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老舗時計バンドメーカー㈱バンビ、未来を見据えた本気の改革を!

老舗時計バンドメーカー㈱バンビとの第3回目の団体交渉を終えました。課題は大きく二つですが、この中には多くの重要な問題が含まれています。今回の団体交渉で多少の前進は見られたものの、多くのスッキリしない部分が未だに残ってしまいました。残念ながら、これを契機に本気で改革を行おうという姿勢がどうしても感じられないのと、未だに自身の保身にこだわる担当者の視点の低さだけが残り、課題が進んだかのように思えない部分が残ってしまったという事です。

まずは1つ目の課題についてです。

◆グループ会社バンビ工業担当課長の長時間労働及び不払い残業代

バンビ工業担当課長の平成26年以前から80~100時間を超える時間外労働・休日労働、それに対する残業代未払の件です。特に平成26年に労働基準監督署から36協定を遥かに超える時間労働と休日労働に対して是正勧告をうけたにも関わらず、このような働き方が続けられていたという点は実に悪質です。

しかも、昨年12月第一回目の団体交渉を行った後でさえも、引き続き担当者の時間外労働・休日労働・残業代の不払いが続いていたという有様です。そんな中、今回の団体交渉までの間に、何点かの動きがありました。まず、労働基準監督署の立ち入り検査が入り指導を受けたという点です。

1.担当課長の時間外労働・休日労働の実態調査

今回団体交渉の冒頭で、会社側担当が「この件に関して、労働基準監督署から指導が入り、今粛々と問題を改善しています。なおこの問題に関しては、労基署及び担当課長本人との合意も済んでおり解決済みであることを報告します。なので、この件は一切、組合側にはお話しできません」と言い放ちました。この時点で、会社側は本気で改善を行うつもりはないという印象が冒頭から印象付けられてしまいました。

監督署とのやり取りについては、それはそれで進めればよい。但し、そもそも我々組合が投げかけた問題点の釈明をせず、秘密保持的な薄っぺらい法的行使を匂わす回答でやり過ごそうという姿勢。正に本論を隠すという意図をはっきりと感じてしまったのは実に情けない状況かと思います。

「問題は○○であり、法的にも問題です。ですから○○を改善しこのような手を打っております」と、認めるところは認め、誤りを正すだけのことである。ところが、問題部分を隠しあやふやにし、「この話は監督署とやっているので話は出来ない」とはどういうことでしょう?要するに、組合に対して本当の事は言えないと言い切ったという事でしょうか?日本の多くの企業にある「間違いをあやふやにやり過ごす姿勢」がはっきりと見て取れたわけです。

2.担当課長への残業代未払を実行に意味する4つの論点

今回担当課長の問題点は大きく4つ。

(1)正確な時間外労働の把握

(2)時間外労働に対する賃金(残業代)の支払い、

(3)担当課長の管理監督者性

(4)安全配慮義務違反 です。

(1)正確な時間外労働の把握

団体交渉冒頭での頑なな態度に対して、当初から組合が投げかけていた「正確な時間外労働の把握」を聴いたところ「監督署との間の問題」と言い切りました。「では休日土曜の出勤はどうなのか?」と聞くと「担当課長本人から聴いても正確な時間が出てこない」という回答が出てくる始末。本人がそういうなら徹底的に調べようという姿勢は無いのだろうか?5年以上過労死レベルの働き方を許し、その指摘に対しても「本人が言う時間ではそこまで働いていない」と言い張る。

そもそも、「正確な時間外労働の把握」という組合の問いに対して、「監督署との問題」とはいったいどういう事だろうか?何か、隠している事があるのではという印象しか残らない。非常に残念である。仮に、会社側と組合側が把握している労働時間に差異があれば、追って会社はそれを調べて正せばいいだけの事である。何が問題なのだろう?

