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ただまぁ、打つ手はないです。

電通がkikeruで民放系ネットラジオを束ね、J-WAVEさんがそこでほぼサイマルをやらかして、TOKYO FMさんがiOSでラジオアプリを作り、radikoの舞台が大阪から東京に移って、中村ナントカさんがうっかり筆を滑らせて大騒ぎになり、木村ナントカさんが強権発動でコミュニティFMまで騒乱状態となり、名古屋からでも見えるほどの火柱に「いよいよデバイスでラジオ聴けるんだ」と確信した2009年後半。
ホントに業界動向が面白かったなぁ。
同じ頃、FMサイマルが出来たら面白いのに、なんてことも妄想していたんだけど、すべて実現しちゃったら、なんか「あれ?こんなんだっけ」と醒めてきたりする、というのが偽らざる本心でごさる。

これ、5年ほど前にFacebookに友だち限定で公開した投稿です。引用するほどのモノでもないですけど。

ナントカさんについては各自リサーチいただくとして、当時の醒めた感覚は今も変わってませんし、2016年秋のradikoタイムフリーを最後に、ラジオ界で大きな変革はありません。

今年「ラジスマ 」なるスマホ端末も数機種登場していますが、これはAndroid端末に搭載されたFMチップを覚醒させ、通常版と異なるradikoアプリで起動をコントロールできるようにしたもので、買い替えのニーズがない限りは無縁という方も多いでしょう。

IP経由で聴けるのに、なぜ技術的に古いFM波の受信を促進するのかはまたの機会に書くとして、ラジオがスマホアプリのひとつとして定着したことに異を唱える方はいないと思います。

デバイスフリーとなった「ラジオ」は、今や地上波をベースとした音声コンテンツの総称とも言えるわけですが、じゃあこの10年でより多くの人に聴かれるようになったのかというと、なかなかになかなかな状況です。

こちらは一昨年の記事ですが、この傾向は首都圏のみならず、関西圏でも、そしてワタクシが暮らしている中京圏でも似たような感じです。
radiko経由での若いリスナーを取り込めた代わりに、人口の多い中高年が離脱してしまい、全体の数値が下がったということなのでしょう。

業界の取り組みとして「新規リスナーの獲得」が命題となっていた代償なのかもしれませんが、中高年のライフスタイルや環境の変化ということもあるでしょう。

タクシーでは「煩いからラジオを切れ」という客も増えたようですし、その代わり助手席の背部に広告動画を延々リピートするサイネージの設置が増加傾向です。
気がつけば、飲食店にあってもファストフードの全国チェーンでは独自にラジオっぽい音声を一斉に流すようになり、ラーメン店ではラジオどころか有線すら流れず、不意に接触するラジオならではの優位性は失われつつあるようです。

現場においてはまだラジオはマスのものである、という姿勢で日中の番組を作ったり売ったりしているスタッフと、ニッチ向けのものと腹を括って中毒性を追求するスタッフとに分かれる印象です。
とりわけニッチマーケティングの場合、企業のスポンサード収入よりもユーザーからの課金、グッズ収益への依存度が高く、エンタメ系番組のスタッフも商品開発や有料イベントの開催に余念がなくなるでしょう。

ただ、こうした収益ですら、日中の番組がスポンサード収入で稼ぎ出す金額からすれば何十分の1にしかなりません。
ラジオ番組に対する善意のクラウドファンドを見かけることもあるんですが、金額的に支えられない感じは否めません。

今後のリスナーを育てるためには、どうしても若年層にターゲッティングしたニッチな番組開発が不可欠です。
とは言え、喋り手にもスタッフにも生活がかかってますし、設備費用も賄うためには、まだまだマスの広告手法に頼らざるを得ないところですが、その広告費も年々減少しています。

これから数年のラジオ業界はマネタイズが先か、コスト削減が先かを判断する正念場になるかと思われます。南無。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。