その、ことばの真意はいかに?

仕事の関係で、研修に行ったときのこと。


その日一緒に研修の場所へ向かったのは、私を入れて3名。うち2名の方は顔も見たことがない、まったくの初対面であった。
朝早く指定された場所に集合した私たちは、小一時間ほどバスにゆられて研修場所を目指す。


その道中、初対面ということもあり、当たり障りのない会話を交わしながら、3人の心が少しだけ打ち解けたところで、バスは研修場所にたどり着いた。


思ったよりも早く着いた。始まるまでの時間はまだ30分以上ある。受付を早々とすませソファに座り暇をもてあましながら、私たち3人は研修が始まるのを、いまかいまかと待っていた。


そのうち1人の方が、私にこう言った。


「ひょっとして、〇〇さんと親戚ではないですか?」

〇〇さん、聞いたことがない名前だ。つまり知らない人であったため、こう返す。


「ちがいます。でも、なんでですか?」


「顔や雰囲気がその〇〇さんという人に似てたから、そうかと思って」


不思議な気持ちを抱いた私はさらに質問を投げかける。


「えっ、どんな人なんですか?」


いま、なんて?


私はそのあとにつづくことばに、耳を疑った。


「インテリジェンスな雰囲気の 」


インテリジェンスっていいました
たしかいま、この方は、インテリジェンスっていいました


私はそのことばに恥ずかしさのような感情をおぼえ、ひきつった顔で身振り手振りをつけながら、全力で否定する。


「えーわたしけっこう、がさつだしインテリジェンスなんか…」


たしか、こんな会話を交わしたような気がする。

だが、私の真意はそこではない。
本当の問いは、インテリジェンスとはなんですか?にある。


そのあとの会話はインテリジェンスにかき消され、会話の記憶はインテリジェンスに始まりインテリジェンスで終わっている。


私はそのことばを反芻し考えてみた。
私のどこに「インテリジェンス要素 」があるのだろう。


ひょっとして、この赤いバッグのこと?

その日は研修ということもあり、少し気合いを込めて普段はクローゼットの奥にしまってある、赤いトートバッグを持って来ていた。仕切りもたくさんあるし利便性の高さから、これにしようと前の日に選んだ物だ。


これか
この赤なのか?


念のため、着ている服も確認する。ごくごく普通だなあ。上下スーツのような、かしこまった格好もしてないし。初対面ということを意識しても、話し方をとくべつ変えていたわけでもない。


謎は、深まるばかりである。


私なんかは日頃、インテリジェンスとは、ほど遠い生活をしている者です。自分で言うのもなんですが、食べるものも庶民的でありまして、うどんなんかをよく好んで食べておりますゆえ「インテリジェンス」。そんな人には足元にも及びません。

もしも私が王様に仕える家来だとしたら、きっとこう応えるだろう。


それからというもの、後にも先にもインテリジェンスということばは、私のまわりでは交わされることはなかった。


インテリジェンス


みなさんは、このことばにどんな印象をうけますか。