【#N高】団交報告〜N高校長補佐「調査書(進学先・就職先へ提出する書類)が十分じゃない例があったとして、それがどうなんですか?」〜
◆はじめに
本記事は2022年11月10日に実施した、私学教員ユニオンとN/S高等学校(以下、N高・学園)との団体交渉での学園の不誠実な対応について述べていきます。
私たちは、2021年3月から、学校の労働環境・教育環境の改善に向けて、団体交渉(話し合い)を継続しています。
これまでのN高の問題については、以下の記事などをご参照ください。
角川ドワンゴ「N高」に労基法違反で是正勧告!150人を担任し休憩も取れず(ダイヤモンド編集部)
◆調査書が不十分だとして、それがどうなんですか。
私たちは2021年3月のN高と団体交渉を開始した当初から「150人担任制(現・220人メンター制)」に対して、業務量過多であること、生徒1人1人に向き合う時間がないことを学園に伝えてきました。しかし、学園はそれに対して真摯に話し合いに応じる態度はなく、終始、不誠実な対応を繰り返しています。
今回の団体交渉でも、3年生の教員が180人の生徒をメンターとして担当していて、6月に調査書(個々の生徒の学習状況や生活態度を記した、生徒の進路にもかかわるもの)を書くために出来る面談が1回、30分しかないため十分に調査書を書けなくて困っている現場の声を伝えても、「具体的に誰なんですか」とその職員の名前を出すように迫り、個人の問題にすり替えて正面から向き合おうとしません。
組合員の経験から「正直、現場では例文を10パターンぐらい用意して、その生徒に合うのを選んでコピペしている人も多い」という150人担任、220人メンター制の状況下で、仕事を回すために仕方なく調査書をコピペで書いている状況があったことを伝えました。しかし、学園側からは「調査書が十分じゃない例が、何かあったとしてそれがどうなんですか。」と返事が来ました。
それに対して組合員が「ちゃんとした教育が行えている、自分は今生徒のために役立てているんだっていうのが教員の心的な部分で大きいと思うんですけど。(それが出来ていないから教員の心的ストレスが大きくなっている。)」と返すと学園側からは、学内で表彰されるような教員を取り上げて「教員はみんな努力してると思いますよ。」と言って一部の教員のみを見て全体化し、現場の感覚を伝えても向き合おうとしませんでした。
労働問題以上に教育として、学園として、調査書を十分に書けていない(少なくともそう認識している教員がいる)としても問題ないという学園の態度に私たちは呆れるばかりでした。
◆学園HPに公開している情報の根拠も話そうとしない。
1の繰り返しになりますが、私たち組合は「150人担任制(220人メンター制)」に対して、業務量過多であること、生徒1人1人に向き合う時間がないことを学園に伝えてきました。その考え方は組合だけのものではなく、文部科学省も「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議を通して、通信制でも担任数の上限規定を設けるべきだと話し合いが進んでいます。具体的には、同会議では生徒80人に対して教員1人を配置するよう通信制高校に求めています。
これに対して学園は、チーム化と分業を推進しているN高は結果的に担任の負担は少ないと考えており、公式HPにて以下のように反論を述べています。
「教職員の人数について何らかの基準を設けるのであれば、少なくとも教員免許保有者の人数ではなく、生徒に関わる教育スタッフの総数で判断することが適切であると考えます。」「(N高)全体では、教員を含めて生徒約42名に1人の割合で常勤教育スタッフを配置しており、非常勤スタッフも含めれば、さらに多くのスタッフが生徒に関わっています。」(組合が一部補足。)
学園の「分業化による教員の負担軽減」についても、私たちは学園の運営陣が考えているほど上手くはいっていない、分業していても担任・担当メンターは個々の生徒の状態をしっかり理解しておく必要があるので負担は変わっていない(むしろ生徒数が増加したことで負担は増えている)と訴えています。