(2)担当課長が行った時間外労働に対する賃金(残業代)の支払い

こちらは前回団体交渉で争点になった「会社側の設定している管理職が労働基準法上の管理監督者にあたるか」という問題に絡んだものです。要するに、この担当課長に労基法上の管理監督者性が認められなければ、当然残業代の支払いが発生するわけです。

この件に関しては、監督署は「管理監督者性」を否定したようで、当然に残業代支払いが発生したという事です。ところが、これに対して会社側は相変わらず「会社と監督署との間の問題」と言い切り、ハッキリと答えない。どうして、隠すのだろう?ここで隠す意味は一つしかなく「5年以上(法令上は2年が時効)の残業代を支払いたくないからという一点に尽きることは誰でも想像がつくかと思います。

冒頭「会社と担当課長との間でも合意が成立している」とのコメントもあり、既に合意が成立しているという事は、2年分の残業代を支払う意思はなく、極力少ない残業代で合意したという事しか考えられないわけである。何故なら、2年分の残業代を支払ったならば、組合に堂々と「未払の残業代2年分を支払いました」と言えば、組合としてはそれ以上何も言うことは無いわけです。

最終的にこの件は、組合として労働基準監督署へ確認をとればはっきりする事である。ここで隠す意味は何なのだろうか?やはり「担当課長との間で数か月の残業代の合意が成立している」という事だろうか?であるならば、結局、会社側は、本気で改革するより目先の残業代支払いを誤魔化したという事になります。結果的に、この会社は実際に働いた分の賃金を支払わない会社であると宣言したようなものである。

(3)担当課長は管理監督者ではない

先程も述べましたが、労基署は担当課長の「管理監督者性」を否定したわけです。ところが、団体交渉に出席した担当者は「担当課長は自分を管理職だと言い張っている。会社は管理職の権限を与えていて行使しなさいといっているのに、彼は行使しないんですよ」という始末。もう一度、厚生労働省が出している「管理監督者」の詳細を確認しなさいと言いたい。5月より、バンビ工業は組織改正が行われ、問題の担当課長が「工場長」に昇格したということです。ここで、あえて問います。㈱バンビは「工場長」に「管理監督者」に相当する権利・権限を与えていますか?ということです。

人事権然り、経費、例えば大きな機械の購入等々、経営者としての権限を与えなければ、課長が工場長になろうと、単なる労働者に変わりないという事である。それが日本マクドナルド事件をはじめ、「名ばかり管理職」という判決をはじめ、判例法理として確立されておるわけです。それを前回の団体交渉からずっと指摘しているのに、会社は勉強していないのだろうか?工場長へ昇格させる、しかし、蓋をあけたら、「数万円の決済も本社にお伺いを立てないとできない」なんてことはないでしょうね?そうであれば、工場長への残業代は発生するわけで、また同じような長時間労働と未払残業代が再開される恐れが出てくるという事です。その時は待った無で法違反になる可能性があることを想像してほしいものです。表面的なものではなく、どうか、しっかりした改革を進めてほしい。

(4)社員の健康・命を守れない会社とは?

政府が一番焦点を当てていることに「安全配慮義務」があります。要するに、使用者には、自分の社員の健康・安全を守るという大前提があるわけです。今回、バンビ工業担当課長が5年以上も渡って過労死レベルの働き方をしている事に対して、㈱バンビは本当にどう思っているのだろうか?会社曰く「本人は家に帰るより働く方がいいと言っている。会社が止めても働き続けてしまう。」とまるで本人が原因であるかのように言ってきました。

では、彼がその様な状況に至る過程はどうだったのか?パワハラは無かったか?数字・納期等の過剰な追い込み方をしていたという事はないのだろうか?仮に、本人が「休むより働いていた方がいい」ということがあったとしよう。それこそ、精神的な問題がないか、産業医も含め面接をし、場合によっては精密検査も必要ではないだろうか?仮に本人が倒れてしまっても会社は「本人の責任である。会社は十分に対処してきた」というのだろうか?そして、その時、家族等から問題提起された場合、会社としてどの様な対応をするのだろうか?すべては、想像力の問題であり、リスク管理に通じることではないだろうか?

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