企業研究:エネオンvsイーレックス

先日のTOKAIHDの企業研究をしているうちに、エネルギー業界の中でもとりわけ高く、でも名前を当方が耳にしたことのない2社を題材に企業研究をしてみようと思います。参考はこのページです。

エネルギー業界におけるROAの一般的動向

ROA(総資産利益率)に関していえば、エネルギー業界はただでさえ発電所・配送電網、あるいはガス基地・導管網と総資産が極めて大きくなりがちな業界であり、事業の安定性とは裏腹にROAやROEなどの財務指標は悪化しがちです。

よって、利幅は大きくないけれども販売量や設備の稼働率平準化に貢献するような大口顧客や卸販売の販売量を増やしたり、多少値下げしてでも他のサービス(電力・ガス・水・インターネットなど)との組み合わせ販売を行うことでROA/ROEの向上が期待できるため、近年のエネルギー会社は盛んにこの自由化の波に乗った勢力拡大を企図しています。

ここで異色なのがエネオンやイーレックスといったバイオマス発電を行っている電力事業者です。彼らのビジネスで他事業者と大きく異なることは、自社で発電した電気どこに売っているかです。

エネオンはIPPであるため、東京電力などに売電を行っています。それに対してイーレックスは東京電力を経由して代理店(ブローカー)経由で電力を販売しています。エネルギー事業者にとってROA/ROE悪化の主要因ともなる配送電網を持たないため、相対的にこちらの数値が向上しているのです。

バイオマス発電事業者における株価指標

それに対して両社の株価指標(PER、PBR)を比較すると、エフオンはPER 6.03 PBR 0.76と非常に低いのに対し、イーレックスはPER .67 PBR 3.33と差が顕著であることがわかります。

さらに貸借対照表を比較してみると、両社の固定資産の金額はほとんど同じですが、2019年末時点での発電容量はエフオンが42MWに対し、イーレックスが145MWとかなり差があります。これはおそらくエフオンは森林を自社保有して木材の調達まで自社で行っているのに対し、イーレックスはパーム椰子を輸入しているためという違いによるものと推察されます。

発電容量が異なるために稼働率が同じように高くとも、イーレックスのほうが流動資産は大きくなっています。売掛金や未収金もイーレックス側が多いのは代理店制度によるものと推察されます。

また、イーレックスは2023年末までに3発電所の追加運開を目指すという強気な計画を立てています。それもあって、大幅な増資を行っていますが、買い手はまだ見つかっていないようです。FIT制度自体抜本的な見直しが迫られており、脱FITのための検討なども進められています。一方で、イーレックスが燃料として使用しているパーム椰子の外殻はパーム油を採取する際に出来る廃棄物であり燃料的な優位性が高いとみられます。

対するエフオンについては、自社で森林を持ち、自社で採取して調達するという、いわばバイオマス発電業界のSPA方式を実現しています。株価指標が相対的に安いのは、そもそも人手不足もあって林業自体が下火となっており、国内の森林資産を活かしきれるかどうかが懸念されているということなのかもしれません。とはいえ、FIT認定されている事業者のうち稼働率は2割程度となされている中で、エフオンの稼働率は90%超と極めて高水準を維持していると言えます。

今後の展望

両社とも順調に利益を伸ばしていますが、原料の安定調達と確実な運転を訴求する手堅い経営のエフオンと、原料の大規模輸入と規模拡大を企図するイケイケどんどんなイーレックスとで、同じバイオマス発電事業でも非常に対照的なことがわかりました。

今後FIT制度の見通しも不明ですし、既存事業者が振るいにかけられてくることも十分に考えられます。FIT制度が仮に無くなってしまったとしても、事業継続が可能であり、軍配が上がるのはどちらなのでしょうか。

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