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裏方の出演

ビートたけしの自叙伝『浅草キッド』の映像化作品が、Netflixで公開され話題となっています。

脚本•監督はビートたけしマニアとしても知られる劇団ひとり。
たけしの芸人修行時代から「漫才ブーム」での大ブレイク、そして師匠との別れまで、およそ10年間(1972-1983)に渡る物語です。

ビートたけしによる原作は発刊当時に何度もリピートして読みました。
多少の美化と時系列の整理はありますが、美術面でも可能な限りの再現がなされ、たけしの師への思い、フランス座、浅草への愛が感じられる素晴らしい作品に仕上がっています。

「漫才ブーム」は79年11月、ツービートが『花王名人劇場』(関西テレビ)で月の家圓鏡(後の8代目橘家圓蔵)との競演で大抜擢されたのをきっかけに、『笑ってる場合ですよ』(共にフジテレビ)が終了する82年末までのおよそ3年間を指すようです。

その渦中、日本の笑いを大きく変えることになるまったく新しい番組が作られました。

ステージ上で素人やゲストを交えた企画ありきの昼ワイド番組『笑ってる場合ですよ』。
コンビを解体してさまざまに組み合わせた台本ありきのコント番組『オレたちひょうきん族』の2本です。

どちらも高田文夫さんや高平哲郎さんといった放送作家、そして三宅恵介さんらをはじめとするディレクター(さらに横澤彪プロデューサー)の存在が垣間見えました。
とりわけ『ひょうきん族』では各コーナーのディレクター5人が「ひょうきんディレクターズ」なるユニットを組み、シングルを発売するなど、異例の展開となりました。

当時小学生高学年の僕には、お笑い芸人よりも、サラリーマンの分際で作って遊べる彼らの方がカッコ良く見えたものです。

なんでも当時のフジテレビは、分社化された制作部門が視聴率低迷の打開策として再度吸収されて間もない頃で、現場のモチベーションがものすごく高い時期にあったようです。

何をやってもdisられてしまう21世紀のフジテレビではなく、低迷にあえぎながらアクションを起こすしかない時代だったからこそ、現場に「自由にやろう」という空気が溢れてたんでしょう。

その後も裏方がオモテに登場する代表的なケースとして、『進め!電波少年』(日テレ)の土屋敏男さん、『水曜どうでしょう』(HTB)の藤村忠寿さんと嬉野雅道さん、『あちこちオードリー』(テレビ東京)の佐久間宣行さんと続きますが、不肖わたくし、みくばんPも『らじみく通信』というところで出演しております。

こちらはツイキャス配信で、放送ではありませんので念のため。

これ、今年の8月から毎月やってるんですが、そもそもこんな配信、やる気はなかったんですよ。

だって平日に10分の帯番組やって、土曜か日曜に30分番組やってるだけで「やり過ぎだろ」という感じですから。

ところが、7月に発売したグッズが売れないもんだから、ボヤレベルに発火しちゃったんですね。
放送がやり過ぎてるのはみんな承知だけど、それでも「とにかくなんかやれ」になるのです。

周囲の視線を避けるためにトイレの個室に篭り、グッズを売るにはどうするか思案した結果、全裸でバカのふりをするか、お面を被って配信でもするか、の2択となって後者をとったわけですよ。ちっ、みんなよかったね。

言ってみれば、予算を達成できない故の罰ゲームなわけですから、ゲストなど入れる予算もありません。初音ちゃんはテレビで売れっ子になってしまい、スケジュールも取れません。

また配信に使えるスタジオも、平日は腰のゴム紐が切れそうなほどパンパンのスケジュールで、日曜の夜くらいしか使えません。
そんなわけで、あい先輩と社員ふたりでやるハメになったと。

お面をつけて毎月出演してるせいで、街で腐った生卵をぶつけられるとか、自宅の前で裸の女性が待ち伏せしてるといった特典もないので、今のところはセーフです。

しかし、初音ミク「マジカルミライ2021」でブース出展した際、「あのお面の中身はどうなってるんだ?」と気になって仕方ない方が少なからずおられたようです。

飛沫感染対策のビニールのれんをめくりながら「お前かい、みくばんPってのは」と声を掛けてきた刺客へ、仕返しとしてグッズを買わせることで、肉を切らせて骨を断つことができました。みんなありがとう。

そのような事情で、決して出たくて出てるわけではないのですが、せっかく観に来ていただいてる方には「来月もやるから覚えとけよ」と啖呵をきるくらいには楽しんでもらおうと頑張っております。

まあそもそもユーチューバーをはじめネット配信界では、フロントも裏方も文字通り表裏一体なので、たいして珍しいハナシでもないですけどね。

テメーのツラ見せながら複雑な感情を抱かれるより、Vtuberみたいな出演がいいのかなと思っていて、しばらくはお面をつけ続けることにはなりそうです。

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みくばんP
ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。