そのために学園が何を基準に、「生徒42名に1名の割合」という数字を出しているのか、まずは学園がどのような理解をしているのかを確かめるために、その数字の意味や「常勤教育スタッフ」とはどのような人を指すのか、TAなどのアルバイトも入っているのかなどを質問しましたが、具体的な回答がもらえませんでした。
上記の数字はすでに世間一般に公開している数字なので、数字の根拠を共有するために新たな人的リソースは不要なはずなのに情報開示を人的リソースを理由に拒否しています。こちらの数字は担任・メンターの負担を考える、議論する際の学園の認識を把握するための大事な数字であるにも関わらず、ここの数値の根拠、計算を公表しようとしません。こちらが何度も担任負担の話を伝え、数値の根拠を知る意義を説明しても学園側は「そもそもそれが気になる目的は何ですか。」と繰り返し、挙句には「粗探しされているようにしか、私は聞こえないんです。」と、学園側の意見の裏付けを聞いたら粗探しと捉えられ、こちらの考えを理解して、交渉に真摯に応じる姿勢は一切見られません。
図(260人の生徒をサポート部署含め6人のスタッフでサポート)を単純に割り算すると260÷6≒43。生徒約43人当たり1人の教員の計算になる。
◆分業による業務負担の軽減は本当に出来ているのか。
N高で働く組合員のA氏は2020年度、N高の綾瀬キャンパスで約150人の生徒の担任をしながら地歴公民の教員としてスクーリング業務にも従事していました。担任業務や教科業務が多く、勤怠上でも60時間以上の時間外残業があり、更に休憩時間も活動していたため実際には90時間ほどの時間外残業が発生していました。そのA氏からは、2022年度になった今でもその問題の改善はされていないように見えます。
なぜならば、学園が年度当初に、学内向けに公開した工数計算(教職員の業務量・時間の配分を計算したもの)では社会科教員はスクーリングチームに1人だけであり、これは2020年度と同じ人員配置です。(余談ですが、N高は高校なので、本来は社会科という科目・教員免許は存在せず、正しくは地歴科・公民科です。しかし、N高の求人では高校の社会科教員を募集しています。2020年度にはチームに公民科の教員しかいなく、地歴の授業は他チームからの応援で補うしかない状況もありました。)
また、2022年度の工数計算では授業やスクーリング運営を除いた時間が国語科や社会科は「0」と表記されています。学園は、その時間に科目のSlackチャンネル(生徒との交流ツール)の企画、運営や特別授業を実施するように求めています。繰り返しになりますが、国語科や社会科は当てられる時間が0であるのに、学園はその時間内にするべき業務を定めています。それによって、長時間労働や過密労働、休憩が取れないなどが生じる恐れがあります。
このような状況から、A氏は2022年度になっても教員の業務量の改善がされてなく、それは運営の工数計算の甘さに由来しているのではないかと考えています。実際、スクーリング運営が大変であるという声も私たちのもとに届いています。更に今年度の綾瀬キャンパスでは体調不良者が出て、その人の業務を補うために一部教員に負担が偏り、更にその教員が体調不良になるなどの事例も出ています。
そのため、学園に現時点での工数計算表を共有するように何度も依頼していますが、学園は「共有する意義がわからない。」と回答しています。また、最近の綾瀬キャンパスでも新たに体調不良者が出ていて、その影響で茨城県のつくばキャンパスから応援に行っていることを伝えても、「(体調不良者がいるなら)教えていただいていいですか。」と管理者責任を放棄しているとしか思えない発言も出ました。綾瀬キャンパスの欠員に関しては最終的には確認するという話に落ち着きましたが、工数計算の開示については本当に教員が業務量で負担が生じているのか確認できないと開示しないとして、一切の情報をシャットアウトしています。
◆おわりに
本記事では、2022年11月10日に行われた団体交渉における学園側の不誠実な対応を述べました。通信制高校を選ぶ生徒、及び通信制高校の数も多くなっている中、企業利益的効率を追い求め、教育の現場を軽視するようなN高の運営にこれからも闘っていきたいと思います。
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