札幌学院大学文芸部

札幌学院大学文芸部です。札幌学院大学で文芸をしています。

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マガジン

  • 大衆作品

    2019年度部長。ニンゲンと似ているがニンゲンと一緒に飼育するとストレスで死んでしまうので別のゲージで飼育しましょう。既卒生。

  • ライム作品

    ライムという名前ですが、グレープフルーツの方が好きです。 2022年3月18日卒業

  • お題「車輪・窓・カクレクマノミ」

    3つのお題に沿った詩を書く企画です。 (詩と小説の2作品を投稿している人もいます)

最近の記事

【佐々良】境

 アクリル板を手の甲で押し上げ、硬い音を立てて落ちてきたコーラ缶を取り出す。プルタブを引き上げ一気に喉に流し込めば、馴染みのある爽快感が全身に染み渡った。やはり、青空の下でキンキンに冷えた炭酸飲料を飲むのは格別だ。額に浮いた汗を拭い、空になった缶をゴミ箱に放り投げる。今年も残暑がしぶとく生き残っているようで、暦の上では秋も終わっているというのに未だ蒸し暑い。自販機のラインナップも時勢に合わせているのか、あったか~い飲み物はココアぐらいだ。腕時計を見れば、昼休憩がそろそろ終わる

    • 【ライム】卒業

      卒業。そんなたったの2文字で、私の大学生活4年間はまとめられてしまう。 楽しかったことも、大変だったことも、充実感も喪失感も、全てが卒業という言葉に詰め込まれる。もっと真面目に勉強をすれば良かった。もっと色んな人と関われば良かった。もっと、もっと。 挙げ出したらキリがないそれらを、私は消化できずに胸に抱えたまま、みんなと同じように袴を着ていた。 私は今日、大学を卒業する。 「この大学で学んだことを大切に、これからの社会人としての人生を歩んでください」 広めの教室で学科の

      • 【リハネ】転落

        人の幸福は憎いけど 不幸を見ると涙が出るの 誰かがまた 泣いている 嬉しい時も 悲しい時も 人は皆 生きている 辛かろうと 楽をしようと 自分がこんなに苦しんでるのに あの子はどうして笑っているの 不思議 不条理 不合理だ 憎くて憎くて仕方ないや 僕の涙を掬って舐めて 「しょっぱいな」って笑っているの 人生なんてこんなものか どうしようもなく悔しいや 世界は不幸で溢れてる 僕の苦しみはどこにある どこにもない どこにもない 薄くて脆くて割れてしまった 2月の

        • 【リハネ】おかえり

          ビスケット ひと口どうぞと言いかけて やっぱやめたってぼくがかじった 最短距離は4口かなぁ でも ながく味わっていたいから ちょっとずつ ちょっとずつ 欲しがる君を横目に見ながら こんな安価なおやつより 素敵なお菓子が並んでるのに それでもやっぱり これがいいのと 君が笑った気がしたから 食べかけだけど はいどうぞ はんぶんこだね 嬉しいね 蒸し暑かった夏の真ん中 また来年 帰っておいで

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        • 大衆作品
          11本
        • ひ 作品
          0本
        • ライム作品
          11本
        • お題「車輪・窓・カクレクマノミ」
          6本
        • 沙華
          1本
        • うー太郎作品
          10本

        記事

          【現金丸】暗い海

          外がきらい 街を行く人も 窓から見える景色も 大きな車輪のトラックだって 私はみんなと違うみたいで プカプカ フワフワ浮いてるみたいで みんなこっちを見る 目立つ 目立つ 目立ちたくない 派手な見た目のカクレクマノミみたい 私のイソギンチャクは どこにいるの

          【現金丸】暗い海

          【沙華】 世迷言

          車輪の軋む音が響く時 窓から覗くと君が見える いつも眺めて それで終わり ただ それだけ それでも 少し 近づきたくて いつか と 貴方へ 金魚草 いつも隠れて素直になれず 金魚すら なれない 私はきっと 毒に隠れるカクレクマノミ 見た目が派手で臆病な小魚 だから せめて 次こそは そして いつもの 繰り返し 変化を望み 不変も望む ただ それだけの話

          【沙華】 世迷言

          【ライム】君をおもう

          僕は今、乗り物ごと水中に浮いている。いや、浮いているというよりも、見えない地面に乗っているような感覚だ。うっすらと太陽光が感じられるから、水深は深くても15メートルほどだろう。 僕が乗せられている乗り物は、何故か直方体になっており、とにかく横に長い。今いる場所からでは、1番奥が見えないほどだ。そしてこの横に長い箱には、ずらりと丸い窓が付けられている。 ここから海の様子を覗けということなのだろうが、僕はあまり魚が好きではない。そんな僕をここに閉じ込めて何のつもりだ、と誰かもわか

          【ライム】君をおもう

          【ライム】君をうたう

          カクレクマノミが 優雅に進む まんまる窓を 避けながら 近くで見ている はずなのに すぐに見えない ところまで スイスイスイスイ 消えていく 大きな車輪が ガクンと進む まんまる窓を 連れて行く 遠くて見えない はずなのに すぐに聞こえる ところまで ガラゴロガラゴロ ただ回る スイスイ進む 君よりも ガラゴロ回る 君が好き

