温泉街の宇宙③【リレー小説】
無限にも思えるような静寂は、この星空の下には自分しかいないのではないかと錯覚させる。
確かにほんの数刻前まで、溢れんばかりの人間たちが、ガヤガヤと耳障りな祭りをしていた筈なのに。
「……そろそろ帰ろうかな」
腰掛けていた椅子から、私は立ち上がる。椅子はとても硬くて、お尻が若干痛んだ。
気付けば秋祭りの屋台も、溢れ返った人たちも、最初から無かったかのように消え去っており、目に映るのは柔らかな月明かりに照らされた、豪奢ながらも上品な拝殿と鬱蒼と生い茂る木々、そして、クルク