水はこの時点で、ミクのデータこそ送ってくれたものの、動画用イラストは3枚(●▲■が1個ずつ)しか描けてなかったのです。

時間があるうちに、NTで部分的に打ち込み直そうか迷ってたところ、MEIKO V3も使いたくなり、コーラスを足すだけにしようと思い直したわけです。

そんなわけで動画は全て当日作業。
イラストができる都度Googleドライブ経由で送ってもらい、それをいつものCuteCutProで貼り合せ、LINEで意見公開しながら完成したのは、よる10時過ぎ。

結局楽曲データもイラスト待ちの時間に数箇所弄った程度で、いろんな環境でモニターするなど、マスタリングはおろかミックスにかけるような時間もありませんでした。

とは言え、一夜明けてニコニコを開いて冷静に聴いてみたら、時間のない中でよく仕上げたもんだと思った次第。
自分としては細かいとこに目を瞑れば佳作かなと思ってます。

まあ他にも書きたいエピソードは山のようにあるんですけど、たぶんまた『らじみく通信』で話します。
ひとまずここまで読んだら全員動画にGOだぞ。
いいな、わかってるね。

【追記】
ボカコレ用動画に使用した楽曲が、誤ってマキシマイザーを重ねがけしてしまったものだったことに気づき、バランスも含めて改訂版を公開しました。
好事家向けですが、よかったらご視聴のほど何卒。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。