          【ライム】君をうたう

          【うー太郎】無題

          透明な壁を隔ててこちら側の世界と水 、はずかしがりやのカクレクマノミ イソギンチャクの窓からのぞき込んでいるように見えるのは、きっと私のエゴ オレンジ色の服を身にまとった小さなキミは、私のことなんてわからないのかもしれない キミじゃない誰かが隣にいる今、君のことを考えているのは誰かにとっての裏切りだろうか そんなこと、辞書には書いていないけれど 私を運んできてくれた車輪にはキミはいなくて、やっぱり隣にいるのは誰かで 水槽の中のキミの隣には私の知らない誰かがいて、それはキミと同

          【うー太郎】無題

          【リハネ】君と空を泳ぐ

          車輪がひとつ それともうひとつ 回って回って 傷つけて もうダメだって 窓を覗けば 哀しいほどの蒼い空 雲をくぐった カクレクマノミ 小さな小さな 熱帯魚 太陽にだって負けない熱を 放って放って 僕まで届け 儚い夏を 胸に焼き付けて 辿って辿って 未来へ響け 異常なほどの体温で 死なない程度に 生きていて 過剰なほどの心配で 壊れない程度に 生きていて

          【リハネ】君と空を泳ぐ

          【ライム】幸せそうな最期の笑顔

          首の骨や筋肉が俺の手にぴたりと張り付くほどにお前の首は細いんだな、と思いながら俺は手に力を込めた。お前はこんな時でも、いや、こんな時だからこそ心の底から幸せを感じているかのように笑ってみせる。 俺はその笑顔を大切にしたかったはずなんだ。 初めて会った時、お前は他人に向けているのと同じ笑顔を俺にも向けてきた。そんな風に笑顔をばら撒いて何が楽しいのかと思った。誰にでも良い顔をして、誰にでも優しくして、そんな善人である自分に溺れているのだろうと俺は勝手に思っていた。 だが、俺のそ

          【ライム】幸せそうな最期の笑顔

          【リハネ】涙の夜空は宝石箱で

          涙の夜空は宝石箱で 寝てしまおうと思っても なかなか眠りにつけなくて 目を開けたとき 涙が零れて ナツメ球が 宝石に見えた 僕の 僕の唯一の楽しみ 明日もきっと 何もかも 乗り越えられる気がしてる 明日もきっと 涙のおかげで 輝くはずだ 夜空の星が

          【リハネ】涙の夜空は宝石箱で

          【ライム】おばあちゃん、雪かきをしに来たよ

          冷たい空気と綺麗な青空に懐かしさを感じて、私は思い切り息を吸い込んだ。 私はこの町が好き。小さい頃過ごしていたから土地勘もあるし、どこを歩いても静かで居心地が良い。たまに聞こえる小さい子のはしゃいだ声も何だか微笑ましい。 雪かきをしているこの時間も好き。1人でしているから雪かきという作業に没頭できるし、ぼんやりと考え事をすることもできる。 「結構積もったんだなぁ」 私は1人呟き、ひたすらスコップを動かして雪を道路側に寄せた。この地域では夜には除雪車が入るから、道路側に雪を置

          【ライム】おばあちゃん、雪かきをしに来たよ

          【リハネ】橙色と青と月

          一人で暮らして早2年 家事もずいぶん慣れてきて 洗濯なんてお手の物 料理は相変わらず苦手 橙色と青と月 その瞬間まであと少し それまで溜まった課題をやって メールの返信も済ませて だいたい君も会う時に 時間を細かく指定して 僕の部屋からじゃなくたって 公園にでも行けばいいのに 日が落ちるまであと5分 「今」が幸福でいっぱい 橙色が、青が、月が 交わりあってエモーション 好きだなって呟いた こんな狭いアパートの 一室から見る景色も君も 感傷的になってる僕も

          【リハネ】橙色と青と月

          【リハネ】珈琲

          冷めないで すこしだけ おやつの前に あなたを呼びに ふたりでいたら かがやくの 窓から見える白い世界が 落ちついて 息をして いつもの様に 笑ってみせて そしたらきっと かがやくの スノードームは逆さにせずとも 想像するの 例えばね 元気に咲いてたマリーゴールド とつぜんの雪に負けないで 雪の下でも 元気だなんて 想像してよ あなたもね 今を生きてるそれだけで 大変だって言うけれど そんな中でも幸せだって 思いたい そう思っていたい 宝物だね この時間 生きていたい

          【うー太郎】LOST MEMORIES

          ~prologue~  太陽が輝き、窓から光が差す。空は憎いくらい天気が良く、少し開いたその窓からは柔らかい風が入り、カーテンを揺らした。 「お嬢様、旦那様がお呼びです。」  コンコンという軽いノックとともに、扉の向こう側から単調な声が聞こえる。  気分が乗らず、無視を決め込んだ。 「お嬢様、いらっしゃるのでしょう?お返事なさってください」  またも、無視。 「パプリエール様!」  怒ったようなその声に、さすがに応えざるを得なかった。 「……います。今行くとお伝えして」 「

          【うー太郎】LOST MEMORIES