更なる闇を覗いてみよう -“創造”の履き違えが産んだ究極の暗黒シリーズ-(LEGO Racers 2001 4574 Rip)
「初のnoteがこれでええんか」と思われそうなチョイスをしてみました。Munikoです。
今でこそ世界に名を轟かせる一流企業(?)となった(???)LEGOですが、1990年代後半〜2000年代前半までの間は経営不振で倒産寸前だったそうです。この数年間はファンの間ではレゴの暗黒期として知られています。
何故暗黒期とまで呼ばれているのでしょうか。あくまで個人的な意見ですが、
「テレビゲームなどのデジタルコンテンツの代頭によって『子供の興味はブロック玩具から離れてしまった』と考えた当時の開発陣が悪戦苦闘した結果、ブロック玩具から遠くかけ離れた多くの残念レゴシリーズを生み出し、子供のみならず世界中のレゴファンをも失望させまくったから」
というのが自分の解釈でございます。
オフ会などでAFOLの方々と交流中に暗黒期の話になると大体出てくるのは、
・一体成型残念トレイン
・バイオニクル
・ジャックストーン
・ガリドー
・スパイボティクス
・ベルビル
ーーー越えられない壁ーーー
・ズナップ
・ナイトキングダム土偶人形
・Sportsホッケー人形
・工具付きデュプロ
こんなところでしょうか。いずれも尖り散らしてますので気になったシリーズがあった方は是非検索してみましょう。
このように暗黒として取り上げられるシリーズには共通点がいくつかあります。最もわかりやすいのは難ありなパーツが大量に封入されていることです。
ポッチなどの接続部がほぼなく一般的なブロックと繋げて遊ぶことが難しいパーツや、特定の使い方しか考えられていない大雑把なパーツなど、レゴの特性を捨てた商品が多々生産されていきました。
では何故そのような訳の分からないレゴ製品達が生まれてしまったのでしょうか。私はレゴ社と顧客の間で「レゴを使った創造」に関して大きな認識のズレが生じた事が要因だと考えています。
今回紹介する製品は、まさに創造の認識ズレによる失敗の象徴と言えます。そう言っていいレベルの超ダメダメ製品です(私は大好きですが)。
では見ていきましょう!レッツ暗黒!
ジャックストーンやガリドーなど有名なゴリゴリ闇シリーズに隠れてひっそりとやらかしてるのがこのレーサーシリーズ。
2004年のRCシリーズも互換性の無さとパーツのデカさからしたら相当ヤバいですが、今回紹介するXalaxシリーズは暗黒の中の暗黒と言えるでしょう。
パッケージからして既にブロック玩具感は感じられません。それはバイオニクルもそうなんですけどね。
裏側。Xalaxは全15種類。Rip以降の7つの製品は後期製品として夏期に発売された模様。「4578 Ghost」は流通限定品だったらしく、完品であればウン万円で取引される代物です。欲しい。
開封。レゴのパーツはまさかの4ピース。
「そもそもこいつらなんなん?」って話ですが、一言で表すなら「レースが大好きなエイリアン」です。
“Xalax”という惑星に住む“Rama”という種族で、日々行われるレース大会でスピードを競い合っているんだとか。
「LEGO Racers2」というビデオゲームの最終ステージとしてXalaxが登場したりもします。
宇宙船のようなディテールが施されたケース。展開して輪ゴムを引っ掛けるとランチャーに。シンボル部分を叩くことで本体を発射できます。
この頃のレゴ製品、何かと叩いて発射!みたいなギミック多かった気がします。LIFE ON MARSのポンプとか、テクニックのスラマーとか。
本体。”rip”とは「引き裂く」とか「もぎ取る」などの意。コーナリングが得意な凄腕レーサーであるにもかかわらず、勝つ為なら手段を選ばない狡猾な性格だそうです。
青系のマシンに赤いロゴとキャラクターが乗ることで華やかな悪役といった印象になっています。レゴとしてはともかく、シリーズの製品通して色合いはとても素敵です。
ただ走るだけでなく、ギミックを使って多様な遊び方ができるというのがこのシリーズのウリだったのでしょう。「君だけの遊び方を見つけよう!」みたいなキャッチフレーズが聞こえてきそうです。
さて本題に戻りますが、この製品はおもちゃとしては言うほどダメなものではありません。しかしレゴとしては圧倒的にダメなのです。何故なら組み上げる喜びが全くないからです。
レゴはブロック玩具です。レゴほどに作り上げる喜びを手軽に楽しめる玩具はありません。ユーザーがレゴ社に求めるのは、レゴで作り上げるミニカーのセットであり、レゴ社が作ったミニカーではないのです。ミニカーで遊ぶならホットウィールでいいわけですし。
ではなぜレゴ社は作る喜びを忘れてしまったのでしょうか。おそらく、この頃のレゴ社は「自分だけの遊びを探る事」こそユーザーが求めるレゴを使った創造だと勘違いしていたのだと思います。
レゴから離れビデオゲームに夢中になった当時の子供たちは、ゲームの中でブロックを組み立てることはありませんでした。何かと戦ったり、冒険をしたり、乗り物に乗ったり、何かになりきったり…この様子を見て、レゴ社は「これからはロールプレイの時代だ!」と勘違いしたのでしょう。実際はロールプレイに夢中だったのではなく、PSや64などの3Dグラフィックのような目新しいものに惹かれたのだと思います。
逆にビデオゲームの弱みとして、遊びがルールやシステムに乗っ取らなくてはならないという制約が生じます。難度が高くクリアできないゲームは子供にとってはストレスです。しかしおもちゃで遊ぶのならば、そのルールを創るのは子供自信。こうして生まれたキャッチフレーズが、“Your world, your rules...”や、“just imagine...” だと考えれば辻褄が合うような気がします。いうて自分ルールで遊ぶのって何もかも簡単になり過ぎてすぐ飽きるんですけどね。
この勘違いにより、組み立て要素を削って作った後のロールプレイにステータスを全振りした商品やシリーズがわんさか誕生します。これにはレゴスタジオのムービーメーカーセットすらも当てはまります。そんなに暗黒として話題に上がりませんが、スピルバーグの名を使ったあのセットも、ある意味暗黒レゴなのかもしれません。
こうして唯一無二ではなく、代替を目指してしまったレゴ社はその後倒産寸前まで追い込まれることになります。そんな中でも欧米で飛ぶように売れまくり、倒産の危機を乗り切る程の収益を上げたバイオニクルは、今でも代替が存在しない唯一無二の魅力を持ったシリーズだったと言えるでしょう。人は他に無い魅力にお金を払いたがるものであることですなぁ。
というわけでRipのレビューでした。レゴとしてはダメダメだし、ミニカーのおもちゃとしても今ひとつピンとこない微妙加減。ですがこのXalaxシリーズも細かいプリントやカラーリングの絶妙な調和具合など、唯一無二の良さが無いわけではありません。オフ会などで広げて遊んでみるのもまた一興でしょうし、敢えて4幅や8幅でリメイクしたりも楽しいはず。沢山の可能性は感じられる製品なので、暗黒レゴファンには是非手に取って頂きたいセットです。
また、他に無い強みを持つ唯一無二を目指すこともビジネスや人生において大切ですが、この数年後にガリドーをやる程のメンタルや根性も見習うべきポイントかもしれませんね。長々と読んで頂きありがとうございました!
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